米国がなりふり構わずに中国による先端半導体の製造や利用を止めようとしている。その強硬ぶりはかつての日本の半導体産業の競争力をそいだ貿易摩擦のとき以上だ。その混乱に半導体産業の構造的な変化も重なり、企業間の競争も激化している。半導体産業の将来を占う本連載の第1回は、米中のはざまで揺れる半導体関連企業の今を報告する。
8月17日、米商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security)(以下、BISという)は、中国のファーウェイと関連企業に対する禁輸措置を強化する声明を発出した。 これにより、米国の技術やソフトウエアを使用して製造された半導体やソフトウエアのファーウェイへの供給が事実上、全面禁止となった。 また、同声明においてファーウェイの関連企業38社をエンティティリスト(EL)に追加するとともに、これまでファーウェイなどに付与してきた暫定包括許可(TGL:Temporary General License)も失効した旨を明示した。 ここで、なぜ米国がファーウェイに対する禁輸措置を強化するに至ったかについて、その原因を遠因・中間の原因・近因に分けて筆者の考えを簡単に説明する。 遠因:激しさを増している米中の対立は、覇権国・米国と新興国・中国の覇権争いであると筆者は見てい
記事保存 日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。 長引く新型コロナウイルスとの戦いに世界が苦闘している中、米中の冷戦が激化している。中国は医療物資を大量に提供する「マスク外交」を展開する一方、米国は華為技術(ファーウェイ)排除拡大などの相次ぐ強硬策で押さえ込みにかかる。米中冷戦は20年続くかもしれない。国際的なビジネスルールが変わろうとしている中、外資系企業の戦略設計や欧米の経済安全保障政策に精通する国分俊史・多摩大大学院教授(同大ルール形成戦略研究所所長)は「日本企業は経済安保の視点を織り込んだ経営改革を急ぐべきだ」と警鐘を鳴らす。 エコノミック・ステイトクラフトはオバマ政権でも構想 ――米中の対立が深刻度を増しています。昨年の貿易戦争から、中国に対し米国が強引に経済制裁を発動しているようにもみえます。個性的なトランプ大統領
中国の新型肺炎の感染が拡大して、経済への深刻な影響が懸念されている。とりわけ発生源である中国・武漢市は自動車産業の一大集積地で、自動車業界のサプライチェーン(部品供給網)への大きな影響にメディアの関心も注がれている。中国での自動車生産への部品供給や中国からの自動車部品の輸入など、世界の自動車生産体制への広範な影響が懸念されるのは当然のことだ。 しかし、もう一つ忘れてはならないのが半導体産業だ。 半導体産業は「中国製造2025」の最重点産業で、2025年までに自給率7割を目標としている。武漢はその中核拠点と位置付けられ、海外技術を基に巨大工場の建設を進めている。台湾から大量の技術者を引き抜くなどして、中国半導体大手の紫光集団は中国メーカーとしては初めて3次元NAND型フラッシュメモリーの量産に乗り出した。 「中国製造2025」は単なる産業政策ではない。目的に「軍民融合」を掲げて、産業競争力の
南川明氏(日本調査部ディレクター):半導体業界を中心にエレクトロニクス産業全般を担当 前納秀樹氏(コンサルティング・ディレクター):システムLSIを中心にIoT、クラウド、メディア関連エレクトロにクス産業の市場分析/ビジネス分析を担当 李根秀氏(主席アナリスト):機器分解によるデバイスのコスト調査などを担当 大庭光恵氏(シニアアナリスト):主に情報通信分野の市場分析/ビジネス分析を担当 杉山和弘氏(コンサルティングアソシエイトダイレクター/主席アナリスト):半導体/エレクトロニクス産業全般の市場分析/ビジネス分析を担当 東芝メモリに対する危機感 前納秀樹氏 製品分解をしていると、もう一つ気付くことがあって。 部品の中で、価格的に高いのはやっぱりメモリなんですよね。日系企業だとNAND型フラッシュメモリを持つ東芝メモリがある。 Huaweiスマートフォンの上位機種に搭載されている部品のシェア
