(初版の序は審査員の一人だった中沢新一氏が書いてくれたのだが著作権もあるので割愛します。) その経緯はアセテート編集者日記2007年9月1日の項を参照していただきたい。 本書は平成5(1993)年に刊行された。その経緯は【刊行に際して】という付記に簡単に書いたので、いくつかおもいつくまま付け加えておきたい。 本書は「近代日本の建築思想を二人の国学者、本居宣長と平田篤胤の思想を手がかりに」(オビより)実験的に考察したものである。当時の日本近代建築史は戦後に踏み込まないのが「常識」だった。だから日本近代の前の「近世」と「戦後」両方とに踏み込んだ。このスパンの取り方はおそらくはじめての試みだったはずである。それらを連続的にとらえようとしたので、それまでの日本の近代建築史と比べてかなり趣の異なるものとなった。本当は丹下健三を考察したかったのであるが、彼の射程がえらく広く深くて、引きずられて近世まで