赤字ローカル線に未来はないのか――? 人口減・東京一極集中がとどまらぬ中、全国の地方でローカル線の廃線危機が叫ばれている。経済合理性の名のもとに「廃線やむなし」の決断が下されるケースが、今後相次ぐこともありそうだ。一方で世界では、そもそもローカル線は「儲かるわけない」が“常識”なのだという。儲からないローカル線は、いったいどのように運行されているのか。赤字でも「廃止論」が巻き起こらないのはなぜか。路面電車やバスが充実したオーストリアの首都・ウィーンを拠点に研究を続ける柴山多佳児氏が、公共交通の“世界基準”をシリーズで解説する。(JBpress) (柴山多佳児:ウィーン工科大学交通研究所 上席研究員) 5分歩けば駅がある 筆者は交通計画、そのなかでも特に公共交通計画・政策を専門として、ヨーロッパ中部に位置するオーストリアの首都ウィーンの工科大学に勤務している。 ウィーン工科大学は1815年創
くぼた・まさき/テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。 新刊『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌』が発売中。 情報戦の裏側 できれば起きてほしくない「不祥事」だが、起きてしまった後でも正しい広報戦略さえ取れば、傷を最小限に済ませることができる。企業不祥事はもちろん、政治家の選挙戦略、芸能人の不倫ネタまで、あらゆる事
この記事は、2024年1月18日発行の「モノづくり総合版 メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。 MONOistでは毎年新年に合わせ、その1年に製造業で起こり得る変化などを見通して、各編集部員が展望する「新年展望」連載を展開しています。2024年も各メンバーが四苦八苦しながらさまざまなテーマの記事を掲載しているので、ぜひご覧いただければと思います。 ≫MONOist「新年展望」企画 さて、その中で2024年最初の「展望」記事として何を掲載すべきか迷った末に掲載したのが「品質問題」を取り上げた「2024年は品質不正撲滅に“待ったなし”、『不正ができない』体制をどう作るか」でした。 関連記事 2024年は品質不正撲滅に“待ったなし”、「不正ができない」体制をどう作るか 2023年は品質不正の問題が製造業を大きく揺るがした。ここ数年続いている品質不正につ
背景の一つに、大阪万博不調の報道と、それによって道民の反対が広がった経緯などもあるようです。 力学には作用反作用の法則があります。 それと同じように札幌五輪断念を期に、大阪万博も見直すべきではないか、というのが本稿の趣旨になります。 四面楚歌の「大阪万博」 しばらく前になりますが、何ともはやな全包囲状況を目にしました。 日本経済新聞がヘッドラインを打って、「日本共産党大阪府委員会」が「万博中止を求める声明を発表した」ことを報じたのです。 あえて言えば、日経は中道ないし体制側の見解を報じる場合が少なくない、ソロバンに則して合理的なメディアだと思います。 その日経が「共産党大阪府委員会」の声明として「会場建設費の上振れや建設準備の遅れなどを指摘し『国民が物価高で生活にあえぐなか、事業をやめなければ負担をさらに強いられることになる」と報じている。 そのうえで「運営主体の日本国際博覧会協会(万博協
(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官) フランスが燃えている 6月27日、無免許で暴走車を運転していた少年を取り押さえようとした警官が、最終的にその少年を銃で撃った結果、少年が亡くなってしまいました。 警官の行動に対する抗議と遺族への支援を目的とした運動は、当初は平和的なものだったようですが、次第にエスカレートし、現在の無目的な暴動に発展しています(暴動についての細部は、在日のフランス人の方がYouTubeで解説しているので、こちらをご覧下さい)。 私がこの件に言及するのは、以前の記事「防衛費2%超で補うべき日本の『知られざる弱点』 ホームランド・ディフェンスのために日本にも『カラビニエリ』を」で指摘したように、こうした暴動が日本でも発生し易くなっているからです。 上記の記事は、それに対応するための組織の必要性を述べていましたが、今回は対応するための法律、そうした組織に限らず、既
「反撃力」「GDP比目標2%以上」「先端技術」「ハイブリッド戦」「サイバー戦」など、これからの防衛力整備に必要な事項が網羅されている。 ただ、「専守防衛」を前提にしていることにより、せっかくの提言が画竜天睛を欠いたものになっている。 結論から言おう。サイバー戦は専守防衛では戦えない。 近年、脚光を浴びているグレーゾーン事態や宇宙、サイバー、電磁波といった新領域での戦いは、現代戦そのものである。 一番の特徴は、平時なのか有事なのか、犯罪なのか侵略なのか、警察行動なのか軍事行動なのか極めて不明瞭な中での対応を迫られることである。 平時か有事か不明瞭なグレーゾーン事態は、自衛隊の最も深刻な弱点である。 特にサイバー戦はその傾向が強い。サイバー空間には国境もなければ、平時、有事もなく、時間の概念さえない。 筆者は数年前、米空軍のサイバーの司令塔である第25空軍司令部を訪問した(現在は、第24空軍と
