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ブックマーク / macroscope.hatenablog.com (12)

  • 地球温暖化の直観的とらえにくさ - macroscope

    地球温暖化という問題があることは多くの人が知っているが、それが社会のいろいろな問題のうちで重要だと考えている人はあまり多くないようだ。 これは、いろいろな意味で無理もないことだと思う。 まず、用語の問題がある。「地球温暖化」と表現すると、地球全体の温度が一様に上がることを想像しやすいが、想定されている上昇量、たとえば2℃は、人がローカル・短期間に感じる温度差としては大きくない。また寒冷化よりもよいことと感じられるかもしれない。他方「気候変動」「気候変化」はエルニーニョ現象をはじめとする自然変動を含み、そちらが主だと思う人が多いと思う。「全球平均地上気温の上昇を代表的な症状とする複雑な気候の変化」をうまく代表できる用語がないのだ。 ちなみに、英語圏の用語の使われかたの変遷を、Google Ngram Viewerで見てみた。これはGoogle Booksでディジタル化されたを、発行年別に分

    地球温暖化の直観的とらえにくさ - macroscope
  • 十万年、百万年の桁の時間スケールを歌う人々が住む国 - macroscope

    現代日で、「君が代」は論争のたねとなる。論争はとくに、それを歌いたくない人に強制的に歌わせることについてのものだ。歌いたくない理由は、たいてい、この歌が、天皇に主権があるとされた明治憲法のもとでの国歌だったことによる。また、この曲が雅楽をもとに明治初期に新たに作曲されたものであり、近代の歌からも伝統的民謡からも孤立していて身近なものと感じにくいこともあるかもしれない。 しかし、歌詞に注目してみると、日が世界に誇ることのできる歌だと言えそうな気がする。これは地球環境科学者、そのうちでも日第四紀学会員である(もちろんいま学会を代表して発言しているわけではない)わたしの我田引水かもしれないが。 人間の1世代を仮に25年とすれば、「千代」は2万5千年、「八千代」は20万年ということになる。2万5千年前といえば、北アメリカ・ヨーロッパに大陸氷床が広がっていた氷期の最盛期に近い時代だ。氷が多かっ

    十万年、百万年の桁の時間スケールを歌う人々が住む国 - macroscope
  • 海洋鉄散布が実行されてしまった - macroscope

    大気中の二酸化炭素などの増加による温暖化は意図しない気候改変だが、これを打ち消すために意図的な気候改変をするべきだという提案がある。英語では geoengineering と言われることが多いが climate engineeringとも言われる。日語では「気候工学」で知られるようになってきた。これには、地球のエネルギー収支に介入するものと炭素循環に介入するものがある。炭素循環への介入のうちに、海洋のプランクトンにとって栄養となるものをまくことによってプランクトンによる二酸化炭素吸収を活発化させようというものがある。栄養としてまずあげられたのは鉄だ。 2年前までの気候工学の状況は杉山ほか(2011)の解説があり、海洋鉄散布の部分は、その実験(ただし基礎科学的なものであり直接に気候改変を意図したものではない)に参加したことがある西岡純さん(北大低温研)が執筆している。 その解説にも書かれて

    海洋鉄散布が実行されてしまった - macroscope
  • 正しい御用学者をめざして - macroscope

    「御用学者」ということばがはやっている。 狭い意味では、権力者の利害にそった主張に科学的根拠があるかのようによそおうために、うそをつく学者のことをいうらしい。そういう御用学者は、もちろんいないほうがよい。 しかし、広い意味でいうならば、いまどきの政治は、学者の働きを必要とするのだ。学者が政治にかかわりたくないからといって、専門的な内容の政治課題を専門知識のない政治家と公務員だけで考えさせたのでは、うまくいかないだろう。 ひとつの道は、学者として修業した人を政治家か官僚に転職させることによって、専門知識をもつ政治家か官僚を確保することだろう。その人は学者ではなくなる。(のちにまた学者にもどるかもしれないが。) もうひとつの道は、学者は学者として仕事を続け、政府から質問されたとき答えるようにすることだろう。これならば学者としての価値観をつらぬくことができるが、政治の立場からみて必要な主題を検討

