文章の題名から予想されるわけはないだろうが? 私の興味は「萌え」の定義でもなく、「萌え」という現象が社会的に何を物語るかということでもない。知りたいことは、「萌え」なる言葉で表わされる、私と私と類似した指向の「オタク」たちが現在体験している感覚がどのようなものかという、本来は内省的で客観化できないことを言語化しようというのが本稿の試みである。その目的は無論、社会や現代の傾向を解明するためなどではなく、さらには学問的なことなどどうでもよくて、ただ自分のためだけに、自分の感情でありながらも移ろいやすく老いとともに忘れていってしまうであろうこの感覚を何とか文章として定着して保存させることであり、その一過程として、様々な言説を流用しているに過ぎない。このような極めて個人的に過ぎない動機のために、わざわざご大層な言説を捏ね繰り回すのは自慰行為以外の何物でもないことは初めに言っておいたほうがよいだろう