タグ

ブックマーク / finalvent.cocolog-nifty.com (188)

  • 極東ブログ: [書評]アリはなぜ、ちゃんと働くのか(デボラ・ゴードン)

    先日twitterで蟻についての話題があって、そういえばと思って、「アリはなぜ、ちゃんと働くのか 管理者なき行動パタンの不思議に迫る(デボラ・ゴードン、訳:池田清彦、池田 正子)」(参照)を書庫から取り出して読み直した。 たしかこのは新潮OH!文庫として初めて出版されたもので単行からの文庫化ではなかったと思う。アマゾンを見たらそれどころか新潮OH!文庫自体がなくなっているようだ。そういえば見かけない。どうなっているのだろう。なにより、書はすでに絶版らしく、古書でプレミアがついていた。当時600円だったのに、古書では1140円から2500円まで。残念な気がする。このは高校生でも読めて、科学というものについて強いインパクトを受けるに違いないのに。普通の読書人の大人にとっては、蟻の生態といった科学分野に関心のある人ならやはり面白いだろう。そしてある種の創造的なプログラマーにとっても刺激的

  • 素人風邪対策: 極東ブログ

    パキスタン情勢も気になるけど、ちょっと息抜きエントリというか、経験的素人風邪対策の話でも。自分もちょっと風邪気味だし、回りの人やtwitterの人も、風邪引きさんが目立つので。なお、あくまで素人風邪対策なんで、適用は自己責任で。 ■ ホットドリンク ショウガ湯 ちょっと寒気がするかな、元気がないかなというときは、ショウガ湯。ショウガを擦って絞って黒糖で飲んでもいいけど、めんどくさいときは出来合ので。個人的には、今岡製菓の粉末のがグッド。 葛湯 これもちょっと寒気がするかな。お腹がちょっと空いたかなというとき。葛湯は葛の香りで決まるので、葛がいいのだけど、上級品は吉野とかの製造で直接買うしかなさそう。自然屋さんにもそれなりに売っている。作り方にはコツがあるんで、調べてみるといいかも(あるいはいつか書くかも)。出来合の葛湯では、これも今岡製菓の抹茶葛湯が好きだ。あられが香ばしくて美味しい。

  • [書評]マネーはこう動く-知識ゼロでわかる実践・経済学(藤巻健史): 極東ブログ

    藤巻さん、ユーロも外したしサブプライムも外したなあ。おそらく内容は「極東ブログ: [書評]藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門」(参照)と同じだろう。これは読む必要はないか、と実は素通りだった。「マネーはこう動く 知識ゼロでわかる実践・経済学(藤巻健史)」(参照)である。 が、今月のVoiceで彼はこの新著についてこう触れていた。 稿を執筆している九月十八日現在、サブプライムローンの問題が騒がれ、日米の株価が落ちたため、それまで絶好調だったの売り上げが鈍り、「話が違うじゃないか」という読者のお叱りも受けた。しかし率直に申し上げて、私の判断はいまも変わっていない。 へぇ。と思って、早速買って読んでみた。副題に「知識ゼロでわかる実践・経済学」とあるように、前半は経済学的な話が比較的わかりやすく書かれていてちょっと退屈かな、いやこういう基礎はしっかり復習しておくといいかな、ああ、

    RanTairyu
    RanTairyu 2007/10/19
  • [書評]スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学 (吉本佳生): 極東ブログ

    面白いだと思った。よく売れているようだ。ただ私は珍に近いかなという印象も持った。たぶん、このは、れいのベストセラー「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学(山田真哉)」(参照)のノリで企画されたのではないだろうか。あちらが会計学ならこちらは経済学ということで。そうしたノリ、つまり、難しい経済学とかを卑近な事例でわかりやすく説明するという枠組みがこのの前半まで続く。 ただ、さおだけがべたに会計学を指向しているのに対して、このスタバグランデのほうは経済学を指向しているのではなく、現実の価格現象にきちんと向き合ってしまっている。その意味で方向性がまるで逆だとも言える。筆者は経済学というものが社会にどうあるべきか、ある意味で実務的な感性がしっかりとある、あるいはありすぎるのだろう。 ちょっと野暮なことを言うと、経済学は所詮は世間の現象を扱っているので、世間の現象に

