教会ラテン語の標準発音であるイタリア式について解説した書籍類の説明は,それだけでは現実の発音を再現できない不十分なものがほとんどで,実際とは異なる内容も書かれている。本稿では標準発音としてのイタリア式の採用の経緯を整理し, 1903年以降の録音録画資料を使っておこなった調査の結果にもとづき実際のイタリア式がどのようなものかを報告する。調査の結果では,ほとんどの解説書が触れない「単語間の音結合」の説明が現実の再現には必要であり, "in excelsis"の下線部はカナ書きすれば[イネ]であって[インエ]ではない。"excelsis"は[エクチェルスィス]が多く,解説書が言う[エクシェルスィス]ではない。mihiは解説書が言う作為的な[ミキ]は一変種として存在するが,特にミサ曲では[ミー]か有声のh音を使う[ミヒ]が多い。従来の解説書の説明はイタリア風ではあってもイタリア式の実態の説明と言え