池内恵(いけうち さとし 東京大学准教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。
池内恵(いけうち さとし 東京大学准教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。
日本で死刑制度容認派が80%を超え、否定派を大幅に上回っていることが24日、内閣府の発表した「基本的法制度に関する世論調査」で分かった。法務省は「(過去の結果と)傾向は変わらない」としており、国内の死刑容認論の根強さが浮き彫りになった。 それによると、「死刑もやむを得ない」と容認したのは80・3%。逆に「死刑は廃止すべきである」と否定したのは9・7%。 死刑容認の理由(複数回答)は「被害者や家族の気持ちがおさまらない」が53・4%で最も多く、次いで「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」(52・9%)、「生かしておくとまた同じような犯罪を犯す危険がある」(47・4%)の順。逆に否定の理由(同)は「裁判に誤りがあったとき取り返しがつかない」(46・6%)、「生かして償いをさせた方がよい」(41・6%)、「国家であっても人を殺すことは許されない」(38・8%)の順だった。 今回は、仮釈放のない
中途半端な英語使いが英国からのニュースを東京で読み、あちこちふらふらうろうろ。時々嘘。 はてブ = http://b.hatena.ne.jp/nofrills Twitter = http://twitter.com/nofrills Twitterのログ = http://twilog.org/nofrills ◆「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月) ◆「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月) ◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください
ブログをなんとなくお休みしている間に、「シャルリー・エブド」襲撃事件が起きた。この件について、とくにそのスローガンについては当初メディアに解説もなかったみたいなので、それではブログで記事を書こうかなとも思ったが、その後、同種の話題も出て来たので、書くまでもないかと思って、時は過ぎた。 事件に自体については、日本を含めていろいろと議論があった。特に欧州と米国での対応が異なっていたように、米国などでは、イスラム教徒をあからさまに侮辱するように受け取られる表現はいかがなものか、ということで、大手メディアは基本的にエブド誌漫画の引用を控えた。余談だが、自分の見ていた範囲では事件後の同誌の報道はフランス国内よりベルギーが早かった。 この事件だが、「表現の自由」というふうに欧州風に論点が焦点化されると、これは実際のところは議論の余地はない。つまり、テロに屈することなく社会を守るしかないということだ。
十六世紀初頭から十七世紀末にかけて、神聖ローマ帝国=ハプスブルク家は強大なオスマン帝国の侵攻を撃退し続けた。フランスのように絶対主義体制の構築ができたわけでも、イギリスのように四方を海に守られていたわけでもなく、宗教戦争と度重なる国際戦争で疲弊し分裂した神聖ローマ帝国に、なぜオスマン帝国からの防衛が可能であったのか。その大きな要因として本書は、ハプスブルク家における実証主義的政治の誕生を挙げている。 『本書のテーマは単純で、オスマン帝国から国を守るという極限状況がハプスブルクに強いた、理想を追わず現実を直視するという心性が、十六世紀的な、世界を客観的、数量的に把握し分析するという技術と出会い、そこに強力な、説得力のある実証主義政治が生まれたというものである。脱魔術化しているという点において、この政治はすぐれて近代的な政治である。』(P229~230) この分析がとても面白い。もちろん、みん
フランスで宗教規範への挑戦を続けることがなぜ深い意味を持つのか、分からない人には、いろいろな分からない理由があると思うが、一つ一番欠けているのは、イスラーム教の本来の教えは自由の抑圧をしない、と思い込んでいるから、というのがある。イスラーム教は正しい宗教(イスラーム教)を信じる「自由」を認めているが、正しく...
東京大学の前田健太郎先生の博士論文。非常に勉強になった。基本的には日本を中心とした丁寧な事例研究を通じて、公務員の数がどのように決まっているのかという問題を議論するもの。最後のところでは、計量分析の成功研究についての再現を使った分析をしていて、これは良い試み。実際のデータを追いかけると、有意とされている「独立変数の効果」というのがまあそれほど大したことないこともわかるし、再現を通じて分析される方はドキドキするかもしれないけど、データを公開して広く分析してもらうというのはありがたいことだろう。 本書の主要な主張をざっくり言うと、日本の公務員数が少ないのは早い時期から行政改革が行われたからだ、ということである。稲継裕昭先生や西村美香先生の公務員制度研究を踏まえて、それに続く研究として位置づけられることになるだろう。これまでの研究が、実態分析や歴史的経緯の跡付けをメインにしていたのに対して、本書
昨日開かれた産業競争力会議課題別会合に出された長谷川座長の資料については、書かれてもいないことをまことしやかに報ずるマスコミもあったりして困ったものですが、まずはきちんと原資料に当たって確認すべきを確認するという基本動作をしっかりやりましょう。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai4/siryou5.pdf そのうえで、とかくマスコミがやりがちな、重要でないことばかり大騒ぎして、一番肝心なことを見事にスルーするという弊に陥らないようにするために、ここで注意して目を通すべきところを指摘しておきます。 まず、「新しい労働時間制度の考え方」と題する4ページの一番下の項目。 健康確保は、「労働時間上限」、「年休取得下限」等の量的制限の導入、 対象者に対する産業医の定期的な問診・診断など十分な健康確保措置 ど素人ならと
大阪市は出直し市長選挙で色々止まっているように見えるが、大阪府では非常に興味深い動きがある。それは、2015年統一地方選挙に向けた選挙区割の変更である。以前の記事でも書いたように、大阪府では2011年6月(前回統一地方選挙の直後、いわゆるダブル選挙の半年前)に議員定数を109から88に大幅に削減することを決め、それに合わせて区割りを行っていた*1。この改正条例はまだ一度も施行されてはいないものの、2013年12月6日に国会で公職選挙法が改正されたことを受けて、もう一度区割りの見直しがテーマとされるようになる。で、大阪府でも、早速12月9日に「議員の定数及び選挙区並びに各選挙区において選挙すべき議員の数に関する特別委員会」が開催されてその見直しが議論されはじめる。 公職選挙法の改正は、この資料がわかりやすいが、大阪府に関して言えば重要なポイントは2つある。1つはこれまで選挙区として(のみ?)