    RanTairyu
    RanTairyu 2007/10/11
  • [書評]『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する(亀山郁夫): 極東ブログ

    「極東ブログ: [書評]カラマーゾフの兄弟(亀山郁夫訳)」(参照)で扱った新訳「カラマーゾフの兄弟」の訳者がその訳業に重ねて、満を持して発表した続編説であり、現在水準の研究成果も反映し、穏当とはいえないにせよ、さすがに否定しがたい圧倒的な想像力をもって書かれている。編集者の女性もものすごいお仕事をされたようだ。新訳カラマーゾフの兄弟の魅了された人にとっては必読書になるだろう。 ただ私は、亀山の想定はもっとも大きな線で間違っていると思った。ブログなので夜郎自大な話になるかと思うし、別の書評のようにあえて韜晦に表現しておくほうがいいのかもしれない、が、率直に書いておきたい。 私の読みが間違っているということは大いにありうるというか、その留保は当然のこととして、なぜカラマーゾフの兄弟という小説が書かれたのか、この小説のテーマは何かということが、「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する(亀山郁夫)」

  • [書評]人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか(水野和夫): 極東ブログ

    「人々はなぜグローバル経済の質を見誤るのか(水野和夫)」(参照)をようやく読んだ。先入観といえばそうなのだが、ウォーラーステインとかニューアカ系ゴマ臭さ満載なんじゃないかと引いていたのだが、実際読んでいたら柄谷行人の引用とかも出てきて引いたというか笑った。 読後、なんとも微妙。議論が多岐にわたり、ディテールと概括の遠近感が奇妙なので、ありがちなトンデモかなとも思った。日のデフレの説明とかでも、「でも、それって先進国全体に適用されそうな要素だけど他は概ねインフレなんすけど先生ぇ、どっすか」みたいなツッコミがしたくなる。でもま、概ね職人技というのかわからないけど、現在進行中の米国住宅バブルの結論とかもやばげなところは結局ずばりとは書かれていない。「こ、ここでトンデモの一言をぜひ増田俊男先生!」といった趣向もない。その点は落ち着いたと言えるのかもしれない。 それにしてもこの一種の幻惑感は

    RanTairyu
    RanTairyu 2007/09/14
  • [書評]本は楽しい 僕の自伝的読書ノート(赤川次郎): 極東ブログ

    私は赤川次郎のをほとんど読まない。時代が時代なので何か数冊は読んだ気もするがすっかり忘れている。角川映画「早春物語」(参照)はかなり好きな作品なので(ところで今この歳で見直すとあらぬシーンでチ○コ勃ったりするかもやばそ)、原作「早春物語」(参照)も読んだのだろうと思うが記憶にない。読んでないのかもしれない。私は短いセリフの多い文芸が苦手だ。たぶん携帯電話小説とやらも読めないと思う。それでも赤川次郎についてはずっと関心を持っていた。その理由は書に関係するし、私はこのエントリに書いて、その思いにさよならしたい。 赤川次郎はあまり自身のことを語らない。特に自伝的な話をしない作家だった。このは唯一例外的に赤川が自分のことを語っている。三部に分かれていて、〔I〕青春ノート、〔II〕50歳の出発、〔III〕鶴見俊介との対談。対談は人によっては面白いかもしれないがとりあえずどうでもいいだろう。 〔

  • [書評]石油の隠された貌(エリック・ローラン): 極東ブログ

    石油関連の問題をジャーナリスティックにまとめたで、この分野の専門家による書籍ではない。この分野への関心と多少の基礎知識がないと退屈にも思える歴史の話もたらたらと続く。が、ここは考えようで、歴史好きにはこたえられない面白さがある。例えば、ドイツはなぜロシア侵攻したのか。石油を求めてというあたりは、他の地政学的な背景からそうかもしれないと思わせるものがある。 書全体の結論は、単純に言えば石油枯渇論であり、よって、つまり、トンデモである。石油枯渇論については、以前、「極東ブログ: 原油高騰の背後にある石油枯渇の与太話」(参照)でも扱った。ただ、では、笑ってポイのトンデモかというと、なかなかそう言えないディテールがあり、石油問題に関心のある人、というか、現在の国際政治に関係にある人はさっと読んで「そんなのはすでにご存じ、くだらね」というチェックにすればいいだろうと思う。が存外にそうでもない