トランプ大統領がツイッターでのつぶやきで予告した通り、米国政府は5月10日、2000億ドル分の中国製品について関税をこれまでの10%から25%に引き上げた。米国による中国製品の関税引き上げは中国経済にどのような影響をもたらすのか。普段から付き合いのある中国国内の証券会社のアナリストに取材を申し込んだところ、返ってきたのは「今回は応じられません」との答えだった。 理由を問うと「みんなが答えていない中で、自分だけが話すのはちょっと……」。いつもの明快な口調が消え失せ口ごもる様子には、はっきりと言えないが察してくれという空気がにじんでいた。 米国政府は10日の関税引き上げに続き、13日にはスマートフォンなど消費財を多く含む約3000億ドル分を制裁関税の対象とする「第4弾」の措置も発表した。それでも中国政府は外務省の耿爽副報道局長が「貿易戦争を恐れてはいない。最後まで付き合う」と述べるなど、強気の
米中摩擦の“主旋律”と“通奏低音”が一挙に音量を増してクライマックスの展開になってきた。米国の対中戦略については、トランプ米大統領による報復関税合戦の“主旋律”と米国議会、政権幹部、情報機関など“オール・アメリカ”による冷戦モードの“通奏低音”に分けて見るべきだが、いよいよ両者が合体・共鳴してきた。 トランプ大統領による派手な報復関税合戦は表面的には非常に目立ち、耳目を集めている。これが私の言う“主旋律”だ。直前まで合意寸前と見られていた米中貿易交渉が一転、暗礁に乗り上げた。米国は2000億ドル分の中国製品に課す第3弾の制裁関税を10%から25%に引き上げ、さらに第4弾として制裁関税の対象を中国からの全輸入品に広げることを表明した。合意に向けて楽観論が市場を含めてまん延していただけに、衝撃を与えている。 今後、仮に急転直下合意があったとしても、それは“小休止”にすぎず、2020年の大統領選
中国の通信機器メーカー、ファーウェイを巡る問題はオバマ政権末期からの根深い問題だ。2010年1月に米国議会の特別委員会が調査をスタートし、2012年に調査報告書が出され、安全保障上の懸念が指摘された。 単に次世代通信規格5Gの主導権争いではない。中国は国家主導の経済システム、共産党政権による統治のための監視社会システムを14億人の中国のみならず、中華秩序圏を海外にも拡大しようとしており、ファーウェイはその中核的なプレーヤーだ、と見ているのだ。そしてその技術は不正な手段で入手したものだとして、長年捜査機関によって追跡されてきた。 こうして既に米国によって、ファーウェイはいわば“ロックオン”されている。 またこうした懸念からファーウェイ排除の動きは米国だけでなく、欧州連合(EU)でも広がっていることは忘れてはならない。 英国、フランスだけでなく、親中国のドイツでさえそうだ。ポーランドでもファー
激しさを増す米中対立。新たな火種は中国の通信機器・スマートフォン(スマホ)大手の華為技術(ファーウェイ)の副会長兼CFO(最高財務責任者)がカナダ当局に逮捕された一件。米国が制裁を科すイランとの違法取引に関わっていた疑いが持たれている。 ファーウェイといえば、欧州やアフリカなどへも通信機器を輸出し、急成長を果たしてきた中国を代表する民営企業だ。日本でもソフトバンクが携帯電話の基地局で採用していることで知られる。ただ、米国はかねてファーウェイの通信機器を通じて中国が不正に通信を傍受しているとして、同社製品を米国市場から締め出してきた。日本を含む同盟国にもファーウェイ製品を使わないよう要請するなど、「包囲網」作りを急いでいる。 米国が締め付けたいのはファーウェイに限らない。米側は中国が半導体やAI(人工知能)などハイテク分野を中心に、米国から不当に技術を持ち出しているとにらむ。 技術流出問題の
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