(作品社・2730円) ◇東欧の国々で実際に何が起きたか 本書のタイトルを見ただけで、いま30歳代以上の人であれば、これがヨーロッパにおける冷戦終焉(しゅうえん)の話だということはわかるだろう。その通り、本書は、ポーランドにおける「連帯」の復活から、チェコスロバキアの「ビロード革命」、ルーマニアのクーデターとニコラエ・チャウシェスクの処刑を経て「ベルリンの壁」の崩壊に至る東欧の革命の物語である。 これについては標準的な物語がある。1989年は世界を変えた一年だった。冷戦は終わった。「われわれ」は勝った。冷戦の終焉とともに、「われわれ」は核戦争の恐怖と東西対立の世界に別れを告げ、グローバル化、自由市場、民主主義、「唯一の超大国」アメリカの新しい時代に入った。 著者はこれを「神話」という。この神話にはいくつかの要素がある。 その一つは、長年にわたって抑圧され、自由を奪われ、貧困に喘(あえ)ぎ、