中国当局は、不動産市場の低迷が来年の成長を妨げる恐れを踏まえ景気拡大支援へと政策のかじを切った。 中国共産党中央政治局は6日、習近平総書記(国家主席)が主宰した会議で、不動産業界への規制緩和を示唆した。来年後半の第20回党大会を前に、2022年の経済安定化の方針を示した。同国不動産開発業者の流動性危機は債券市場を揺るがせている。 中国人民銀行(中央銀行)も6日、大半の銀行の預金準備率(RRR)を来週から0.5ポイント引き下げると発表。これにより1兆2000億元(約21兆円)の流動性が供給されることになる。李克強首相は6日遅く、RRR引き下げのほかさまざまな金融政策の余地があると述べた。 汪涛氏らUBSグループのエコノミストはリポートで「政治局の論調の変化は上級指導者が経済への下押し圧力を認識していることを明確に示している」とし、中銀は「『穏健な』金融政策スタンスをあらためて示したが、RRR
世界が見守る中国恒大集団の債務危機問題。誰もが深刻な状況を認識し、また、当局も対応に追われている。だがその裏で、この出来事に「ある政治的要因」が絡んでいるとの噂もある。民営企業を国有化不可避な状況に追い込むため、習近平国家主席が金融機関に恒大への資金供給を断つよう指示、背後にいる一定の政治勢力を排除しようと動いているという。どういうことか。 【関連記事】急増する中国債券デフォルト…「重災区」と化した不動産業界 不動産業界全体が「重災区」に 恒大問題は1つの象徴で、業界全体が業況や資金調達面で厳しい状況に直面している。2021年1〜9月、開発業者が発行した債券のデフォルトは468億元、20年通年の2.6倍にのぼる一方、新規発行は7689億元(前年同期比21%減)、20年通年発行規模の63%に止まっている。 不動産融資伸びも傾向的に鈍化(図表1)。1〜9月の大手100開発業者に対する新規融資は
2021年9月以来、大手開発業者を抱える中国恒大集団(本拠地深圳)が債務危機で揺れている。不動産業界全体の債務膨張が深刻な問題であることは以前から指摘されており、恒大自体も1年前、同社が広東省政府に救済を求めたとされる文書がネット上に流出し、破綻の噂が流れた。中国当局の対応、不動産業界全体やマクロ経済への意味合い、そして政治的要因が事態を複雑にしているという中国特有の問題を探る。 【関連記事】急増する中国債券デフォルト…「重災区」と化した不動産業界 緊迫した状況下、現地報道は「抑え気味」 恒大上期財務報告では負債総額2兆元弱だが(1元=18円弱)、その他簿外・偶発債務が1兆元(ゴールドマンサックス推計)。10月末時点、遅延していた債務返済の履行や住宅工事再開(珠江デルタ40カ所)といった動きもあるが、今後も満期を迎える債務が相次ぐ予定で状況は予断を許さない。中国内でも投資家や住宅購入者の関
ジャーナリスト。アジア・ビズ・フォーラム主宰。上海財経大学公共経済管理学院・公共経営修士(MPA)。およそ15年滞在した上海で情報誌創刊、“市井の息遣い”から時代の変遷をウォッチ。「中国取材はデッサンと同じ。あらゆる角度から取材して光と影で実像をつかむ」を持論に30年近く中国に向き合う。近年は中国からの人や資本の流入をフォロー。ダイヤモンド・オンライン「ChinaReport」は10年を超える長寿コラム。 著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、『インバウンドの罠』(時事出版)『バングラデシュ成長企業』(共著、カナリアコミュニケーションズ)、『ポストコロナと中国の世界観』(集広舎)ほか。内外情勢調査会、関西経営管理協会登録講師。宅地建物取引士。3匹の猫の里親。 China Report 中国は今 90年代より20年超、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。 今週のキーワード 真壁昭夫 経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。 バックナンバー一覧 習近平主席は、来年の党大会で3期続投を確実にすることを目指している。そこで貧富の差をなくすために「共同富裕」の政策を打ち出した。当面、(1)不動産市況の悪化、(2)不安定な電力供給、(3)コロナ感染再拡大、(4)経済よりも政治を優先する政策という4つの重し
中国についてはいろいろ懸念されることがあるだろうが、ひとまずこれ以外はすべて忘れてほしい。大問題は、中国がもっとも生産的な労働者を使い果たそうとしている、ということだ。 このままいけば中国の成長はやがて失速し、その伸びは横ばいに近いくらいまで鈍化することになるだろう。 フロスト・インベストメント・アドバイザーズは「中国経済の亀裂」と題した最近のリポートのなかで、「大半のアナリストは、中国は持ちなおすとみている。それは正しいかもしれないが、われわれは(中国経済の)土台にいくつかの亀裂が走っていると考える」と書いている。 もちろん、中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)の問題であらわになったように、中国の不動産債務が手に負えないほどのものになっていることは、すでに投資家の知るところである。また、中国が規制強化によってビジネスに対する締めつけを相当厳しくしていることも、多くの投資家は知っている
