大学以来の友人である古永真一は、フランス文学の研究者である。その彼が、昨年、初の単独訳書を出版した。『線が顔になるとき ―バンドデシネとグラフィックアート―』(人文書院)という本だ。 (画像をクリックすると、Amazonへ飛びます) ティエリ・グルンステンという、ベルギー生まれの著者による、いわゆる「マンガ学」の本。フランス語圏では、マンガのことを「バンドデシネ」と呼ぶのだ。 僕もマンガとは無縁の身ではない。この本の出版の話を聞いたときから、楽しみにしていた。 バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)やアメリカン・コミックスから、ジャコメッティなどのファインアート、カリカチュア、手塚治虫や北斎まで。マンガ、デッサンを題材とした「顔」の図像学。 (オビより) という本書を、僕は興味深く読んだ。 興味深かったポイントは、二つ。 一つは、この本で著者がカバーしている時間的な奥行きと、