    正しい御用学者をめざして - macroscope
  • もっと植物性たんぱく食を開発してほしい - macroscope

    ヒトという種が今のような形に進化したのは肉をしたおかげだという説もある。人は動物をべることなしで生きるのはむずかしいかもしれない。しかし、純粋な肉ではなく雑であり、植物をべることもできる(デンプンは消化できるがセルロースは消化できないというような限られた能力だが)。ほぼ菜、つまりほぼ植物由来のべ物だけをべても健康に生きていくことはできるのではないか、と期待したい。 肉のタンパク質のほうが人のからだを作っているものに近いから栄養としてよいという考えもあるが、タンパク質は胃でアミノ酸に分解して吸収されるので、タンパク質としての形は違っていても、アミノ酸組成が適切で、消化されやすければよいはずだ。タンパク質以外の微量栄養素に植物由来の材では満たしにくいものがあるかもしれないが、それを栄養素として含む品をさがせばなんとかなるのではないだろうか。 . . . わたしが、今はまった

    もっと植物性たんぱく食を開発してほしい - macroscope
    ruletheworld
    ruletheworld 2011/09/04
    大豆はできる子
  • シェールガス開発は慎重に - macroscope

    石油に続いて天然ガスも産出量ピークを迎えるのではないかと考えられてきたが、ガスのほうは最近になって産出量がふえる見通しが出てきた。それはおもにシェールガス(shale gas)の開発が可能になったからだ。シェールというのは頁岩(けつがん)という岩石だが、そのうちにメタンを主成分とする天然ガスを含むものがある。とくにアメリカ合衆国の土に資源量が多いという。カナダにも資源があり、そこでの開発に日の会社が参画するという。 人類の化石燃料への依存を減らすべきだと考えているわたしも、人間社会はもうしばらく化石燃料に頼らざるをえないと思う。化石燃料のうちで相対的には温暖化の影響が小さい天然ガスがまだあるのは朗報だ。ただし、温暖化が少なくてすむのは、採掘の際にメタンが大気中にもれなければ、という重要な条件がつく。これはなかなかむずかしいと思う。そのほかにも開発に伴う環境問題の心配がある。 シェールガ

    シェールガス開発は慎重に - macroscope
  • 環境税(炭素税)または排出枠収入でどんな国民の負担を減らすか - macroscope

    環境問題は、経済学の用語でいう「外部不経済」を含む。生産活動に伴って他の人に損害(外部費用)が生じるのを避けるためには、その費用を生産者に負担させる必要がある。費用負担のしくみを作るところは市場経済だけではできず、政治による市場への介入が必要だ。しくみがうまく作られれば、市場によって外部費用が減るように経済が動いていくはずだ。 地球温暖化の問題に即して言えば、いま化石燃料は再生可能エネルギーよりも安いけれども、化石燃料を使うと気候の変化によって将来の世代に損失を与える可能性が大きい。その損失を考慮して、化石燃料を燃やすと排出された二酸化炭素(CO2)量に比例した金額を負担しなければならないようにすれば、人は市場で化石燃料よりも再生可能エネルギーを選ぶようになるだろう。 CO2排出の費用を「内部化」する制度としては、炭素税と排出枠がある。炭素税は典型的には、排出者が排出量に一定の税率をかけた

    環境税(炭素税)または排出枠収入でどんな国民の負担を減らすか - macroscope
    ruletheworld
    ruletheworld 2011/09/04
    それには巻き込まれたくないなぁ。バッズ課税・グッズ減税の考え方が妥当じゃね?税収は(太陽熱温水器設置や住宅エコポイントみたいな)まともな環境負荷軽減へインセンティブとして還付(減税)する財源に宛てる
  • 広瀬隆氏と武田邦彦氏をもてはやさないでほしい - macroscope

    [わたしはブログ記事を公開後に修正することがある。大きな修正をしたときにはその日付を示すことにしているが、細かい修正では必ずしも明示していない。あらかじめおことわりしておく。] わたしのよく行く屋には、目立つところに原発事故関係ののコーナーがある。全部で30種類くらいのが置かれているが、そのうち広瀬隆氏と武田邦彦氏の著書がそれぞれ5種類くらいずつある。これは困ったものだと思う。どちらも、独創的な著者であり、ときにはいいことを言う。しかし、ときにはひどいことを言う。彼らが自信をこめた論調で断言していてもまちがっていることがある。(わたしは彼らの著作をあまり多く読んでいないし、放射能の健康影響などの専門知識は持っていないので、はっきりと批判できる論点は地球温暖化をはじめとする地球科学に関するものだが。) まゆつばを承知で娯楽として読むのならば悪くない。しかし、書いてあることはみな正しいと

