ウクライナ侵攻にともない、欧米諸国はロシアに対して厳しい経済制裁を課した。だが、その影響はロシア一般市民の生活に及んでいても、肝心の大統領にとってはあまり痛手ではないようだ。プーチンが資産を隠しているのは明らかなのに、どうしてそれを突き止めることに、こんなにも手を焼いているのか。そこには、複雑なからくりが隠されていた。 それは、ある裁判における421ページに及ぶ法廷書類のなかの、たった一行に記されている。ほぼ付け足しのようなその一行から得られるのは、ジュネーブでのある会食の席で、2人のビジネスマンが「プーチン氏に贈られたクルーザー」の話をしていたという情報だ。 これは、ある海運会社関係の財務関連で争われた裁判で、2010年に出されたロンドン裁判所の判決文だ。長年探し求められてきた、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と高級クルーザーや航空機、別荘などの資産との直接的な関連を公的証拠で示した