Russia Heading for Defeat in Ukraine—Former Chinese Ambassador <ソ連崩壊後に凋落の一途をたどってきたロシアに敗戦がとどめを刺し、中国は頼りになる盟友を失うと予測> ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに送り込んだ部隊は敗北に向かって突き進んでおり、この敗戦がソ連崩壊後の凋落にとどめを刺し、大国ロシアは過去のものとなる──ウクライナの首都キーウ(キエフ)駐在の元中国大使がそう断言した。 この元大使は、2005〜2007年にウクライナ駐在中国大使を務めた中央アジア専門家の高玉生。中国社会科学院主催の非公開のオンラインセミナーでの高の発言を、香港メディア・鳳凰衛視が伝えた。 高は習近平(シー・チンピン)主席の前任者である胡錦濤(フー・チンタオ)の下で大使を務め、現在は政府の役職には就いていない。彼の編集済みの発言は5月1
中国国営メディアの報道から判断すれば、習近平国家主席は3月18日に行われたバイデン米大統領との電話会談でロシアのウクライナ侵攻より台湾の問題を重視していたようだ。習氏が「台湾独立派」としている勢力を米国が支持することを恐れているとすれば、米国では多くの専門家がロシアの軍事攻撃に触発された中国が台湾侵略を図るのではないかと懸念している。少なくとも米国は、欧州の危機からそうした可能性にどう準備すべきかを学ぶ必要がある。 理論的には、プーチン大統領のウクライナでの苦闘は、中国の指導者を躊躇(ちゅうちょ)させるはずだ。中国が台湾に攻め込もうとすれば陸海の攻略が必要だが、それよりもはるかに戦いやすい地形のウクライナでロシア軍は攻めあぐねている。その上、欧米は驚異的なペースで強力な対ロシア経済制裁を発動。北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナに提供した武器は限定的ながら、極めて有効であることが
札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪について、IOCが年内にも開催内定とする可能性があると、今年1月に共同通信などが報じた。神戸親和女子大学の平尾剛教授は「ひとたび五輪が内定すると“どうせやるなら派”と呼ばれる人たちが開催を後押しする。8年後の五輪を阻止するには今からでも決して早すぎない」という――。 開催反対が8割超だったのに強行された東京五輪 年明け早々、2030年冬季五輪を札幌に招致する動きがあると共同通信が報じた。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と日本側が水面下で協議しており、開催地を一本化する時期が今年の夏ごろから冬にかけてという見込みから、年内にも開催が内定するという。 またも日本でオリンピックが開催されるかもしれない。風雲急を告げるこのニュースに、私はとたんに気鬱きうつになった。 新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を憂慮し、開催に反対する世論が8割を
北朝鮮のミサイルが、低高度・変速軌道で、沖縄を含む日本全土やグアムを射程に入れるとなれば、日米は対応できるのだろうか。 日米の対応については、迎撃ミサイルの技術的可能性のほかにもう一つ、政治的判断がある。 政治的判断は、これらのミサイル射撃に対して、かなり難しい判断となるだろう。 1.日本に届く極超音速ミサイル 北は、米国に届くICBM(火星15号)の発射実験(2017年11月)後には、GPS誘導の短距離弾道ミサイル等の実験を行った。そして、韓国全土を射程に収められるようになった。 低高度で飛翔し、低下した高度を再び上昇させられるこれらのミサイルは、対韓国を狙うミサイルであった。 そして今、北は2021年9月から低高度で飛翔し、高低を変更することに加え方向も変更できる2種類のミサイルの開発実験を行っている。 これを「極超音速ミサイル」と呼称している。射程を延伸させていることから、日本を狙う
10年ほど前の話だが、日本の大手企業の本社ビルが突然停電する事故にあった。その時事務所にいた社長から後ほど聞いた話だが、停電した瞬間に誰も仕事できなくなったそうだ。社長は「昔は、パソコンもインターネットもなく仕事をしていたはずだけど、年配社員もどうやって仕事をしていたのか思い出せないのだろう」と嘆いていた。 日本では停電は災害時を除けばまずないが、途上国では話は別だ。筆者がアフリカ西部の米国系の高層ホテルにチェックインした時に、部屋が停電していたことがあった。エレベーターなどの電源は自家用発電機で確保していたが、能力が足りず部屋の電気まで供給できなかったのだろう。 年明けから頻繁に行われている電力融通 電気なしでは何もできない時代だ。例えば、昔の黒電話は停電時も使えたが、今の電話は電源がないと動かない。電気がなければ、無事に着いたことを知らせることもできない。インターネットが使えなければ仕
「台湾危機はどれほど切迫しているのか」。長らく台湾の安全保障をめぐる問題は、日米の外交・防衛当局者や一部の専門家など、ごく一部の限られた人々の関心事項に過ぎなかった。しかし、今や台湾問題は、メディアで最も頻繁に取り上げられるようになった国際政治上の課題の一つと言っても過言ではない。 米国内でも別れる「切迫した脅威」への見解 台湾の安全保障への関心が急速に高まる直接のきっかけとなったのは、2021年3月9日にフィリップ・デイビッドソンインド太平洋軍司令官(当時)が行った「台湾への脅威は、今後6年以内(筆者注:2027年)に明らかとなる」との議会証言であった。また、これに続く3月23日の議会公聴会では、デイビッドソンの後任となるジョン・アクイリノ現インド太平洋軍司令官が「(中国による台湾侵攻の脅威は)多くの人が考えているよりも切迫している」と証言し、関心の高まりに拍車をかけた。 事実として、台
