僕は、失敗しつづけている。何を?具体的に言えば、具体的に説明する気も失せるほど些細な生活上の小事において、僕は失敗しつづけている。しかし、僕はそんなことでいちいち思い悩んだりはしない。僕は芸術家だからだ。芸術家は生活などというくだらないものと関わるために生まれた人種ではないのだ。しかし、僕の失敗が致命的なのは、僕は芸術においても実生活と同様に失敗し続けているということだ。というよりも、僕は芸術家なのに、何ら芸術活動を行っていないのだ。芸術がしたい。芸術が。おれはそれが芸術なら何だっていいという気持ちだった。けれど……。 例えば絵画。僕は色塗りの下手な子供だった。僕がクレヨンで人の顔を書こうとすると、鼻や頬の輪郭線を書くために使った黒のクレヨンと、肌の色を塗るために使った肌色の絵の具がぐちゃぐちゃに混ざってしまう。僕のお母さんの顔はぐちゃぐちゃのゾンビのようになってしまった。哀しかった。僕は