  • [書評]2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?(西村博之): 極東ブログ

    書名のパクリ元になっている「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?(山田真哉)」(参照)では、表題の問い掛けが出版社側の企画上のフェイクであり、内容は単なる会計学の初歩のお話だけというのと際立って異なり、「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?(西村博之)」(参照)では、表題の問い掛けに真摯に答える内容になっているのだが、ではその答えはというと、収入モデルとしての広告収入がしっかりしているから潰れないとのことだ。なるほどそうかと納得させられる、ずばりの回答である、ということで、ときおり噂されている、社会的要因及び法的要因によっては潰されないということが縷々主張され、偏見的にも思える意見、例えば、アマゾン読者評にも見られるが、 知りたいのは・・・, 2007/8/21 By 東十条 (東京都赤羽) - レビューをすべて見る こんな内容じゃなく、もっと2ちゃんねるが実際やっているどす黒い部分を書いて欲しいで

  • [書評]カラマーゾフの兄弟(亀山郁夫訳): 極東ブログ

    爽快に読める亀山郁夫新訳が全巻揃うまで読書開始は待とうと思っていたが、最終巻を期待していた春頃、なかなか出ないので、よもやまたかという懸念があったが、7月に5巻で完結した。訳者の苦労に感謝したい。そして50歳になってこのが読めたことを深く自分の人生の喜びとしたい。 大げさな言い方だと自嘲もするし、私など些細な存在だが、この書籍に呪われたような人生だった。私はある意味では早熟でクラソートキンの歳でこの作品に挑んだ。旺文社文庫箕浦達二訳で読み始めたのだった。ロシア語はわからないが(それでも大学で学んだっけと思い出す)良い訳だった。が、二巻までしか出版されなかった。その後旺文社文庫自体が消えた。魯迅もプラトンも鴎外も漱石も私は旺文社文庫で読み、学んだ。 いつの日か箕浦訳が出ると確信していて3年が過ぎ、5年が過ぎ、10年が過ぎた。アリョーシャの歳にもなった。そしてその歳も過ぎた。しかたなく継ぎ接

  • 極東ブログ: [書評]ウェブは資本主義を超える(池田信夫)

    現在のインターネットのシーンでこれを読まなければ先には進めないよという一冊があるとすれば書だろう。ただし、すでにブログシーンのコアなところに漬かっている人なら、知っている話ばかりであるという印象を持つかもしれない。あるいは、ある種のボックスに分類されるべき視点からの思索ノート群に見えるかもしれない。私もどちらかというと当初ざっと目を通したときにそう思った。再読して大いに反省した。 個々の点においては重箱の隅をつつくような批判も可能だが、この書籍全体が示唆するものは相当に長い射程を持っている。最初にここから引用し紹介するのは反って誤解を招きかねないが、次の指摘は一見すると柄谷行人あたりが言いそうなごく当たり前のことのようにも思えるが、この要点を思索の根幹に据えて、ITの未来を正確に見ている人は少ないのではないか。 マルクスの未来社会像としては『ゴーダ綱領批判』の「各人はその能力に応じて働き

  • [書評]催眠誘導の極意(林貞年): 極東ブログ

    催眠術にそれほど関心があるわけではないのだが、昨今のマスメディアのヒステリー的な状況やブログの状況などを見ていて、これは一種の集団催眠的な現象ではないのかと思い、つらつらと思い出したようにこのところ催眠術関係のをいくつか読んだ。 このジャンルのは、として読むと奇妙なフカシが多い。しかし、実際には手品・奇術と同じで実技技能的な側面も強く、全体がくだらないと捨てるべき領域ではない。また、なんとなく子どもたちの世界で時折というか周期的に集団催眠現象みたいなことが起きるのも不思議なのだが、最近そういう背景があるのかもしれないニュースにその背景が見えづらくなってきた。 他、NLPの、と言っていいのかエリクソン関連の翻訳書が増えてきているのもなぜかと訝しく思ったり、フロイトについて物思いにふけったり(フロイトはコカインと催眠術から精神分析を打ち立てた)という関心からも催眠術のを読んだのだが、た

