研究の背景 ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必須であり、その欠乏および過剰は甲状腺機能異常を主としたさまざまな病態を引き起こす。わが国では古来より海藻類、魚類を多く摂取する習慣から、ヨウ素欠乏症は存在しないと考えられ、むしろ過剰と指摘されることもある。しかし、現在のわが国のヨウ素摂取状況について、全国的なデータは、ほとんどない。 近年、食事習慣の変化に伴いヨウ素を多量に含む加工食品、特に調味料、レトルト食品などが大量に消費されており、ヨウ素が多く摂取されている可能性があるが、実態は明らかではない。妊産婦のヨウ素代謝については、ヨウ素欠乏が新生児の発育、発達に悪影響を及ぼすことが知られているが、妊娠中の母体のヨウ素過剰摂取が妊産婦と胎児・新生児の甲状腺機能にどのような影響があるのかは不明である。 日本人のヨウ素の食事摂取基準は年齢によって推定平均必要量、目安量、推奨値、上限値の基準値が定め