発足したばかりの岸田文雄新政権だが、総裁選時から中国には強気な「対抗姿勢」を打ち出してきていた。対米従属のなかで、経済成長著しい中国とどう向き合うか。 この外交上の最重要問題に、深く影響を与えているのが「新疆ウイグル自治区での弾圧問題」だ。そもそもなぜ中国はウイグル族を弾圧するのか? 日本政府はこのジェノサイドにどう向き合うべきなのか? 米中対立の激化を早期から提言していた天才エコノミスト、エミン・ユルマズ氏(@yurumazu)が解説する(以下、著書『米中覇権戦争で加速する世界秩序の再編 日本経済復活への新シナリオ』(KADOKAWA)より一部編集のうえ、抜粋)。 新疆ウイグル自治区を弾圧する中国政府 2021年3月31日、バイデン政権で初となる世界各国の人権状況に関する2020年版の年次報告書をブリンケン国務長官が発表している。この報告書は約200カ国・地域を対象にしているが、とりわけ
中国は国家主義的な経済モデルを国外に拡大しようとしており、また、様々な国際機関を自国のために利用しようとしている。こうした動きへの反発が、中国内外で表面化してきた。中国共産党の政策に対抗するために、日本やアメリカなど民主主義国家はどのような手段をとればよいのか。 トランプ政権の国家安全保障担当大統領補佐官を務め、歴史的な対中政策の転換を主導したH・R・マクマスター氏の著作『戦場としての世界 自由世界を守るための闘い』から一部抜粋して紹介する。 ※本記事の内容は本書からの抜粋で著者個人の見解。タイトル、見出し、写真選定は編集部によるもの。写真はイメージ。 民主的な統治の強化が有効 民主的な統治を国内外で強化することは中国共産党による抱き込み、強要、隠蔽の工作から自由で開かれた社会を守る最良の手段となる。この党は、独占的かつ恒久的に権力を掌握していることを、多元的な民主主義の仕組みに比べた強み
米軍撤退が完了する前に、あっという間にタリバンに奪回され崩壊したアフガニスタン政権と社会の混乱を見ながら、「民主主義」や「自由」のもろさを改めて実感した読者も多いかもしれない。統治機構と社会、権力のバランスが取れた国家はどのようにして成り立つのか。民主主義、自由や繁栄を維持する条件のフレームワーク化に取り組み、ノーベル経済学賞の最有力候補とも評される米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授のインタビューをお届けする。 近共著『自由の命運――国家、社会、そして狭い回廊』(ジェイムズ・A・ロビンソン氏との共著、早川書房)では、自由と民主主義の維持に必要な条件などを考察しました。17世紀英国の哲学者トマス・ホッブスの『リヴァイアサン』にちなんで国家を「リヴァイアサン」と表現し、「外圧のトップダウン」で統治しようとする国家権力は、そもそも社会が同質ではない場合は全く機能しないと
2020年1月、ふるさと納税の総合情報サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・目黒)創業者、須永珠代氏が代表から離れた。現在では会長兼ファウンダーという肩書で、興味のある自治体を訪れる自由な生活を送る。 2008年に制度化されたふるさと納税の利用者は昨年初めて400万人を突破し、今では地方自治体にとって、なくてはならない存在になっている。パイオニアとして初めてこの領域に踏み出した須永氏の功績は大きい。 だが、もともとは迷いに迷いを重ねた人生を歩んできた須永氏。なぜ、起業に至り、地方創生に身を焦がすようになったのか。歩む中で見えてきた国と地方の在り方とは。須永氏がその半生を語る。 2020年1月、8年前に創業したトラストバンクの代表から離れました。今は会長兼ファウンダーという肩書ですが、興味のある技術を持つ人に会いに行ったり、地域に住んでいる面白い農家の方に会いに行ったりと
任命拒否は当然 民間シンクタンク「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)の公式サイトには、「今週の直言」が連載されている。政治や歴史の学者、政治ジャーナリストといった有識者が時事コラムを寄稿するという内容だ。 *** 10月5日に配信されたコラムのタイトルは「学術会議こそ学問の自由を守れ」という耳目を集めるものだった。 筆者は北海道大学名誉教授の奈良林直氏。1952年生まれで、専門は原子炉の安全工学。国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構(OECD)の原子力機(NEA)が共同で運営する職業被曝情報システム(ISOE)から、2018年1月に卓越教授賞を受賞し、国際的にも高く評価されている。ます本文の一部を引用させていただく。 《北大は2016年度、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募し、微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らすM教授(流体力学)の研究が採択された(略)学術会議が「
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