  • [書評]セブン-イレブンおでん部会(吉岡秀子): 極東ブログ

    私はセブン・イレブンのヘビーユーザーということもあってか、「セブン-イレブンおでん部会 ヒット商品開発の裏側(吉岡秀子)」(参照)はとても楽しく読めた。 私がセブン・イレブンを好きなのは近所にあるということもだけど、べ物が美味しいと思えることが一番の理由だ。もちろん全部美味しいわけではないが、お弁当は美味しいなと思うし、私はセブン・ミールも使っているのだが、いままでこれは味を外していると思ったことはほんの数例しかない。ただ、最近は少し味が画一的な感じがしてつまらないなと思うようにもなった。 一日最低でも二回は巡回するセブン・イレブンだが、そうなんじゃないかなと推測していたことが書に解説があって、やはりそうだったのかと頷いたりもした。まったく知らなくて感心したエピソードなどもあった。ところどころに、例えば、セブン・イレブンのメロンパンの変遷史のように歴史年表もあり、これも面白かった。歴史

  • [書評]日本語の語源(田井信之): 極東ブログ

    書籍というのはある意味で売れれば勝ちなので売らんかなのトンデモも出版される。トンデモというのはある程度常識があれば笑って読み飛ばせるエンタテインメントでもあるし、昨今では偽科学・似非科学と揶揄され、少し学問を学べば判別がつくようにも思われている。確かに、科学の世界はグローバルな学会が存在するのでその中核的な学術集団のアートに真偽の信頼をしてもいいのかもしれない。が、これが人文学になると難しい。「極東ブログ: [書評]嘘だらけのヨーロッパ製世界史(岸田秀)」(参照)あたりなどでも簡単には判断できない。 そして一見すると主要な学術派閥からは無視され、あるいはトンデモ扱いされているが、これは正しいのではないかと思われる変なも存在する。昭和五十三年に角川書店から出された「日語の語源」(田井信之)(参照)もそのようなだ。 私はこのをほぼ三十年読み続けた。隅から隅まで読むといった感じでも

  • [書評]「語源で楽しむ英単語 その意外な関係を探る」(遠藤幸子): 極東ブログ

    このところ受験英語みたいなをいくつか買って酒のつまみ代わりに読んでいる。なかなか面白いものがある。受験英語なんて進歩もないだろうと思っていたが、そうでもなく良書っぽいのがあるのだなと気がついた。ただこの「語源で楽しむ英単語 その意外な関係を探る(遠藤幸子)」(参照)については、受験英語ではないし、よくある語源でヴォキャブラリーを増やしましょうという類のではない。むしろ、孤独な大人の酒のつまみみたいなだ。 ネットの広告文ではこうまとめているが、ちょっと印象は違う。 今や世界語になっている英語。その長い歴史の中、数奇な運命をたどって生き残ってきた英単語は数多くある。このような語は、実は同じ起源を持ちながら、今では似ても似つかない姿かたちに分かれてしまったものが多い。書では、「手」「輝く」「上に」などの根源的な意味から生まれた英単語を紹介し、その驚きの結びつきと背景を俯瞰する。 ど

  • ウィキノミクス=ピアプロダクションについてのメモ: 極東ブログ

    前エントリ「極東ブログ: [書評]Wikinomics:ウィキノミクス(Don Tapscott:ドン・タプスコット)」(参照)で取り上げたウィキノミクスだが、読後の感想と、関連する問題、背景について、メモ書きしておきたい。 書籍「ウィキノミクス(Wikinomics)」(原書・訳書)の読後、正確に言うと読書中にも疑問のように思えたことが二点あった。著者たちもその二点は想定していたのか微妙な配慮を持っているように思えた。 ウィキノミクス=ピアプロダクションの収益モデルはどうなっているのか? ウィキノミクス=ピアプロダクションにおけるピアグループ形成の原理およびリーダー論はどうなのか? 一点目の収益モデルだが、いくつかのケースでは提示できないわけではない。たとえば、オープンソースと収益については議論しやすい。また雑駁に言うなら、グーグルがそうであるように、ニッチのように見えたところに新しいプ

