歴史的物価高は続くものの、実質賃金は24か月連続マイナスと過去最長を記録。インフレが進む先進国に比べ、なぜ日本では賃金が上がらないのか。経営コンサルタントの大前研一氏が日本の賃金が上昇しない背景について解説する。 【写真】ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏 * * * 岸田首相は現実と乖離した発言を連発している。その典型は「まず今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する」「そして来年以降、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」というものだ。 これは姑息なレトリックである。なぜなら「所得」には「賃金」以外に預貯金の利子、株の配当や売却益、不動産の賃料や売却益、政府からの給付金なども含まれるからだ。 当初、岸田首相は自分が会長を務めた宏池会の創設者・池田勇人元首相に倣って「所得倍増」を打ち出したが、いつの間にかそれを「資産所