<< 前の記事 | トップページ | 次の記事 >> 2008年06月02日 (月)視点・論点 「意外な文化遺産」 ベルリン自由大学教授 イルメラ・日地谷・キルシュネライト 私は今、あるドイツの出版社に頼まれ、一冊の本を準備しています。世界の色々な都市の文学散歩というその出版社のシリーズに、東京を加えたいと頼まれたからです。それ以来、いろいろと考えてきましたが、激しく変貌をとげてきた東京という都市で、昔の雰囲気を今だに保っている、近代文学に登場した場所を紹介するのは容易ではありません。 三島由紀夫の“宴のあと”の舞台となった、美しい庭園のある料亭を紹介するとしても、ごちゃごちゃした街や交通の騒音の中を長い間歩くことなしに、どうやって他の文学的史跡へと導くことができるのでしょう? もちろん、関東大震災や戦争により、東京の古い町並みの多くが破壊されたことは知っていますが、オリジナルの史跡を