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ブックマーク / cinemandrake.com (22)

  • 『ロボット・ドリームズ』感想(ネタバレ)…手を繋いだことは忘れない

    世界中で愛される作品を送り出してきた大ベテランの“宮崎駿”監督への功労賞的な意味合いが濃かった受賞でしたが、そちらの映画は徹底してリアルからファンタジーへと突き抜けていくアニメーションが凄まじい濃密な物量で描かれており、見ている間はそのクリエイティブの気迫に圧倒されっぱなしでした。 一方、この第96回アカデミー賞の長編アニメーション部門にはもう一作の有力候補があり、多くの推しファンを抱えていた映画がありました。 それが作『ロボット・ドリームズ』です。 『ロボット・ドリームズ』は『君たちはどう生きるか』とは真逆のような作品です。『ズートピア』のような動物を擬人化したキャラクターが日常をおくる世界観になっていますが、ニューヨーク・シティを舞台にしており、その生活風景は生々しいくらいに私たちの世界と地続きです。ニューヨークらしさがあちこちに溢れています。 そしてその絵のタッチは、子ども向けの絵

    『ロボット・ドリームズ』感想(ネタバレ)…手を繋いだことは忘れない
  • 『スパイダー 増殖』感想(ネタバレ)…蜘蛛が怖い理由の奥深く

    フランスからクモ・パニック映画が出現 蜘蛛(クモ)はお好きですか? 「なんてこと聞くんだ。好きなわけないだろ! あんなおぞましい生き物!!」 それくらいの拒絶反応があってもおかしくない。それが蜘蛛という虫(昆虫ではない。広義の虫です)。 蜘蛛を極度に嫌ってパニックになるような人は「クモ恐怖症(arachnophobia)」と呼んだりしますが、なぜそこまで蜘蛛は嫌われやすいのか。その理由は諸説あるようで、よくわかっていません(西欧の研究ばかりなので、蜘蛛への独自の文化がある別の地域の研究も参照したいところですが…)。 でもよく考えると蜘蛛には理不尽な話です。一部の猛毒な蜘蛛を除けば、蜘蛛が人間に危害を加えることはまずありません。むしろ害虫をべるので有益です。逆に蜘蛛のほうがよっぽど人間が怖いでしょう。 そんな蜘蛛、やっぱりというか、映画でもモンスターみたいな扱いが多いです。 クラシックな『

    『スパイダー 増殖』感想(ネタバレ)…蜘蛛が怖い理由の奥深く
  • 『すべてをかけて:民主主義を守る戦い』感想(ネタバレ)…白票運動に惑わされる前に

    白票運動はなぜ要注意なのか 「選挙です」と言われたとき、「私、投票って全然したことがなくて…どうすれば…」と困ってしまっている人がいるかもしれません。それは当然です。知らないことがあっても恥じることはないです。 日での投票のしかたを簡単におさらいしておきましょう。 選挙が始まると、投票できる人にはその人の住所に「投票所入場券」が郵送で送られてきます。そこに投票所の場所が書かれています。そこで投票することになります。投票は基的に投票日が1日ありますが、その前でも一定期間は投票できる場所が設けられています。 自分の行きやすい投票所を判断し、投票所へ向かいましょう。「投票所入場券」を持参するとスムーズですが、それがなくても人確認書類があると手短に投票できます。 まず受付で名簿と照合し、その人が投票できるかを確認します。とくに複雑な記入書類などがあるわけでもなく、受付に行けばいいだけです。

    『すべてをかけて:民主主義を守る戦い』感想(ネタバレ)…白票運動に惑わされる前に
  • 『サウンド・オブ・フリーダム』感想(ネタバレ)…Q世主になりたいだけでは

    “Q”世主になりたいだけではないですか?…映画『サウンド・オブ・フリーダム』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:Sound of Freedom 製作国:アメリカ2023年) 日公開日:2024年9月27日 監督:アレハンドロ・モンテベルデ 性暴力描写 児童虐待描写

