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日英のバイリンガルが気づかないはずないんだが、一応書いておく。 結論を言うと日本語にはアクセントがほとんどないから。 文章を耳で聞いた場合、日本語のような抑揚のない音だとほとんど頭に入ってこない。 対して、英語はアクセントがはっきりしているし、抑揚も音韻もあるから音楽を聴くようにして聞ける。 この違いは両方のオーディオブックを試したことあれば一目瞭然。いや、一耳か。 これはおそらく日本に文学の朗読会がほとんど行われない理由も同じ。 英語の小説を朗読で聞いたとき、抑揚も音韻もあるので詩の一部分を聞いてるかのような心地よさがある。 日本語だとそれがないから、ただ文章を声にしているだけで何も楽しくない(国語の授業を思い出してよ)。 日本でオーディオブックが流行らない理由は日本語の文章が音で聞いても楽しくないからで、それ以上でもそれ以下でもないと思う。 (追記) 「話し言葉」と、「書き言葉を音声で
いや、ちがう、同志、われわれはうまくやらねばならないとしても、春までには連中全部がくたばるように行動する必要がある。なにか着せるにしても、死ぬ前に少しばかり森の伐採をさせるのに間に合えば十分だ。 ――ニコラ・ヴェルト『共食いの島』 生産的でない人を共食いさせた国家 1930年代、スターリン時代ソビエトが主導した「移住計画」の記録である。「移住計画」と聞くとそれほど残虐に聞こえないかもしれないが、20世紀初頭の「移住計画」とは「いらない人間を辺境の地に追いやって、自分たちの世界からなかったことにする」ことだった。ナチスもユダヤ人大量虐殺システムを構築する前は、ユダヤ人をすべてマダガスカル島に移住させる計画をつくっていたことからも、「移住計画」の性質を推し量れる。 ソビエトはナチスよりも先んじて、「移住計画」という名の虐殺を実行した。ナチスは「整然とした虐殺システム」を構築したが、ソビエトのそ
■個人の独自性から時代に迫る 鈴木道彦さん プルースト『失われた時を求めて』の全訳で知られるフランス文学者は、なぜ「在日」問題に取り組んだのか。その理由を含む、講演6編をまとめた。 プルーストと出会ったのは18歳の時。「私とは何か、という幼稚な関心でした」と言うが、のちに研究のテーマになった。 1954年、パリへ留学すると、フランスからの独立を求めるアルジェリア戦争が勃発した。「テロだ」と批判する世論に対し抵抗するサルトルに、関心を抱く。「これは帝国と植民地の問題だ。日本にも旧植民地の問題がある」と気づいた。 帰国した58年に小松川事件が、68年には金嬉老(キムヒロ)事件が起きる。どちらの犯人も「日本語しか話せない在日朝鮮人」で、そういう存在を作り出した日本人の「民族責任」を考えた。 金嬉老事件では、裁判の傍聴や、支援団体の「ニュース」への執筆などを、裁判終了後まで8年半続けた。「当初、も
――司会 最初に伺いますが、ご受賞が決まったお知らせを受けてのご心境をお願いします。 「ご心境という言葉は私の中には存在しておりません。ですからお答えしません」 ――司会 それでは質疑応答に入ります。なにかございますでしょうか。 ――蓮實さんはどちらでお待ちになっていて、連絡を受けたときはどのような感想を持たれたでしょうか。 「それも個人的なことなので申しあげません」 ――今回、候補になったとき、事務局から連絡があったと思いますが、新人賞である三島賞の候補になることをお受けになったのは? 「それもお答えいたしません」 ――町田康さんの講評によると、さまざまな議論があった中で、「言葉で織り上げる世界が充実していて、小説としての出来は群を抜く」という評価があったと。その評価についての思いは何かありますか。 「ありません」 ――司会 他に質問は? 「ないことを期待します」 ――通常こういう場です
エッセイと随筆は同じか? エッセイは随筆と訳されますが、両者にはニュアンスの違いが多少あります。 随筆は、思いつくままに自由な形式で書いた散文のことで、日本では文学の一形式として昔から親しまれてきました。歴史に残る最古の随筆は、十世紀末に書かれた清少納言の「枕草子」だとされています。清少納言は、独特の鋭い観察眼と、女性らしい細やかさで貴族の日常生活を綴っています。またその後も随筆文学は、鴨長明「方丈記」、吉田兼好「徒然草」、本居宣長「玉勝間」、松平定信「花月双紙」などの傑作が連綿と続いています。 その中でも徒然草の冒頭、「つれづれなるままに、日ぐらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば…」はあまりに有名で、このままで「随筆」の定義になっています。 エッセイのほうはどうかというと、十六世紀に出版されたモンテーニュの著書「随想録」を起源とするのが定説で、フランス
