このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 中国科学技術大学などに所属する研究者らが発表した論文「Loophole-Free Test of Local Realism via Hardy’s Violation」は、改良した高性能な装置を用いて「量子もつれ」(2つの粒子がどれだけ離れていても相関関係を保つ現象)を実験的に検証した研究報告である。 この実験は、アインシュタインが1930年代に「不気味な遠隔作用」と呼んで懐疑的だった“量子もつれした粒子が極めて遠い距離を隔てていても瞬時に影響し合うように見える現象”を検証するものだ。アインシュタインの疑念から約30年後、物理学者のジョン・ベルはこの