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ブックマーク / knakayam.exblog.jp (14)

  • 刑法のイデオロギー性 | 中山研一の刑法学ブログ

    前回のブログでは「刑法のイデオロギー性」という言葉の意味がわからないという声がありましたので、簡単に説明しておきます。 「広辞苑」によりますと、「イデオロギー」(ideologie)とは、一般には、思想傾向や考え方を意味しますが、とくに、史的唯物論(マルクス主義)においては、政治・法律・道徳・哲学などの社会的意識が、一定の歴史的な社会の経済構造によって制約され、社会のそれぞれの階級ないし党派の利害を反映すると見る考え方をいうと説明されています。 これが、社会主義の立場から、法の階級性という形で主張されたのですが、旧ソ連や中国、さらには北朝鮮などの現実の「社会主義国」が労働者や人民の利益を反映した法と政策を実現せず、かえって国家と党の専制独裁の体制を作り上げたのではないかという批判が強く、歴史的な審判が下されようとしています。 それでは、「資主義国」が、市民に「自由と民主主義」を保障し得る

    刑法のイデオロギー性 | 中山研一の刑法学ブログ
  • 死刑判決の破棄差し戻し(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    10月16日(土)の午後、大阪で月例の「刑事訴訟法研究会」が開かれ、大阪の石川弁護士が、「最高裁平成22年4月27日判決について」報告されました。この事件は、大阪の母子殺人事件(平成14年発生)として著名なもので、当時44歳の被告人が、息子(養子)の(当時28歳)およびその長男(当時1歳10月)を、息子宅であるマンションの室内で殺害し、その後、同室内で放火したとして起訴された事案です。 第1審の大阪地裁は、被告人の犯人性を推認させる間接事実が相互に関連し合ってその信用性を補強し合い推認力を高めているとして、有罪とし、無期懲役に処しましたが(平成17年8月3日)、控訴審である大阪高裁は、検察官の控訴に理由があるとして、死刑判決を言い渡しました(平成18年12月15日)。 しかし、上告審である最高裁は、事実誤認の主張にまで踏み込んだ職権による調査を行い、第3小法廷は、結論として、死刑決を破棄

    死刑判決の破棄差し戻し(1) | 中山研一の刑法学ブログ
  • 法科大学院の改善策 | 中山研一の刑法学ブログ

    文部科学省は、新司法試験の合格実績が低迷する法科大学院について、2012年度予算から、交付金や補助金を減らすことを決めたといわれています(朝日新聞9月16日夕刊)。同省は、「兵糧絶ち」の基準を示すことで各校に危機感を促すとともに、乱立する大學院の再編を進めたい考えだというのです。 このような考え方は、すでに2009年の中教審法科大学特別委員会が示した方向であり、この前にも触れました、法務省・文科省「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」の検討結果(2010年7月6日)の趣旨にも沿うもので、9月16日に開かれる「中教審特別委員会」で発表されることになっているといわれていました。 たしかに、法科大學院の志願者数が大幅に減少し、非法学部出身者・社会人の割合が減少していること、入学選抜の競争性が確保されていないこと、新司法試験の合格率の低迷が続いていることなど、現在の法科大学院のかかえる問題が

    法科大学院の改善策 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2010/09/20
    "そもそもこのような展望のない状態を作り出したのは…「当局の責任」ではないのかという肝心の点があいまい""この矛盾を、弱小法科大學院の切捨てで処理しようとするのは、法科大学院の設立の理念に反"する
  • 千葉法相の死刑執行命令 | 中山研一の刑法学ブログ