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ヨコギリ屋 @naoekmr 授業で鷗外の「舞姫」。学生にとっては高校教科書でおなじみだけど、今回は韓国からの交換留学生たちがいるので、説明していてとても面白い。 妊娠したパートナーを棄てて狂気に追い込んだ男の手記が、なぜ長年高校教科書に載り、教室で教えられ続けているのか。留学生のストレートな憤慨が心地よい。 ヨコギリ屋 @naoekmr @naoekmr 私自身は「舞姫」自体には感嘆するのだが、この作品を高校の授業で扱えるかどうかは疑問に感じる。 葛藤し苦悩する人間性の弱さにたいして共感や許容心を示すことが「正解」と教えられた日本人学生は、ストレートに正義感を示すことに躊躇してしまうように見える。その意味は重い。
北原白秋の『大東亜戦争 少国民詩集』(朝日新聞社、昭和17年)を入手。 噂通り、ものすごい内容。本書のあとがきに拠れば、これは北原白秋の遺作になったそうだ。 白秋先生、やっちまったな……。 東亜の児童 少国民だ、少国民だ、僕たちは、 東亜の児童だ、手をつながう。 大きな太陽、いま朝だ。 見ろ見ろ、世紀のあを空だ。 少国民だ、少国民だ、僕たちは、 東亜の児童だ、手をつながう。 緑だ、万里の大陸だ。 太平洋なら黒潮だ。 少国民だ、少国民だ、僕たちは、 東亜の児童だ、手をつながう。 誰でも来い来い、輪になつた。 国々、島々、輪になつた。 少国民だ、少国民だ、僕たちは、 東亜の児童だ、手をつながう。 日本児童が叫ぶんだ。 東亜の子供よ集れだ。 少国民だ、少国民だ、僕たちは、 東亜の児童だ、手をつながう。 世界はよくなる、ほんとにだ、 見ろ見ろ、よくなる、ほんとにだ。
2013-05-03 大人のための夏目漱石『こころ』解説:問題編 カルチャー 先月、NHKの番組『100分de名著』で、姜尚中が夏目漱石の『こころ』について解説していました(最終回には島田雅彦も特別ゲストとして出演)。残念だったのは、姜と島田は(おそらく)話の本質を分かっているのに、そのことを掘り下げることなく番組が終わってしまったことです。 『こころ』は高校の教科書にも載るほど広く読まれてはいますが、一方で、「近代知識人のエゴイズム」 などといった頓珍漢極まりない解釈が罷り通っており、正しく理解されているとは言い難いのが実情です。(かなり以前から本質を指摘している人はいますが、なぜか主流にはなっていません。) そもそも、話の本質が高校生には難しすぎる(早すぎる)ことが、この話を「なんだかよく分からない小説」にしてしまっているようです。しかし、大人になって読めば、高校生向けの「正解」が実は
6月19日は太宰治の誕生日であり、入水自殺した太宰の遺体が発見された日でもあることから、「桜桃忌」と呼ばれて太宰を偲ぶ日となっています。こういった作家の忌日としては、おそらくもっとも広く知られているものだろうと思われ、没後60年以上を経た現在でも、この日付前後には様々な太宰関連のイベントが行われているようです。というわけで、当ブログでも便乗して? 太宰治関係の話題をひとつ。 『斜陽』といえば太宰治の代表作として名高く、敗戦後の日本社会を表す代名詞の一つのように位置づけられ、いまさらその内容について喋々する必要はないでしょう。そして、その『斜陽』が、ある女性の手記を基にして書かれているということも、それなりに有名なのではないかと思います。 その女性の名は、太田静子といいます。詳細はリンク先の Wikipedia でも見ていただければよいのですが、もともと文学に関心のあった彼女は、太宰に手紙を
