毎日新しい人と会って話を聞く。話をする。そうやって仕事が出来上がっていくのは、一枚一枚丁寧に絞っていても、なんだか柔らかく力が抜けていくよう。待ち合わせの相手とタクシーで駅まで十数分、同じフロアに居ても気付けばその日初めての会話だったりで、「あなたは聞いていない。見ているだけ」。実際するしないは別にしても、相談できる人がいたらいいな、と時々は思う。どうかな、どう思うとなんの気もなしに言える相手が。いや正しくは、いい加減誰かに相談できるような人間になれたら。高架下をくぐり駅の構内を抜け、自転車を引いてランドマークまで歩く。あそこのトンネルの蛍光灯はいつも切れ掛かっている。細かい雨。工事現場の照明。いつの間にか楕円のマンションが唐突な位置と間隔で幾つも建っている。 卒業を待たずに家を出た気持ちも、最後まであの人の名前を吐かなかった気持ちも、こんなこともうやめたいと言いながら結局仕事を辞められな