「生活保護制度は人間をダメにする制度ではありません」−−。生活保護への風当たりが強まる中、元受給者が自身の経験をありのままにつづった「生活保護とあたし」(あけび書房)が昨年12月に出版された。著者の和久井みちるさんは「私たちを怠け者と思う人にこそ読んでもらえれば」と力を込める。【遠藤拓】 ◇偏見なくしたい 和久井さんは首都圏在住の50代女性。夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れ、うつ状態で思うように働けないまま貯金が底をついたため、07年から3年半にわたって生活保護を受給した。今はフルタイムの職を得て生活保護から脱却している。 貧困問題の市民運動で発言していたことをきっかけに1年前、生活保護の実態を紹介してみないかと出版社側が打診。和久井さんは「受給のさなかにある人たちは『自分の話なんて聞いてもらえない』と思い、声を上げづらい。私の立場ならば書ける」と執筆に踏み切った。
もしかして、日本社会は生活保護を受給者ごと切り捨てようとしているのか。春先から続くバッシングはそんな危うささえも漂わせている。 ◇寛容な視点で考えよう 生活保護は6月時点の受給者が211万人超と過去最多を更新し、今年度は3.7兆円の税金が投入される見通しだ。減らせ、との大合唱はあちこちから聞こえてくる。蔑称の意味を込め「ナマポ(生保)」という言葉を使ったひぼうや中傷がネットの世界でもあふれている。だが、まん延する貧困問題への処方箋なしに当事者を締め付けたら、社会はどうなるのか。生活保護を受けられるのに、受けていない「漏給」の問題も根が深い。ムードに流されて「最後のセーフティーネット」を無残に切り刻むのではなく、寛容な視点で考えてほしい。 ざっとおさらいをしよう。バッシングのきっかけは、お笑い芸人が生活保護を受ける母親に扶養義務を果たしていないと批判された問題だ。独立した子から親への仕送りの
衆議院の解散時期が取りざたされる中、総選挙に向けて生活保護費の現物給付を打ち出す動きが広がりつつある。自民党は食費代わりに食事用回数券の配布を想定し、現物給付の導入をマニフェスト(政権公約)に盛り込む見通し。橋下徹大阪市長が代表に就く「日本維新の会」も新党の綱領に現物給付の導入を明記する。受給者の間には「安心して暮らせなくなるのでは」との不安感が広がり、厚生労働省も「差別を助長する恐れがある」と難色を示している。【遠藤拓】 生活保護費は「生活」「教育」「住宅」など用途別に給付方法が定められ、緊急時などを除いて現金を給付する。受給者が金銭を支払う必要のない現物給付は「医療」と「介護」だけだ。 自民党は先月まとめた政権公約最終案で、自治体が保護費の現物給付と現金給付を選べる制度の導入に言及。具体的には食券の配布や自治体による家賃の振り込みを想定している。保護費の1割カットや不正受給への厳格な対
「命をつなぐ生活保護は恥じゃない」。生活保護の利用者や支援者らが8日、東京・霞が関の官庁街周辺をデモ行進した。 当事者の声を知ってもらおうと有志が企画、約100人が参加した。「苦しい時みんなで使おう生活保護」「改悪にNO」などと書かれたボードを持った参加者が「厚生労働省は当事者の声を聞け」「財務省は人の命(にかかわること)を財源(の有無)で語るな」などと、それぞれの庁舎前で訴えた。 生活保護を巡っては3月時点の受給者が過去最多の210万人を超え、お笑い芸人が母親への扶養義務を果たさなかったことが批判されたことなどから、「バッシングの声が高まり制度改悪につながるのでは」と不安の声が上がっている。【遠藤拓】
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