元朝日新聞およびアエラの記者で、現在はフリージャーナリストである烏賀陽弘道氏の著作。特に新聞を初めとする現代のマスコミが機能停止に陥っているさまを批判するものだが、最も気になったのは、新聞社が人材を上手に使えていないことだ。原発報道に際しても、実は専門家が朝日新聞の社内にもいたのだが、現在割り振られている仕事に忙殺され、また、他の「縄張り」に口を出すこともはばかられ、結果として人材が死蔵されているのだ。林雄二郎は『情報化社会』の中で1960年代に、そして今井賢一や金子郁容は『ネットワーク組織論』の中で80年代に、今後は組織をゆるやかにすることが寛容と説いたのだが、ほとんどの組織でそれが実現しておらず、特に新聞社の組織が硬直化しているさまがよくわかる。しかしそこを改善しなければ、10年後に大新聞といえども滅亡の淵に立たされるかもしれないと思う。 第一章から第三章までは大澤真幸と見田宗介の対談