    『サウンド・オブ・フリーダム』感想(ネタバレ)…Q世主になりたいだけでは
  • LGBTQ当事者を狙うオンラインハラスメントの特徴と対応【個人的整理】

    「オンライン・ハラスメント」とは、インターネットやウェブサービス上で起きるイジメや嫌がらせのことで、英語では「cyberbullying」「cyberharassment」「online bullying」と呼んだりもします。 LGBTQの当事者はオンライン・ハラスメントの被害を受けやすく、泣き寝入りする人も多いことが報告されています(The Advocate)。ひとりで悩みを抱え込む人も少なくないでしょう。 私もオンライン・ハラスメントの被害を受けたことがありますが、被害者になってしまうと不安が増し、より脆弱となり、状況が悪循環に陥りやすいです。 そこで少し冷静になれるように、オンライン・ハラスメントに関する手口の特徴と対処を整理しました。ひととおりLGBTQ向けにまとめていますが、LGBTQ関係なく全般的に該当する事項もあります。 被害者として自覚できるように、または加害者にならないた

    LGBTQ当事者を狙うオンラインハラスメントの特徴と対応【個人的整理】
  • 『カラーパープル』感想(ネタバレ)…2023年、時代が原作に追いついた

    2023年に映画に舞い戻った「カラーパープル」 ハリウッドではリメイクやリブートは毎年のように何作も製作され観られます。中には「これ、リメイクする必要ある?」という映画もあります。正直、大手映画企業が自社の有するIP(知的財産)を更新したいだけなんだろうなという下心も透けて見えますが…。 ただ、このタイトルはリメイクされる意義が当に大きい一作になるだろうなと思います。ほんと、いろいろあったから…。 それが2023年にアメリカで公開された作『カラーパープル』です。 作はアフリカアメリカ人の著名な作家にしてフェミニストとしても活動実績のある“アリス・ウォーカー”が1982年に執筆した「The Color Purple」を原作としていますが、この小説は“スティーヴン・スピルバーグ”監督によって1985年に『カラーパープル』として映画化されました。 この1985年の『カラーパープル』はアカ

    『カラーパープル』感想(ネタバレ)…2023年、時代が原作に追いついた
    musashinotan
    musashinotan 2024/02/11
    <本作は親から子への児童虐待や性暴力を背景にした物語となっています。直接的描写は薄くても、ハッキリとその被害者の苦悩やトラウマを描いていますので、じゅうぶんに留意してください。>ふむ
  • 『哀れなるものたち』感想(ネタバレ)…魔改造フェミニズムの薦め

    ヨルゴス・ランティモス、どこまでいく? さっそくタイトルから入りましょう。 今回紹介する映画は、私が「2023年の映画ベスト10」の第1位に選んだ作品。アメリカでは2023年12月に一般公開で、日では2024年1月26日に公開でしたが、東京国際映画祭で一足先にお披露目され、それよりもっと前のヴェネツィア国際映画祭ではコンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞しました。 それが作『哀れなるものたち』です。原題は「Poor Things」。 開口一番で話題にしたいのが作の監督。ええ、この人です。“ヨルゴス・ランティモス”…(ラスボス風の響きで)。私、たぶん、“ヨルゴス・ランティモス”のこと好きなんだろうな…(突然の乙女ゲーム的な告白の呟き)。 「天才」なのか、「奇才」なのか、「変態」なのか、それはわかりません。でもとにかくヘンテコなクリエイターです。 このギリシャ出身の監督の作る映画

    『哀れなるものたち』感想(ネタバレ)…魔改造フェミニズムの薦め
  • シネマンドレイクが選ぶ「2023年 映画&ドラマシリーズ ベスト10」…健康がマイナスワンでも

    私はまだなんとか頑張ってます… 2023年も終わり。 今年も映画をいろいろ観ました。ストライキしながら鑑賞するのです。 ということで、私、シネマンドレイクが選んだ2023年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2023年に劇場公開された or 配信スルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です。 さらにドラマシリーズのベスト10も発表しています。 ついでに独自の部門別でも選びました。 私が2023年に鑑賞した新作映画数は配信も含めると…と、ここでいつもなら視聴作品数をざっくり書くところなのですが、私は今年夏ごろから体調を大幅に悪化させてしまいまして…。例年よりもかなり鑑賞数が少なくなってしまいました。こちらの感想サイトの更新はなんとか継続はしていたのですが…。 バービーみたいに不健康とは無縁の身体になりたい…。 今回はそんな私の2023年のベ