⇒メッケルが関ヶ原の布陣図を見て「西軍の勝ち」といったのはほぼ司馬遼太郎の創作って話と当時の混乱した状況 - Togetter うへー、ドイツの参謀メッケルが、関ヶ原の布陣図を見て「西軍の勝ち」といった話って、ほぼ司馬遼太郎の創作と判断していいのか!恐ろしいな司馬さんは(;´Д`) 1059kanri 2013-02-28 19:05:34 「メッケル 関ヶ原」で検索するとすぐに見つかるのが次の記事。 ⇒石田三成と関ヶ原の戦い 海音寺潮五郎応援サイト 〜 塵壺(ちりつぼ) 〜/ウェブリブログ 以前、角川文庫から出版されていた『日本史探訪』の中で、司馬遼太郎さんはメッケルの逸話を次のように述べています。 メッケルという人は、当時世界的な戦術家だったモルトケの愛弟子ですが、その頃の陸軍大学はドイツ風で、参謀旅行というのがありましてね、参謀をつれて現地に行って、地図によって架空の作戦を立てて訓練
yhkondo @yhkondo 「「青空文庫」はアブナイ?」という話題で盛り上がっているようなので、古典語を電子アーカイブにする仕事(研究)をしている日本語研究者の立場から、ちょっと続けて書いてみます。 2013-01-06 13:11:26 yhkondo @yhkondo まず、ひとつ。「夏目漱石の原稿にあって、(活字)印刷された東京朝日新聞、単行本にはなくなってしまっているものは何か。この問いに稿者なりに答えてみようとしたのが本書である。」という本があります。今野真二『消された漱石』(笠間書院)です。 2013-01-06 13:14:22 yhkondo @yhkondo 今野真二氏には、同様の趣旨をわかりやすく書いた岩波新書の新刊『百年前の日本語』もあるのでお読み下さい。そのまま「写す」ということが至難であり、出版社や研究者にも「難しい」ということがよくわかります。 2013-
豊崎 『文学賞メッタ斬り!』をお読みの方ならご存知かと思うんですけど、わたしは大森望のフリスビー犬とか言われていまして。「さあ、トヨザキ、取ってこい!」と危険なネタを投げられるたびに、勇んで自分から取りにいって、最終的にたいへん損をする役回りになってます。そして、要らぬ敵ができていく(笑)。 大森 それだとまるで僕に責任があるみたいだけど、要らぬ敵を作るのはもともと豊崎さんの得意技でしょ。『そんなに読んで、どうするの?』の巻末特別袋綴じがちゃんと証明してるじゃないですか。ええっと、これ、いつの話でしたっけ?……2001年でしょ。『文学賞メッタ斬り!』のはるか前じゃないですか。豊崎由美はとっくの昔に凶状持ちだった。 豊崎 あ〜、そういうこともありましたねえ。 大森 せっかくのそのキャラを生かす方向で演出しているわけです。 豊崎 これはですね、わたしは「直しますよ」って言ったんですよ、
鼎談・読書について 筒井康隆さん×丸谷才一さん×大江健三郎さん2011年2月2日(左から)筒井康隆、丸谷才一、大江健三郎の各氏=写真はいずれも麻生健撮影筒井康隆さん大江健三郎さん丸谷才一さん著者:筒井 康隆 出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,365 筒井康隆さんが読書面で連載した『漂流――本から本へ』が朝日新聞出版から本になりました。筒井さんと、同学年の大江健三郎さん、このほど本をめぐる随筆集『星のあひびき』が出た丸谷才一さん。3人の作家による「読書について」の鼎談(ていだん)では、豊かで多彩な読書体験が語られました。(構成・大上朝美) ■面白い本を飛び石伝いに 筒井 大江 僕は『漂流』推薦の言葉に「面白ヒトスジの大読書家」と書きました。筒井さんは子どもの時から面白い本をつかまえる名人で、つかまえたら正面から熱中する。自分に根を下ろすよう大切にする。その後、一つ一つが書かれるものの柱に
参考リンク:訃報:丸谷才一さん87歳=作家・文化勲章受章(毎日jp) 豊かな教養を背景に「笹(ささ)まくら」や「たった一人の反乱」など、知的で明るい物語性に満ちた小説を書き続け、評論や翻訳でも知られた作家の丸谷才一(まるや・さいいち、本名・根村才一=ねむら・さいいち)さんが13日午前7時25分、心不全のため東京都内の病院で死去した。87歳。葬儀は近親者のみで営み、お別れの会を後日開く。 丸谷さんは小説家としては寡作だったこともあり、そんなに多くの作品を読んだ記憶はないのですが、洒脱なエッセイは僕もよく読んでいました。 そうそう、ネットで「旧仮名遣い」の人をみかけるたびに、「ああ、丸谷さんみたいだ」などと思っていたものです。 丸谷さんは、村上春樹さんのデビュー時、「こんなのは小説じゃない!」と認めようとしなかった選考委員が多かったなかで、敢然と「村上春樹推し」をされていたそうです。 村上さん
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