音楽もダウンロードで入手できるこの時代、レコードはおろか、CDさえも買わないという人が増えてきた。いまやジャケットのアートワークが持つ価値や意義は、すっかり失われてしまったのだろうか。そこで今回は、UKロックの歴史を辿りながら、これまで生み出されてきた名盤の数々を、ジャケット・デザインの観点からもう一度、振り返ってみたい。正方形の中で繰り広げられる無限のアートを、今こそ再発見する時!(黒澤 里吏) 英国における大衆音楽の分野で、レコード・ジャケットが表現方法の一つとして重要視されるようになったのは、やはりビートルズ以降と言えるだろう。それまでは、バンドのメンバーがただ笑っているだけの写真を使ったものがほとんどだったが、ビートルズはまずセカンド・アルバム「With the Beatles」で、笑っていない4人を写した渋いモノクロームの肖像で新しい世界観を示した。以降、新作ごとに画期的な試みを