    シネマンドレイクが選ぶ「2023年 映画&ドラマシリーズ ベスト10」…健康がマイナスワンでも
  • 反多様性・反LGBTで使われやすいレトリックを整理する

    「多様性」や「LGBT」という言葉は、日でもすっかり知れ渡り、単語として一般化した雰囲気ですが、実際のところ、それらの言葉の意味は正しく理解されているのでしょうか? 正確に理解しないままになんとなく頭に入れてしまっている人もいれば、その不正確な認識に基づいて「反“多様性”」や「反”LGBT”」に傾く人も珍しくありません。「最近、多様性とかLGBTってよく言うけどさ~」と、今の流行りの言葉につい口をはさんでみせてマウントをとる人も見かけますが、たいていは「多様性」や「LGBT」の意味を適切に理解していません。 それでも学習の機会は乏しく、不正確な情報が拡散されやすいネットの特性も悪化の原因となり、「反“多様性”」や「反”LGBT”」にまつわる言説は増すばかりです。 そこでこの記事では「反“多様性”」や「反”LGBT”」で使われやすいレトリックを整理することにします。 ※この記事は私が個人用

    反多様性・反LGBTで使われやすいレトリックを整理する
  • 「Barbenheimer(バーベンハイマー)」を解説。その発端と流行から炎上までを振り返る

    2023年の夏、とあるインターネット・ミームがSNS(ソーシャルメディア)を席捲していきました。 それが「Barbenheimer(バーベンハイマー)」です。 インターネット・ミームが流行し、炎上していく…それはネット上で毎年365日繰り返され続けていること。しかし、この「Barbenheimer」は映画史にとっても時事的な要素をあれこれ凝縮したような特別なインターネット・ミームでした。 ということでその歴史をメモする意味でも、今回は「Barbenheimer」についてここに整理しておきたいと思います。 「Barbenheimer(バーベンハイマー)」とは? まず「Barbenheimer」とは何でしょうか。 これは2つの映画によって生まれたインターネット・ミームです。その2つの映画とは、“グレタ・ガーウィグ”監督の『バービー』と、“クリストファー・ノーラン”監督の『オッペンハイマー』。

    「Barbenheimer(バーベンハイマー)」を解説。その発端と流行から炎上までを振り返る
  • 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想(ネタバレ)…私の世界は無限大!

    2022年はこの映画が旋風を巻き起こした 映画は最初から話題な作品もたくさんありますが、話題になっていなかった作品が想定外に大ブレイクしたりするから面白いと思います。 2022年にアメリカで最も想像以上の話題作となった映画と言えば、やはりこれを抜きには語れないでしょう。 それが作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。 原題は「Everything Everywhere All at Once」。長いですけど、略して「EEAAO」かな? 日では「エブエブ」と訳して宣伝しているようです。でもこの長いタイトルも映画編を観れば納得。どの単語も欠けるわけにはいかない。まさしくエブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスな映画ですから。 作は2022年3月11日に開催されるサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で初めて公開されました。ここまでは普通です。3月25日にアメ

    『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想(ネタバレ)…私の世界は無限大!
  • あなたも「“昆虫食”陰謀論」にハマってませんか? 昆虫食への嫌悪感の理由と映画の影響

    皆さんは「虫」をべたことはありますか? 走っているときにうっかり虫が口に入ってしまったとか、そういうのはノーカウントです(ちなみに「The Conversation」によれば私たちは1年で250g程度は偶然にべ物などに混入した虫を口にしてしまっているそうです)。今回は虫を事として意図的にモグモグしたことはあるか…という話です。 「虫」をべることを「昆虫(entomophagy)」と呼びます。あまり虫をべることになじみがないという人も多いでしょう。でもこちらは身近にあるかもしれません。 それが「“昆虫”陰謀論」です。今回はこの「“昆虫”陰謀論」について私なりに整理しています。 このサイトでは普段は私は映画やドラマの感想を書いているのですが、全然関係ないじゃないかと思うかもしれませんが、実は後半には映画の話題もでてきたり…。気になる人はぜひ気軽に読み進めてみてください(虫の画像

    あなたも「“昆虫食”陰謀論」にハマってませんか? 昆虫食への嫌悪感の理由と映画の影響
  • 『別れる決心』感想(ネタバレ)…2人の関係は永遠に未解決のままで

    あらすじ(前半):捜査の始まりは付き合いの始まり 射撃訓練場で刑事の男2人が並んでいました。ひとりはチャン・ヘジュン。ベテランであり、仕事一筋でどんどん手柄をあげており、同僚からも最も昇進に近い人間と認識されていました。もうひとりのスワンはそのヘジュンの部下です。「最近、殺人事件が多いな」と会話しながら、それでも捜査はあまり進展しておらず、ヘジュンは「俺たちでやるしかない」と張り切っていました。 ヘジュンは仕事ばかりでほとんど家に帰っておらず、たまに家に帰るとのアン・ジョンアンはお隣から離婚するのではと心配されたと言います。原子力発電所で働いているとの数少ないひととき。しかし、それも殺人事件の発生の連絡でまた終わりです。 今回は男性が山頂から転落死する事件でした。死体はイヤホンをつけており、明らかにクライミングをしていたと思われます。ヘジュンはさっそく自ら崖を登って調べ、現場にあった身

