ゴロー無双
◇ これの続き: 大正生まれの私の祖父は、記憶に登場する最初のころから腰は曲がっていたが、70歳を越えても毎日車を運転するいかしたジジイであった。そして私と姉を、幼稚園から小学校低学年ぐらいまで、面白がって騙し続けたジジイでもあった。 いわく、「町に行くたび食べるおいしい食べ物があって、それは“アンポンタン”というんだ」「あんぽんたん!!」 ○ それはどんな食べ物なのか。話を聞くたび、答えは違った。 「ほかほかしている」「やわらかい」「ひとつでおなかいっぱいになる」。 いっこうに像を結ばない“アンポンタン”は、私と姉の頭の中でおおいに膨らんだ。 ○ ○ 祖父はアンポンタンの味も様々に形容したが、今から思えば、そこにはひとかけらの具体性もなかった。 「おいしすぎてほっぺたが落ちる。というか、落ちた。医者でほっぺをつけ直してもらって帰ってきた」。 さすがにそれは嘘だとわかった。でも、それ
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