東日本壊滅はなぜ免れたのか? 取材期間13年、のべ1500人以上の関係者取材で浮かび上がった衝撃的な事故の真相。他の追随を許さない圧倒的な情報量と貴重な写真資料を収録した、単行本『福島第一原発事故の「真実」』は、2022年「科学ジャーナリスト大賞」受賞するなど、各種メディアで高く評価された。今回、その文庫化にあたって、収録内容を一部抜粋して紹介する。 失われたチャンス 1号機爆発まで22時間52分 全電源喪失から1時間あまりが経った午後4時44分。事故対応の鍵となる重要な情報が中央制御室に入ってきた。「ブタの鼻から蒸気が出ている」免震棟と中央制御室を結ぶホットラインを通じてだった。 当直長の指示を受けて免震棟にいた発電班員が、外の駐車場に出て、1号機の原子炉建屋西側の壁に排気口の穴が2つ並んでいる通称ブタの鼻を見に行っていた。発電班員は、向かって左側の穴からモヤモヤと蒸気が出ているのを確認