約163.5km、車を走らせる。海から15メートル。小学生やサークル集団や外国人や犬が、水着あるいは裸で海に飲みこまれていくのを見ていた。まだ砂は熱かった。 海の家が解体されていた。夏が終わったあとには建物ごとなくなってしまうなんて知らなかった。 シーズンオフも解体されることもないぼくらはいったいどこへ向かったらいいのか。そもそもどこへ向かおうとしていたのか 繰り返される退屈な日々のなかで、ただただ擦り減っていきながら しだいに「何がしたい」「何になりたい」なんてことを考えることすら億劫になっていき そしてなにも見えなくなる 秋のはじまりに 海を見にいった。 台風が近づいた空は灰色で、 海はひどく荒れていた。 ん?…! 夢か幻か。さっき誰かに告白されたような気がしたけど、まさか高速道路上で、そんなことありえるわけがない…