急成長を続ける途上国の代表選手としてのベトナムの環境を語るとき、決して避けられないのは大気汚染である。とにかく凄まじいのだ。あのままでは、汚染レベルは、オリンピック開催に際して工場移転や乗用車の都心部乗り入れ規制までしなくてはならなくなった北京など中国の主要都市並みになってしまうし、ベトナムの人々が成長の果実を得るにしても、健康を酷く害するのではないか、と心配になる。 ベトナムは以前から「バイクの国」である。道を実際に走ってみると、圧倒的に多いのは四輪車ではなくバイクだ。地下鉄も路面電車もないベトナムの都市にあって、交通手段はバイクに頼らざるを得ない。1台に何人もの人が乗っているのを見るのも珍しくない。ベトナムの人々はそのバイクを、「セ・ホンダ」と呼ぶ。他のメーカーのバイクでも「セ・ホンダ」が一般名詞化しているのである。ベトナムにおけるバイクの地位は高く、ホーチミン市の有名なカフェの前では