日本の高齢者終末期の医療のあり方は、世界の常識とはだいぶかけ離れているようだ。日本の医療はともかく延命重視であり、患者がどんな状況であってもともかく一分でも一秒でも長く命を永らえさせることが使命だと思っている医師も多いという。そのため最後の最後まで濃厚な医療を行なおうとし、その間に次々に合併症が起こり、高齢者が苦しみながら最後を迎えるケースが多い。そうした結果を生む延命措置は欧米やオーストラリアでは倫理的に問題があるとされ、行われていない。『欧米には寝たきり老人はいない:自分で決める人生最後の医療』を著した宮本顕二、宮本礼子両医師は、そう指摘し「日本では医療の名のもとに高齢者の虐待が行われている」と断言し、高齢者の人権を尊重するために「延命至上主義」から脱し日本の医療の重心を「緩和医療」へシフトすることの必要性を強調している。 近づく「多死時代」の現実への問題意識の欠如 日本は世界最長寿国