企業は、本業を通じて社会の課題解決に取り組まなければならない――。そんな意識が高まりはじめて、すでに数年が経つ。本業を通じた社会貢献は、社会問題の解決につながるだけではなく、その企業自身の持続性を高めていく。では、その具体的な企業戦略とは、どのようなものか。社会貢献を基軸とした企業活動は、どのようにデザインされ、それは企業の収益性の問題とどのように整合するのか。『目に見えない資本主義』の著者であり、「ボランタリー経済」の可能性を説いている多摩大学大学院教授、田坂広志氏に話を聞いた。(取材/二階堂尚、撮影/白井綾) 「目に見えない資本」という 新たな、しかし、懐かしい価値 ――「貨幣」という尺度で評価することのできない資本、すなわち「目に見えない資本」の重要性について本格的に言及されたのは、2009年のことでしたね。 きっかけは、2009年1月の世界経済フォーラムの年次総会、いわゆるダボス会