昨年12月6日、「特定秘密の保護に関する法律」(以下「特定秘密保護法」)が衆参両院における「強行採決」を経て成立した。 同法案に対しては周知の通り相当の批判があり、また自民党や与党である公明党からも問題点を指摘する声が相当数出たためか、日本維新の会・みんなの党との合意にもとづいた修正が加えられることとなった。 そこで以下では、成立時の条文を前提として、特定秘密保護法がなにを定めた法律であり、どのような問題を含んでいるかについて説明したのち、本法案をめぐる議論がしめすものについて述べることにしよう。 なおそもそも国民に対する秘密を作る法律などというものがなぜ必要なのか(あるいはどのような条件があれば不要なのか)という問題については別稿で論じているので参照していただければありがたい(大屋雄裕「秘密と近代的統治:「特定秘密」の前に考えるべきこと」『図書新聞』3140号(2014年1月1日)、図書
松尾匡のページ14年2月4日 小谷崇さんを追悼して都知事選挙について 2月1日に経済理論学会のメーリングリストで、政治経済研究所の小谷崇さんの訃報が届きました。1月29日、急性心不全のため逝去。享年85歳とのこと。 去年の経済理論学会大会に姿を見せなかったので、どうしたのかなという声はあったのです。しかし、私は小谷翁は不死身ということを当然の前提にしてきたので、深く気にかけないできたのでした。だから突然の報に、心にどう整理をつけていいか途方にくれています。 2012年の愛媛大学での経済理論学会大会の後の夜、小谷翁と八尾信光さんと三人で飲んだときの話を以前このエッセーコーナーに書きました。 そのときにも書きましたけど、今、経済理論学会(マル経の全国学会)で、大声で総需要拡大政策を唱えているのは、このときの小谷翁と八尾さんと私と、あとは「百年国債」の日銀引き受けを提唱されている岩下有司さんくら
絶望の果てに希望は見出せるか──アフリカ遊牧民の紛争のフィールドワークから 湖中真哉 アフリカ地域研究 / 人類学 / グローバリゼーション研究 国際 #フィールドワーク#アフリカ遊牧民#USAID#ピース・キャラバン アフリカでも高地の明け方はかなり冷え込む。 未明5時、敵の笛の音があたりに鳴り響いた。襲撃者が自らを勇気づけるために歌う戦闘歌が低く響く。辺りに悪臭が漂う。われわれの民族はシマウマの臭いを嫌うが、敵兵は、防寒のために、シマウマの脂を体に塗りつけているからだ。敵兵は、防寒のために、ジャンパーやプルオーバーを着ているが、われわれに見せかけるために、同じような腕輪、耳飾り、頭巾を身に纏っている。 敵の侵入を防ぐために集落を囲っている棘のある樹木がミシミシと破られていく。囲いには銃を持って寝ずの番をしているわれわれの警備がいる。襲撃を知った警備は空砲を撃って知らせる。「早く外に出ろ
大仰なタイトルに見えますが,昨年の試みを継続して,政治思想史・政治理論分野での収穫を簡単に振り返ってみるというだけのことです.内容に踏み込んだコメントを付す力量はありませんので,あくまで表層的なまとめに徹します. さて,昨年同様に教科書・概説書から入るなら,まずは宇野重規『西洋政治思想史』有斐閣(有斐閣アルマ Basic)の刊行が目を引きます.西洋政治思想の通史としては川出/山岡『西洋政治思想史』が昨年出たばかりですが,単著の通史はしばらく現れていませんでした.やはり昨年に川崎/杉田 (編) 『現代政治理論』新版が出ていますので,これでテキストはかなり充実を見たはずです(残るは日本/東洋政治思想史でしょうか).なお,同著者による宇野重規『民主主義のつくり方』筑摩書房(筑摩選書 76)は,現代民主主義の可能性をプラグマティズムに見出そうとする卓抜なエッセイです. 刊行中の古賀敬太 (編) 『
2010年から毎年年末にこのネタを書いてきてますが、2013年版今年の○冊を。2010年にこれを始めたのは、当時なぜか現代日本政治関係の博士論文が続々と出版されていて、それを紹介しようと思ったからです。最近減ったかな、と思ったのですが、やはり今年については現代政治関係の博論はちょっと少なめだったみたいです。どちらかというと最近は、そういう博論(それ以外の分野でも)を出版してきた人たちが二冊目以降に相対的に一般向けの本を書く、というのが多かったような気がします。 まず2013年初頭ころのものとしては、伏見岳人『近代日本の予算政治1900−1914―桂太郎の政治指導と政党内閣の確立過程』、鈴木一敏『日米構造協議の政治過程』でしょうか。両方ともダイレクトに専門が近いわけではないので十分に読みきれているわけではないのですが、実はいずれも「制度化」にかかわるテーマとなっています。前者は桂太郎時代の予