恒大集団「経営危機」のありえない展開 中国の不動産開発大手、恒大集団の経営危機が続いている。33兆円もの巨額債務を抱え、ドル建て債務の返済が苦しくなるなか、中国当局は同社の創業者に対して「個人資産による債務返済を指示した」という。中国という国の本質が、よく示されている。 ブルームバーグは10月26日、恒大集団の創業者である許家印(Hui Ka Yan)氏に対して、個人資産を債務返済に充てるよう指示した、と報じた(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-10-26/R1KX93T0AFB701)。 記事によれば、許氏の資産は78億ドル(約8892億円)という。中国の富豪ランキングでは、かつてトップに君臨していたが「数字にはかなりの不確実性があり、流動性があるかどうかは定かではない」という。実際にどれほど差し出されるかも、分からない。 いか
ついに来るべきものが来た 中国という社会は、動かない時は長く動かないものだが、動く時には一気呵成に激変する。何のことかと言えば、今世紀に入って中国の飛躍的な経済成長の牽引役となってきた不動産の問題である。 先週末の10月23日、第13期全国人民代表大会常務委員会第31回会議が開かれた。 全国人民代表大会(人大)というのは、中国の国会のことで、現在の第13期は2018年3月5日、2980人の代表(国会議員)によって始動した。人大は毎年3月5日から、1週間から2週間くらいしか開かれない。中国は広大なので、それ以外の時期はそれぞれの任地で仕事するようにと指導されている。 その代わり、北京では175人からなる常務委員会が不定期に開かれ、法律を定めていく。いわば「国会の中の国会」だ。議長は、習近平(しゅう・きんぺい)主席の30代の時からの盟友である栗戦書(りつ・せんしょ)氏が務めている。 その人大常
中央の川を挟んで左側が香港、右が深圳。この両側を一体化した都市計画が発表された(2018年筆者友人撮影) この10月に香港政府が興味深い都市開発計画を発表した。「北部都市圏発展計画」(北部計画)は、制限によって開発が進んでいなかった香港の北部と、それに隣接する中国本土の深圳とを一体として都市開発を行うというものだ。この開発計画の概要と狙いを、中国在住の加藤勇樹氏がレポートする。(JBpress) (加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント) 香港北部と深圳を一体とした都市開発 2021年10月6日、香港特別行政区の林鄭月娥行政長官は2021年度の施政報告の中で、合計300平方キロの都市圏建設計画である「北部都會區發展策略」(北部都市圏発展計画、以下北部計画)を明らかにしました(https://www.policyaddress.gov.hk/2021/chi/pdf/pub
(譚 璐美:作家) 9月20日、中国の不動産最大手の恒大集団(エバーグランデ・グループ)が資金繰りに行き詰まり、世界の金融市場が大きく揺れた。1996年設立の恒大集団は、今や負債総額が約3050億ドルにのぼり、今年末にかけての複数の社債利払いが履行できるかどうか不安視されている。10月4日には、中堅開発業者の花様年控股集団(ファンタジー・ホールディングス・グループ)が、満期を迎えた2億600万ドル(約230億円)の外貨建て社債の支払いを履行できなかった。 西側国では、「いよいよ中国経済の崩壊が始まった」と見る向きが多いが、これはやや短絡的すぎる見方かも知れない。中国のことは、政治的観点から全体像を把握しなければ真相がわからない。経済より政治を優先させる国だということを、まず肝に銘じるべきだろう。 不動産開発事業の失敗は地方政府の責任に リーマン・ショック以後、中国政府は借金による巨額の景気
中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営危機がにわかに注目を浴びている。2021年9月20日、同社のデフォルト(債務不履行)懸念を受け株価が急落。ショックは欧州、米国、そして連休明けの日本にも波及し、世界同時株安の様相を呈した。 恒大集団が公表した報告書によると、6月30日現在の負債総額は1兆9665億元(約33.8兆円)と巨額だ。中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当する負債を抱える企業が無策のまま破綻すれば、その影響は計り知れない。 10月12日には、ここ3週間で3度目となる社債の利払い遅延の報道もあった。 そのため一部では、「第2のリーマン・ショック」、「中国経済崩壊」を懸念する声も聞かれる。恒大ショックで中国経済は危機に陥るのだろうか。 流出した恒大集団の負債リスト まずは概要を見ておこう。中国恒大集団は、1996年に広東省広州市で、董事局主席(会長)の許家印氏が創業した不動産
