星新一、鍵、クラウド 星新一のショートショートに傑作「鍵」がある。この話は、ある男の物語だ。その男は、道端で鍵を拾った。はたして、この鍵は、どの鍵穴にあうものか。男は、その答えを知りたくて、鍵を片手に鍵穴を探す旅に出た。 男は、鍵穴を見つけては鍵を差し込んだ。どの穴にも鍵ははまらない。しかし、その鍵穴を探すこと自体が、男の人生そのものになった。そして感動的なラストを迎える。 この短編に出会ったのは私が高校生のときだった。人生は目的があって、それに向かうべきことばかりではない。ときに、その過程自体が愉悦をもたらすものになる。そして、過程そのものが、崇高な人生の目的を超越する、といったあざやかな逆転が描かれていた。 しかしこの物語が、現代的にこのように書き換えられたらどうだろう。 「男は、道端で鍵を拾った。男は、スマートフォンで鍵をスキャニングした。スマートフォンは表示した。『この鍵は、GPS