世界の地上気温のデータセットには、気温の上昇を促す地球温暖化とヒートアイランド(都市熱)の両方の影響が含まれている注1)。後者は「都市バイアス(観測所が都市熱を受けることによる誤差)」と呼ばれ、温暖化の評価上取り除く必要があるために、統計的な補正が行われている。ところが、最新の研究注2)によれば、補正を行っても都市バイアスが残留しているばかりか、別の気温上昇バイアスを生み出しているという。このことは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に引用されている多くの研究が地球温暖化の速度を過大評価している可能性を示唆する。 1.「都市バイアス」ディベートの経緯 観測所が都市にある場合、その気温データには都市バイアスの影響が含まれるため、地球温暖化による変化を正しく表さないことは広く知られている注3)。しかし、都市バイアスが及ぼす気温データへの影響はそれほど大きくないとする研究は多い注4-11)