「パーソナル・コンピュータ」の概念を提唱したとして知られるアラン・ケイ氏に会う機会を得た。パソコンの未来を語る同氏の熱弁ぶりは健在だ。ムーアの法則に従い、半導体技術が3万倍に進歩したにも関わらず、ユーザーの実感としてコンピュータ・システムの性能向上はわずか50倍にすぎないと憂える。コンピュータ・アーキテクチャの進むべき方向性について、同氏の鋭い分析と将来の夢を3回のインタビュー連載でお届けする。 (聞き手=ITpro発行人 浅見直樹,写真=栗原克己) ―― コンピュータ技術の進歩にはめざましいものがありますが。 果たして、そうだろうか。必ずしも進歩していない部分もある。例えば、メモリのデータ転送速度はさほど高速化していない。また、マイクロプロセサも依然としてシングル・プロセサのアーキテクチャから脱却していない。これは、技術的な問題というよりも、コンピュータ・ベンダーが大きな変化を望んで
―― 大人に対しては手厳しい評価ですね。 ポップ・カルチャーに対して大きな不安を感じる。本当の目的と違うことに、新技術が使われているケースが目に付く。例えば携帯電話。昔は、いつ、どこにいても連絡が取れるように心配していたものだ。誰かのオフィスに行けば、そこに電話があることを確認して安心する。ところが最近は、仮にオフィスや会議室に電話がなくても、だれも不安を感じない。それは携帯電話を身に付けているからだ。ところがその携帯電話をどういった目的に利用しているかといえば、瑣末な用途に使うことがほとんどになっている。重要な話を電話でするというより、強い目的があるわけでもない、些細な会話に使う比率の方が高い。技術が普及し、日常の一部になるということは、本来の重要な目的が忘れ去られることを意味するのかもしれない。 では、コンピュータの利用方法はどうか。多くの人は、コンピュータを使って何かを学ぼうとし
―― 「Web2.0」という言葉に代表されるように、新たな技術革新への関心が高まっていますが。 今のWebは未熟だね。レベルがあまりに低い。1960年代に示されたコンセプトのうち、実現できていないものがたくさんある。Web関連の人たちは、何でも自分でやりたがる。過去から学ぼうとしない。過去に対する好奇心が薄いのだろう。だから、Webの技術は遅々として進歩しない。例えば、言語「Logo」のことを記述したWikipediaのページをみても、そこでLogoのプログラムを実行することさえできない。今のコンピュータは、昔の「Apple II」に比べれば1万倍も高速化しているというのに。 Webの世界を見ていると、人気のあるメインストリームの内容ほど創造性に乏しい。私はそう思う。ところが、Webも捨てたものではなく、離れ小島のようなサイトに目を向けると、少人数のとても小さいグループが画期的な活動を
コンピュータ自身が、よりアクティブになるべきだろう。今のコンピュータは、だれが使用者かを意識することがない。ユーザーが、あなたのような大人なのか、それとも6歳の子供なのか、そんなことはお構いなしにふるまう。あなたが画面で文書を読んでいるのかどうか、画面を注視しているのかウインドウの外に気を取られているのか、あなたが何に興味をもっているのか、コンピュータはそうしたユーザーの状況を認識していない。あなたの目的が何なのかを理解しようともしない。ユーザーの視点に立てば、コンピュータは、まだ出来の悪いツールということになる。あなたが何をしようが興味を示さない作業台(workbench)のような存在、それが現在のコンピュータだ。 コンピュータを利用して勉強しようとしている子供がいたとするなら、その子供にふさわしいユーザー・インタフェースを提供することが望ましい。子供がパソコンの前に座ったら、その子が
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