犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。 p.131~ 物理学をやるようになってからも、私は仕事が順調にゆかない時など、しばしば絶望的な厭世観におそわれたことがある。ヨーロッパの理論物理学者で、自殺した人が何人もいることを知った。その気持はよく分るような気がした。しかし、私は自分が自殺したいとまで、思ったことはない。 私の中には、人類に対する、社会に対する、あるいはその社会の構成分子であるところの家族や、知人や、若い研究者たちに対する、責任感がある。この責任感は、人間の空しさとか、社会が必然的に持っている矛盾に対する嫌悪とは、一応別個に存在するらしい。それは「ギブ・アンド・テイク」ではなしに、たとえ受け取るものはなくとも、与えなければならないという義務感のようなものである。 科学に対する信頼によっても、しかし私