    7月28日、千葉景子法務大臣が、2名の死刑執行を命じ、同時に執行したと発表したことが報じられました。千葉法相に対しては、先の公訴時効の廃止・延長問題への対応(全く慎重さを欠いた安易な決定)から見ても、もう何らの積極的な改革の実行も期待していませんでしたが、今回の措置は、自ら死刑廃止議員連盟に所属し、(死刑の廃止を志向するという)自己の信条とも矛盾する行為に及んだという点からも、なぜこの時期にあえて死刑執行命令という「重い決断」に踏み切らざるを得なかったのかという疑問を払拭できないものがあります。 落選議員であるという弱点を自覚するのなら、法相を辞職するのが筋であり、死刑の執行への立会いや刑場の公開によって死刑の問題性を喚起することは、死刑の執行命令を下すこととは別の次元のことで、これをセットして評価することにも疑問があります。 また、法務省内に死刑問題の勉強会を作るという案にも、安易に賛成

    千葉法相の死刑執行命令 | 中山研一の刑法学ブログ
  • 「侵略の罪」と大国の横暴 | 中山研一の刑法学ブログ

    2010年6月21日の朝日新聞夕刊の記事よりますと、ウガンダで開かれていた国際刑事裁判所(ICC)主催の会議で、「侵略の罪」についての話し合いがまとまり、国境を越えて他国を脅かす侵略を国際法上の犯罪とし、計画、実行した指導者ら個人の責任をICCの法廷で追及する道が開け、7年後にも法としての適用が始まるとのことです。 これは、第2次大戦後、国連を主舞台に議論が続いてきた難問に結論を出した歴史的合意といってよく、国連安全保障理事会が侵略かどうか判断するほか、ICCの検察官が独自捜査に乗り出せる例も認められたと評価されています。 それは「戦争犯罪」を裁くもので、大変喜ばしいものですが、しかし、よく読みますと、この「侵略の罪」の適用は原則上、締約国に限られ、ICCに加盟していない国については、安保理が決議した場合を除けば適用されないとのことです。 そこで、問題はこの国際刑事裁判所(ICC)の締約国

    「侵略の罪」と大国の横暴 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2010/06/22
    "国際刑事裁判所(ICC)…で…侵略を国際法上の犯罪とし…指導者ら個人の責任をICCの法廷で追及する"ことがまとまったが、ICCには"アメリカ、中国、ロシア、イスラエル、北朝鮮などがまだ加盟していない"
  • ジュゴン訴訟 | 中山研一の刑法学ブログ

    この訴訟は、沖縄の辺野古の周辺海域に生息している稀少価値のある魚「ジュゴン」がアメリカ海兵隊の基地の建設によって被害を受けるとし、そのことが米国の国家歴史保全法に違反しているとして、2003年9月に日米環境保護団体によって提訴され、2008年1月にサンフランシスコ連邦地裁が、被告の米国防長官に対して、「ジュゴンへの影響を評価するための追加情報を示せ」とする判決を言い渡したというものです。 この訴訟はまだ係属中ですが、しかし実は、このような訴訟事件が起きていることは、私自身も今回、たまたま雑誌論文を読んで始めて知った事実なのです(雑誌「法と民主主義」448号、2010年5月、17頁)。それで、急いでパソコンの情報を検索して、確認することができました。何と、このような重要な事実が、一般の新聞にも、テレビにも全く報道されていないという不思議な事実が空恐ろしくなりました。 この雑誌にはまた、米軍基

    ジュゴン訴訟 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2010/05/28
    "環境保護団体によって提訴され…シスコ連邦地裁が…米国防長官に対し「ジュゴンへの影響を評価するための追加情報を示せ」""「思いやり予算」は、日本だけが支払っている特異なもの…1978年以来…総額5兆5000億円"
  • 公務員の政治活動 | 中山研一の刑法学ブログ

    国家公務員が休日に政党機関紙を配布したという同様の行為について、去る3月29日に東京高裁(中山隆夫裁判長)は、1審の有罪判決を破棄して「無罪」判決を言い渡したのですが(堀越事件)、今度は5月13日に同じ東京高裁(出田孝一裁判長)が、1審判決を維持して「有罪」判決を言い渡すという、全く逆の結論が出ました(宇治橋事件)。 3月の「堀越事件」判決については、表現の自由を重視したもので、「時代に沿う当然の判断だ」との評価が一般的でしたので(3月30日朝日社説)、5月の「宇治橋事件」判決は、意外の感をもって迎えられたのですが、それでもなお「理は無罪判決の方にある」との評価が注目されたのです(5月13日朝日社説)。 私自身も、前者の「堀越事件」判決の方を高く評価するのですが、ここでは、2つの判決が結論を分けた分岐点がどこにあったのかという点を冷静に検討しておく必要があると思います。両者とも、1974年

