3月の終わりに英国ケンブリッジ大学に赴任して、早くも2カ月が過ぎた。来年の3月までの1年間、ここケンブリッジ大学に31あるカレッジの1つクレアホールに、在外研究員として滞在する予定である。 かつて長らく南フランスに住んだときにも感じたように、暮らして初めてその国の歴史のさまざまな必然が見えてくる。銅鑼の音を聞きながらおごそかに入るフォーマル・ディナーに出席するときにも、切符をインターネット予約しようとしてミスターやサーなど10以上ある称号の中から1つを選ぶときにも、まったく無駄に見えるその小さな事柄の一つ一つに潜む、折り紙の折り目のような意味付けに、気付かされるのだ。 私の場合、こうしてうっすらと見えてきたものは「なぜ英国だけが産業革命を成し遂げて、19世紀までに世界の覇権を握るにいたったか」という謎へのかすかなヒントだった。産業革命とは、中学校や高校でくりかえし習ったために却って、そのメ
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