D・A・ミラーの『小説と警察』より*1。小説(フィクション)というリベラルな空間が、いかに「自由」を生産しているかのように見えながら実際は権力に組み込まれているのではないか。”ミラーの図式では、犯罪者は自分の「自由」を信じて、権力の外部に立って体制を翻弄しようとするのだが、結局捕えられ、「自由」はむしろ体制に順応し、その内側にとどまる者にこそ属する、という教訓が読者に与えられる。”*2。 ……規律によって警察を補完する力が警察を「否認」することによって、この力は別のもっと目に見えにくいレベルで、別のもっと効果的な様式で、警察権力を行使することができる。これと同じように、小説自身による警察権力の拒絶は、この控えめな止揚から遠ざかるどころか、これを推し進めているとみることができるだろう。小説は、警察権力を非難するときにはいつでも、まさに小説という表象行為の実践によって、その権力をすでに再建して
ちょっと前に松沢裕作先生の『町村合併が生まれた日本近代』を読んだ。以下これに関連して考えたことをつらつらと備忘のため。本書については、実のところはじめは明治の大合併においてどのような町村合併が行われてきたのかを分析するものだと思ったんだけど、メインテーマはそこではない。町村合併を可能にした条件として、町村合併の前段に人々が生きるために「村」に帰属し、「村」の単位で外の世界と接触していたのが、個人という単位として扱われるようになっていたことを議論するところにある。それは要するに人間が「村」ではなく個人として国家との関係を結ぶことを求められるようになったという変化を描くということで、実のところ「明治維新」よりもラディカルな社会革命を描いたものだと思う。 一番興味深いと感じた議論は、村役人という近世村のリーダーたちが「村」をめぐる負担−「村」単位で税金を納め村請制のような制度−に耐えかねる中で従
オバマ政権の2期目もすでに一年以上が経ちました。アメリカ大統領の2期目というと、必ず出てくるのが「レームダック」という言葉であり、大統領の指導力のなさが言われます。たとえばファイナンシャルタイムズのこの記事のように。特にオバマの場合、1期目の最大の政治的業績である医療保険改革の法案、Affordable Care Actの為に2期の1年目にスタートしたオンライン上での医療保険購入サイトがオープン当時まともに動かない*1という問題があったりして、2期目は最初から躓いてしまいましたし。 しかし最近、潮目を変えてくれそうな事が「核」絡みで二つありました。 一つはイランとの核開発についての合意であり、もう一つがその合意の数日前のアメリカ時間11月21日のアメリカ連邦上院での「核オプション」の行使です。この「核オプション」とは、近年のアメリカ政治をマヒ状態に陥らせていたフィルバスター*2を無効化する
■中国官僚の新発見「ザーサイ指数」、出稼ぎ農民の移動を知るてがかりに■ 銀座園のザーサイ / kimishowota 記事のまとめ ・ザーサイの売れ行きで出稼ぎ農民の人口移動が分かる。 ・李克強の新型都市化改革の先行きを占うザーサイ指数。 ・中年になる故郷に戻る出稼ぎ農民たち、・帰還を喜べない地元政府。 ■ザーサイ指数でわかる出稼ぎ農民の移動 中国国家発展改革委員会のある官僚が、出稼ぎ農民の移動を把握できる「ザーサイ指数」なる発見をしてしまったという。2013年8月9日、経済観察報の記事「都市化の“ザーサイ指数”」が伝えた。 インタントラーメンやザーサイなどの安価な食品は住民の収入が増えても消費量は変わらない。よってザーサイ消費量の増減は人口移動を如実に反映しているという。その急激な変化は流動人口、すなわち出稼ぎ農民の移動と直結している。 ザーサイ製造大手、涪陵ザーサイ集団の業績報告を調べ
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