(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問) 中国の不動産大手である恒大集団が崖っぷちに立たされている。9月23日と29日にドル建て社債の利息の支払いを見送ったとされ、中国では30日間の猶予があるとされるが、デフォルトは避けられないと思われる。 中国政府はこの問題にどのように対処するのであろうか。それを考える一助として戸籍制度が作り出した中国の分断について説明したい。 現在の中国の勝ち組とは 中国人は都市戸籍を持つ人と農民戸籍を持つ人に二分されている。原則として農民戸籍を持つ者は都市に住居を持つことはできない。このことは日本でもよく知られているが、実は、地方都市の戸籍を持っていた人が北京や上海などの大都会に移り住んでも、マンションを購入することは現実的には困難だ。もし購入しようと思えば、北京や上海などで働いてかなりの額の税
三井不動産は10月6日、既存躯体を再利用するリファイニング建築を採用した賃貸マンションの解体見学会を実施した。建替えと比較しCO2排出量を減らせるほか、工事費が抑えられ、工期も新築に比べ3分1程度に短くなるとしている。 リファイニング建築は、建物寿命を新築同等とするため、躯体を調査、補修した上で耐震性能を現行法規レベルまで向上させるという建築手法。青木茂建築工房の代表取締役である青木茂氏が提唱し、すでに共同住宅をはじめ公共建築や事務所ビルなど数多くの再生建築を手がけている。 今回、リファイニング建築を採用したのは東京都新宿区にある賃貸マンション。1971年に建設された9階建てで、総戸数は20戸。耐震性能を考え、約10年前から補修や改築などを考えていたという。 建物オーナーは「1971年当時にお願いした建設会社に相談をもちかけたところ、1階の駐車場部分などで耐震性が弱いと診断された。建替えを
深刻な「電力不足」 中国は、10月1日の建国72周年の国慶節(建国記念日)から7連休に入っている。 この連休は、14億中国人にとって、冬の春節(旧正月)と並ぶ「快楽暇期」で、全国の観光名所やレジャー施設は大賑わいを見せる。特に今年は、共産党政権が「紅色旅遊」(共産党の革命拠点などの観光旅行)を奨励していて、CCTV(中国中央広播電視総台)のニュースは連日、「紅色旅遊に出かけて幸福な人民たちの様子」を伝えている。 ところが実際には、「異変」が起こっている。それは、新型コロナウイルスのせいではない。「電力不足」のせいである。 例えば、首都・北京では、連休2日目の10月2日、首都精神文明建設委員会弁公室、北京市都市管理委員会、北京市エネルギー節約環境保護センターが連名で、「全市エネルギー節約・電力節約に関する提議書」を公布した。それは6項目からなる要請で、全文は以下の通りだ。 各機関、企事業所、
中国・恒大集団「経営危機騒動」の真相 世の中的には新型コロナと自民党総裁選がニュースになっている状況ですが、実は投資家にとって一番気になるグローバルなニュースが、中国の巨大企業集団である「恒大集団」に経営破たん危機が訪れているという話題です。 恒大集団は広州の不動産企業から始まった一大コングロマリットです。中国政府が昨年8月に不動産価格の高騰を懸念して不動産融資への総量規制を設けたのがきっかけで、恒大集団をはじめとする中国不動産大手が徐々に資金繰りが回らなくなり、いよいよということになるのではないかと言われているのです。 日本では1990年代後半に破綻したダイエーの事例が似ているかもしれません。2兆円を超える負債をかかえ「大きすぎて潰せない」と金融機関が嘆く中、産業再生法を適用して国主導でソフトランディングのシナリオを模索した事例です。 ところが恒大集団の場合は負債が33兆円と一桁巨大なう
ディストレスト債並みの社債価格がヒントになるなら、不動産開発大手の中国恒大集団は、中国で過去最大級の債務再編に直面する可能性がある。 ノムラ・インターナショナル(香港)のクレジットアナリスト、アイリス・チェン氏は債務再編は「ほぼ不可避だ」と述べ、政府の監督下でのディールに基づき、恒大が住宅引き渡しとサプライヤーへの支払いを確実にし、ドル建て債保有者は投資額の25%を回収するのが基本シナリオだと説明した。クレジットサイツ・シンガポールのシニアリサーチアナリスト、ルーサー・チャイ氏も、恒大がデフォルト(債務不履行)に陥って債務再編に向かう可能性があると予想。そのリスクは織り込まれつつあり、同社のドル建て債の多くが30セント前後で取引されていると指摘した。 恒大ほどの規模の不動産開発会社の支払い延滞は中国では非常にまれであるため、投資家やアナリスト、規制当局が頼りにできる事例研究はわずかだろう。
(福島 香織:ジャーナリスト) 中国では不動産バブルが崩壊するとき、こういう状況がおきるのだなあ、と改めて震撼した。 中国最大の民営デベロッパー「中国恒大集団」の一部理財商品(資産運用商品)の償還が9月8日に期日通りに行われず、さらに9月13日に、広東省当局が、恒大地産が行っている不動産プロジェクトに対して完成予定の不動産を抵当とする融資申請を認めない旨を通達した、との噂が流れた。これらのことが引き金となって、恒大集団総本部がある深圳、支社のある上海や重慶、四川省成都などの十数の都市で、数十人から数百人の理財商品購入者や個人投資家、住宅購入予定者がつめかけたのだ。 ネットに流れる動画や写真をみると、群衆は、元金返金や建設再開を求めて、怒り、泣き叫び、企業関係者に詰め寄ったり、ガードマンともみ合ったり、興奮して失神したりしていた。ビルから飛び降りようとする社員もいた。恒大社員の中には、企業ノ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く