    『別れる決心』感想(ネタバレ)…2人の関係は永遠に未解決のままで
  • ドラマ『ガンニバル』感想(ネタバレ)…Disney+による全国の後藤さんに対する風評被害

    後藤家の卓(人間っておいしいな) 昔、「伊東家の卓」というテレビ番組がありました。1997年から2007年の長期間にわたって放送された日テレビ系列の情報バラエティ番組で、高視聴率を記録し、お茶の間で知れ渡っていました。私はテレビを見ない人間ですが、タイトルくらいはそんな私でも知っているくらい、一種の社会に浸透した番組になっていました。 なぜ「伊東家」なのかといえば、俳優でもある“伊東四朗”の冠番組だったからなのですが、この番組名があまりに認知されてしまったゆえに、日全国の「伊東」もしくは「伊藤」さんはちょっと揶揄われやすい立ち位置になってしまった面もあったでしょう。そういうことって稀に起きますよね。 そして2023年は今度は「後藤」さんがそのターゲットにされそうです。 そんな作品が作『ガンニバル』。 作はとある日田舎の集落に引っ越してきた駐在の男のその家族である&娘が、あ

    ドラマ『ガンニバル』感想(ネタバレ)…Disney+による全国の後藤さんに対する風評被害
  • シネマンドレイクが選ぶ「2022年 映画&ドラマシリーズ ベスト10」…トム・クルーズのように走れないけど

    メンタル面は絶不調。でも映画は観る 2022年も終わり。 今年も映画もあれやこれやとたくさん観ました。すっかり映画業界はコロナ禍から解放されて、続々と大ヒット作が生まれました。こうやって業界が元気なのが一番嬉しいです。 ということで、私、シネマンドレイクが選んだ2022年の映画ベスト10を発表したいと思います。対象は私が今年観た「2022年に劇場公開された or DVDスルーで発売された or 動画配信サービスで配信された新作映画」です。 さらにドラマシリーズのベスト10も発表しています。 ついでに独自の部門別でも選びました。 私が2022年に鑑賞した新作映画数は配信も含めると今年も350は超えると思いますが、正確には数えていません。なんだろう、老化なのか、1年の初めの頃に見た映画とか、「今年の映画だったっけ?」っていつも思ってしまう…。ドラマシリーズの鑑賞数は…わからない…。202

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  • 『アメリカボーイスカウトの闇』感想(ネタバレ)…使命や美徳の裏に性的虐待が隠されている

    アメリカのリーダーシップを育てる基盤となってきたボーイスカウトアメリカ連盟(BSA)が100年にわたって隊員の中に児童性的虐待者を匿い続けてきたという歴史。それはほんのわずかな事件ではなく、8万2000人以上の男性が被害を訴えるほどのかつてない規模として浮かび上がる。そして最終的に組織の財政破綻と破産に繋がっていく中、アメリカ最大の青少年団体がいかに託された少年たちを守れなかったのかを分析する。 子どもを育む場所のはずが… 2022年10月、日の性犯罪規定の見直しを検討している法相の諮問機関「法制審議会」の担当部会にて、「グルーミング罪」を新設する事務局試案が提示され、ニュースになっていました。 グルーミングというと、基は動物の毛繕いを意味する言葉でしたが、性犯罪の文脈では、主に犯罪目的で親切を装って未成年者と良好な関係を築いて手なずける行為を指します。英語では「child groom

    『アメリカボーイスカウトの闇』感想(ネタバレ)…使命や美徳の裏に性的虐待が隠されている
  • 『金子文子と朴烈』感想(ネタバレ)…関東大震災の追悼にこの人たちは含まれているのか