  • 極東ブログ: [書評]Wikinomics:ウィキノミックス

    「Wikinomics: How Mass Collaboration Changes Everything(Don Tapscott, Anthony D. Williams)」(参照)の訳書が5月31日に「ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ(ダン・タプスコット、アンソニー・D・ウイリアムズ)」(参照)として出版されることから、「Wikinomics:ウィキノミクス」という概念に、日のIT産業界やネットの世界が注目し始めたようだ。このエントリでは訳書出版以前ということもあり、原書ベースで簡単なメモを記しておきたい。 まず副題を見るとわかるが、原書と訳書とで差がある。原書副題How Mass Collaboration Changes Everythingでは「どのようにマスコラボレーションがすべてを変えるか」として、変化がすべてに及ぶとしている。 これに対して

    RanTairyu
    RanTairyu 2007/05/24
  • 日本もカザフスタンのウランにはなりふり構わぬ資源外交: 極東ブログ

    背景がよくわからないのでためらっていたのだが、とりあえずブログしておこう。話は、先月末の甘利明経済産業大臣によるカザフスタン訪問だ。公式なアナウンスはカザフスタン大使館の”2007年4月29~30日 甘利明経済産業大臣がカザフスタンを訪問 ”(参照)があるが、表向きの話ばかり。 この訪問で、日のウランの全輸入量に占めるカザフスタンから調達の割合が現在の現在1%から30~40%と大幅にアップする。エネルギー全体の依存度を石油から原子力に転換しないといけない日のエネルギー事情を考えると、日のカザフスタンへの依存が洒落にならないくらい大きくなるといえるだろう。 それでいいのだろうか、というのがまず素朴な疑問で、そこからいろいろと思うことがある。今回の合意はすでに前年小泉元総理の訪問で十分に足固めはしてあるので驚くほどのことはなく、たぶんその筋の専門家にはあたりまえの事実がいろいろあるのだろ

  • [書評]フューチャリスト宣言(梅田望夫、茂木健一郎): 極東ブログ

    読みやすかったが、キーワードにひっかかりを持ってしまったせいで私には難しいでもあった。対談なので、当初は、前著「ウェブ進化論 当の大変化はこれから始まる(梅田望夫)」(参照)の解説的な話の展開か、あるいは同じく対談「ウェブ人間論(梅田望夫、平野啓一郎)」(参照)のように、対談者のホームグランドを生かすような展開――今回は脳科学――となるか、という二つの予断をもっていた。そのどちらとも言えないように思えた。 もちろん対談という特性はよく活かされている。両者が互いに相手を理解しつつ配慮しているようすも伺えるし、もともと共通の理解が成立しそうな対話者同士でもあるから、対話の流れがつかえることもなく表面的には読みやすい。個々の挿話も納得しやすい。書名になったフューチャリスト、つまり、マリネッティのそれではなく、インターネットの未来を肯定する人、という点からこの対談を要約するのもそう難しくな

  • [書評]森有正先生のこと(栃折久美子): 極東ブログ

    大人にしかわからない上質な苦みのある、美しく同時に醜悪な恋愛小説のように読んだ。五十五歳の知的な男に三十九歳の才能のある女が十年ほど恋をする物語。さりげないフレーズに当の恋愛にはこの感触があると何度も煩悶のような声が自然に喉を突く。恋愛といっても、肉体的な交わり……少なくとも肉体の哀しみと歓びは表向き描かれていない。その契機が存在してなかったようにも読める。が、この物語の質はキリスト教のいう肉、サルクスというものの、胸引き裂かれるような絶望感にある、と思う。 小説ではない。森有正という男と栃折久美子という女の現実の物語だ。私もこの物語のある重要人物を知っていたので、この物語のごく一部だが魔法のように織り込まれたような感覚を味わった。しかし森有正という男を知らない今の日人でも、大人ならこの物語の味わいがわかるのではないか。と、自分がさも大人であるかのように書くのだが、そういう大人とは大

    RanTairyu
    RanTairyu 2007/05/05