    広瀬隆氏と武田邦彦氏をもてはやさないでほしい - macroscope
  • CRU電子メール暴露事件(いわゆるClimategate) 1周年 - macroscope

    昨年11月に、イギリスのイーストアングリア大学のClimatic Research Unit (CRU)の研究者の電子メールが暴露されてから1年がたった。事件の日付をひとつにしぼることはむずかしいが、11月17日にRealClimateというブログに不正な形でアップロードされたのがたぶん最初の出現なので、それを「記念」して1年後の11月17日にブログ記事を書こうといっている人たちがいる。わたしもそれに乗ることにする。 この事件(7月16日の記事やFred Pearce氏の読書メモ参照)は「Climategate」と呼ばれることが多い。明らかにウォーターゲート事件との類推だ。 確かになかまうちの電子メールを暴露するのは盗聴とよく似ている。税金でまかなわれている業務メールだから公開されて当然だという理屈を言う人がいる。それは役所や議会での(議事だけでなく)会話はすべて放送されるべきだという

    CRU電子メール暴露事件(いわゆるClimategate) 1周年 - macroscope
  • いわゆるClimategate [クライメートゲート]、わたしなりの問題整理 - macroscope

    1月29日、2月22日の続き。菊池誠さんのkikulogの「地球温暖化懐疑論批判(2)」のコメントとして書いたことや、「気候変動・千夜一話」のブログのいくつかの記事、Mosher and Fuller (2010)の読書ノートで書いたことと重なるところもあるが、少し整理しなおしておく。このページはしばらく改訂を続ける。(複数ページに分けるかもしれない。) イギリスのEast Anglia大学のClimatic Research Unit (CRU)の電子メール暴露をだれが実行したかはイギリスの警察が捜査中だがまだわからない。動機もわからない。 暴露されたメールの内容から、科学者の行動に不正(科学者倫理あるいは社会一般の倫理に反すること)があったという疑いがかけられたが、CRUの科学者に関しては、イギリス国会の科学技術委員会の調査報告、およびEast Anglia大学の要請による2つの調

    いわゆるClimategate [クライメートゲート]、わたしなりの問題整理 - macroscope
  • IPCC第4次報告書のまちがい(およびまちがいと伝えられたこと)についての整理 - macroscope

    IPCC第4次評価報告書 (AR4, リンク先はWikipedia語版)について、2009年末以来、いくつかのまちがいが報道された。そのうちには、確かにまちがいだったもの(下の箇条書きの1, 2。5もそうらしいが未確認) もあるし、不適切な点はあったがまちがいとまでは言えないものがある。わたしはあちこちに覚え書きを書いてきたが、まとめる努力をしてみる。このページは今後もう少し整理する予定。 なお、このまちがいの指摘をきっかけとして、IPCCの仕事のしかたを見なおすことになり、InterAcademy Councilによるレビューが行なわれている。(http://reviewipcc.interacademycouncil.net というウェブサイトがある。このブログでは3月11日、5月5日の記事で紹介したが、その後の議論は必ずしも追いかけていない。) まちがいとして指摘された主要な点は

    IPCC第4次報告書のまちがい(およびまちがいと伝えられたこと)についての整理 - macroscope
  • IPCCに関する日本学術会議主催のシンポジウム(出席後の覚え書き) - macroscope

    4月15日の記事で紹介した、IPCCに関する日学術会議主催のシンポジウムに、聴衆のひとりとして参加した。 このシンポジウムの結果、参加者が何かの結論に合意した、ということは言えない。合意を得ることをねらった進行ではなかった。 「IPCC第4次報告書(AR4)の第2部会のアジアの章のヒマラヤの氷河の将来見通しに関する部分がまちがっていたことが確認された」とは言えるかもしれないが、それは1月20日にIPCC自体が声明を出した時点で確認ずみだったと言ってよい(このブログの1月25日と2月10日の記事参照)。なお、もしこのことを「IPCC報告書はまちがっていることが確認された」と表現したら、論理的には正しいかもしれないが実際的に不当だと思う。ふつう、千ページのうち1ページ分がまちがっているのことをそんなふうには言わない。「まちがっている箇所があったことが確認された」というのならばよいが。 IP

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