    1923年の東京。アナキストとして意気投合した朴烈と金子文子は、唯一無二の同志、そして親密なパートナーとしてひとつ屋根の下で共に生きていくことを決める。しかし、関東大震災の被災による大混乱の最中、政府はデマを流して朝鮮人の虐殺を扇動。社会主義者らの身柄を無差別に拘束し、朴烈や文子たちも獄中へ送り込まれてしまう。社会を変えるため、そして自分たちの誇りのために獄中で闘う事を決意した2人だったが…。 この人たちへの追悼を忘れない 1923年9月1日に発生した「関東大震災」。死者・行方不明者は10万5000人と推定され、明治以降の日の地震被害としては最悪。そんな震災のあった日が毎年来るたびに、日では追悼式が行われています。 その震災被害でもじゅうぶんに酷いのですが、その最中におぞましい人災も起きていたことも忘れてはなりません。人災…というか、明らかな虐殺。それが当時日で暮らしていた大勢の朝鮮

    『金子文子と朴烈』感想(ネタバレ)…関東大震災の追悼にこの人たちは含まれているのか
  • 『わたしは最悪。(The Worst Person in the World)』感想(ネタバレ)…私は最悪?最低?

    そして地元愛は作品として結実します。2006年、“ヨアキム・トリアー”はこのオスロを舞台にした映画『リプライズ』で長編映画監督デビューを飾ります。20代前半の男女友人グループを描き、それぞれの葛藤が独特のタッチで映し出されていくこの映画は、批評家ら高い評価を受け、注目の新鋭監督のひとりとして脚光を浴びました。 続く2作目の『オスロ、8月31日』(2011年)もその名のとおりオスロが舞台で、リハビリ中の麻薬中毒者を主人公にするもの。こちらの映画も高評価を獲得し、もうこの時点で世界の最前線に立つ監督として立場を確立していきます。 “ヨアキム・トリアー”監督の作家性はわかりやすく、基はメランコリックな人間模様や人間の内面を描いています。その登場人物のキャラクター性はワンパターンではなく、複雑で読み取りづらいものばかり。それをあえて題材にして、巧みに物語で表現していく。それこそがこの監督の持ち

    『わたしは最悪。(The Worst Person in the World)』感想(ネタバレ)…私は最悪?最低?
  • 『PIG ピッグ』感想(ネタバレ)…ただのブタが好きなニコラス・ケイジです

    奪われたブタを取り返すために… 映画では主人公が「自分より小さい大切な存在」を奪われて戦いにいくという物語が頻出します。たいていはその小さい存在は子どもです。そうなると主人公は親の立場であることが多いです。ドラマ『マンダロリアン』なんかは小さい異種族の子どもを守る話でしたが、SFのジャンルであっても同じですね。この構図が多用されるのは、主人公の行動の動機として最も定番であり、観客にも共感を与えやすいからなのでしょう。小さく弱い存在を守るのは当然の役目だろうということで…。 でもどうでしょうか。子どもでも何でもなく、ブタを守るために奮闘する主人公というのはさすがに珍しくないですか? そんな奪われたブタを取り返すために行動に出た男を描く映画が今回の紹介する作品。それが作『PIG ピッグ』です。 『PIG ピッグ』はタイトルがそのまんま物語るとおり、ブタが重要な存在なのですが、このブタは用の

    『PIG ピッグ』感想(ネタバレ)…ただのブタが好きなニコラス・ケイジです
    musashinotan
    musashinotan 2022/08/26
    10月7日に新宿シネマカリテ等で上映されるのは嬉しい😄
  • 『女神の継承』感想(ネタバレ)…タイ文化を見て学ぶ。憑依編!

    私も“ナ・ホンジン”監督作はとても好みにハマり、『哭声 コクソン』は病みつきになりました。韓国のとある田舎村で起きる凄惨な事件、その得体の知れない恐怖と疑心暗鬼の底なし沼、そしてやたらアドレナリンを喚起させる怒涛の祈祷…。あのバッドエンドに容赦なく突き進む暗黒オーラ全開な感じが何度観てもいいですね。 その“ナ・ホンジン”は『哭声 コクソン』の続編を考えていたらしいのですが、それがしだいに今度はタイを舞台にした憑依&祈祷のこれまたエグさ120%の映画へと変貌したのが今作『女神の継承』。なので今回の映画はタイの田舎村です。まあ、起きることは『哭声 コクソン』と似たり寄ったりなのですが…。 で、これも『女神の継承』を語るうえで重要だと思うのですが(ただ日の宣伝はこの要素を説明していないのだけど)、作はモキュメンタリーとなっています。モキュメンタリーという言葉を知らない人のために軽く説明すると

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