栄光への過程に試練はつきものである。ましてや、一試合に幾度となく訪れた試練を乗り越えた末につかみ取った場合、その喜びと感動の波紋は当事者たちだけに限定されない。だからこそ、チェルシーが念願のヨーロッパ頂点を極めたほぼ次の瞬間、アーセナルのジャック・ウィルシャーは思わず、ツイッターにその思いの丈をつづったのだ。 「ひとえに素晴らしい。この勝利に感激しない人などどこにもいないだろう。それはアーセナルや(この結果、チャンピオンズリーグ参戦の道を閉ざされた)スパーズの関係者やファンもきっと例外ではないはずだ」 この文面を単純に読み解く限り、ウィルシャーは無意識に「ロンドンの」という“絞込み条件”を意識しているようにも思えるが、おそらく事実はその枠をはるかに越えていたに違いない。 それほどの試練――もしあなたが熱烈なチェルシーファン(もしくは、一時的にせよチェルシー“シンパ”)なら、間違いなく