たった二晩で骨抜きに 夫のオットー氏(仮名)と結婚を決めて数ヶ月経った頃だろうか。ずっと原因不明の体調不良に苛まれていた。朝、起きるのがつらい。世の中すべてがだるい。あらゆる選択や決断が鈍る。ふとした瞬間に泣きたくなる。実際わけもなく涙がこぼれる。夜、一人うとうと眠りに落ちるときだけは心からリラックスできた。しかし、そんな時間は滅多に作れない。 二人で住む新居を探すため、二つの自宅を行き来しながら、あちこちの賃貸物件を内見していた時期だった。平日の日中まで予定をあけて都内を回り、そこからお互いまた仕事へ出かけたり、一緒に帰って夕食を摂ったり。休みの朝は「今日は何する?」という電話で目覚める。会えば終日、二人で過ごす。その前に片付けておくべきことは山ほどあった。 皿を洗っていて遅れる。洗濯物を取り込んでいて遅れる。着ていく服を選んでいて遅れる。ハッと気づいたら時間が過ぎていて遅れる。いつも私
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