日本人は変わった。前々からうっすらと感じていたことだ。以前、日本人のなかにあったものが、いまはなくなっている。あるいは希薄になった。 学生時代、奨学金をいただいていた。高校の時は県から月額千八百円だったと思う。大学では国から月額三千円。アルバイトをせっせとして質屋にも通ったが、奨学金がなければ学生生活を全うできたかどうか。とにかくありがたいことだった。 卒業し、就職してから、月賦で返済した。借りたのだから当然である。完済の通知が届いた時はうれしかった。半世紀も昔のことである。 あのころを振り返ってみると、国や県から借金することを別に恥とは思わなかった。親の仕送りで十分足りている裕福な学友たちをうらやましいと思ったこともない。ただ、借りないほうがいいと決まっているのに、借りざるをえないのは情けないという感情は確実にあった。自立心の問題である。社会に出る前から、自立心に傷がついたような痛みだっ
とにかく、私は懸命にメモをとった。一昨年夏、船旅をしていて、船中で村上和雄筑波大名誉教授の講演を聴いた時である。話に意外性があって面白いということもあったが、メモをとらずにはおれなかった。 「遺伝子解読が進んでわかってきたことがあります。わかってきたことで、万物の霊長である人間に衝撃を与えたのが、人間の遺伝子の数はこれまで考えられていた十万個よりもずっと少なく、三万~四万個程度だという事実です。この三万~四万個という数はハエの倍程度、魚やマウスとほとんど同数なのです。 また、人間とチンパンジーを比較した時、両者のゲノムの塩基配列の違いはたったの一・二%にすぎないこともわかりました。遺伝情報レベルで比較すれば、人間とチンパンジーは九八・八%同じ生き物だということです……」 こんな調子だった。ゲノムとか塩基配列とか、わからない言葉もあったが、引き込まれてしまう。 「こんどは人間同士の個体差で見
「シュヴェリーン城」ドイツ, メクレンブルク=フォアポンメルン州 -- H. & D. Zielske/Getty Images
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