ニクソン政権およびフォード政権期に米国務長官などを務め、米中国交正常化やベトナム戦争の終結に尽力したヘンリー・キッシンジャー。今も論客として影響力を持つ同氏が、なぜアメリカはアフガンで充分な成果を上げられなかったのかを分析する。 明確な目標のなかったアフガン戦争 イスラム主義組織タリバンが、アフガニスタンの政権を掌握した。懸念されるのは、20年に及ぶ犠牲を払ってきた人々や同盟国に対し、たいした通告や相談もせずにアメリカが決めた撤退を、アメリカはどう受け取ったかということだ。 また、アフガンにおける基本的な課題が、完全に支配権を握るか、完全に撤退するかの二者択一として、世に提示されてきたのはなぜなのだろうか。 根底にある問題は、ベトナムからイラクまで一世代にわたり、我々の対反乱作戦につきまとってきた。アメリカが米軍を命の危険にさらし、自国の威信をかけ、他国を巻き込む場合には、戦略目標と政治目