アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書) 作者: 堂目卓生出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/03/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 169回この商品を含むブログ (114件) を見る 本書において著者は、アダム・スミスの幸福観に関し、つぎのように述べる。まず、スミスにとっての幸福とは、心が平静なことであるとし、この点において、ストア哲学の幸福観の影響を認める。しかし、幸福と財産との関係については異なる見方がとられ、スミスにとって、幸福であるためには、「健康で、負債がなく、良心にやましいことがない」こと、特に、その社会における「最低水準の富」を保持していることが必要であり、「最低水準の富」がないと、人間は悲惨な状態に陥るとする。 一方、ストア哲学では、賢人とは、あらゆる状態において精神の不動を保つ人である。この点はスミスの見方とは異なってお