「男はね、すぐに『夢があれば貧乏だって耐えられる』とか言うんだけど」 八重子先生がしんみりと語る。 「あんたがいつも空腹で苦しまないでいられるのは、夢のおかげじゃなくて、私が食わせてあげてるからじゃない。いまのあたしだったら、はっきりそう言ってやるわ。『このごくつぶし!』ってね」 宮子は八重子先生が言っている内容については、まるで理解できなかった。 でも、八重子先生のしんみりとした語り口には、なぜか引き込まれた。 「でもそんなこと……18歳のあたしが言えるわけなかったわよ。だって、その年になるまで、父親以外の男の人と、口もきけなかったんだから」 そう言って、ちらりと芋子と宮子を見る。 「うらやましいの」 宮子はドキリとする。 「ひっこみ思案で、いつも本ばかり読んで……あの頃あたしが好きだったのは、そうね、山田詠美の『蝶々の纏足』なんて大好きだった」 宮子は八重子先生の告白に驚いていた。「私