ポスト・クラシカルというジャンルが持つ可能性のひとつとして、電子音響~エレクトロニカ以降の耳/ボキャブラリーでクラシックや現代音楽を捉え直すということが挙げられる。ポスト・クラシカルを代表するレーベル〈Erased Tapes〉に所属する音楽家たちが、クラシック音楽のボキャブラリーを用いてアコースティックなサウンドを構築する一方、そこにデジタルな要素を加味しようとするのは、こういった文脈があってのことだ。空気の微細な震えをキャッチし、それを加工することで作曲に取り入れ、音楽の新しい地平に挑もうという試みがここにはある。 今回、リマスタリングを経てリリースされる『BTTB -20th Anniversary Edition-』で、ピアノ・サウンドにフォーカスを当てた『BTTB』を改めて聴くと、ポスト・クラシカルがシーンとして確立されるはるか以前に、坂本龍一はポスト・クラシカル的な音楽表現の在