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  • 時効廃止・延長法案成立 | 中山研一の刑法学ブログ

    もっともっと議論されるべき「公訴時効」制度の改正問題が、あっという間に国会を通過し、改正案は4月27日に可決され、即日施行となってしまいました。政治と金や普天間基地の問題などで他の法案審議が進んでいない国会で、ほとんど実質的な論議もないままに重要な法案が通ってしまうという「異常」さには、驚きをこえて怒りを覚えます。 しかも、民主党の千葉景子法務大臣が記者会見で「犯罪被害者や国民の期待に答えるべくがんばった」と喜んだといわれるに至っては、開いた口が塞がらない思いがします。夏の参議院選挙を控えて、夫婦別姓や婚外子差別に対応する民法の改正案などについて国会審議の見通しが立たない中で、一つの「成果」を上げ、法務省内でも安堵の空気が広がったといわれているのです(2010年4月28日朝日夕刊)。 今回の改正の立案と審議過程と結論には、明らかに特定の犯罪被害者団体の強力な要請活動と、「犯人の逃げ得は許さ

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  • 日本人の死刑執行 | 中山研一の刑法学ブログ

    中国当局は、麻薬密輸罪で中国で死刑判決が確定した日人の死刑を執行したと報じられています(2010年4月6日朝日)。日政府は中国当局に対して、死刑執行が与える日人の対中感情への影響などについて懸念を表明したのですが、結局執行されてしまいました。この方針が今後も続けば、新たな死刑執行者が出ることが懸念されています。 一方、国際人権団体アムネスティ・インタナショナルは、2009年に世界で執行された死刑の報告書を発表し、計18カ国で少なくとも714人の死刑が執行されたことを明らかにしていますが、これとは別に、実数を公表しない中国の死刑執行数は、実に年間「数千人」と推計されているのです(3月31日朝日)。 中国は、経済発展が著しい超大国になりましたが、しかし、「自由と人権」の問題ではいまだ極めて国際的評価の低い「後進国」とみなされているのです。公表されている国で死刑執行の多い国には、イラン、イ

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  • 堀越事件第1審判決への疑問 | 中山研一の刑法学ブログ

    国家公務員が政党ビラを配ったという「堀越事件」については、今年1月のブログでも触れましたが、東京地裁は去る6月29日に、罰金10万円執行猶予2年の有罪判決を言い渡しました。法廷で意見を述べた私としては、早速反応すべきところでしたが、私事にまぎれて時期が遅れ、最近ようやく判決の全文を読んで、検討を開始しました。 判決当時の新聞の社説にも、「釈然とせぬ公務員の有罪」(朝日)、「自由が萎縮せぬように」(東京)といった疑問や危惧が出され、学者の解説にも批判的な論調が支配的でした。上記の社説によりますと、これはほとんど無罪に近い異例の判決で、裁判官が判断に悩んだ跡がうかがわれるが、しかし有罪は有罪であって、警察の捜査も検察の起訴も、お墨付きをもらったことになり、こうした判決で、言論の自由が狭まり、公務員が萎縮するのではないかと心配だというのです。 私も、このような評価におおむね賛成ですが、むしろ問題

    堀越事件第1審判決への疑問 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2010/04/01
    "問題は、なぜ裁判所が32年前の判例を踏襲して有罪判決の結論に固執したのか、なぜ警察・検察が30年間も適用しなかったこの種の事件を大々的に捜査し起訴したのかという点""背景となる時代状況の変化に注目すべき"
  • 堀越事件2審無罪判決 | 中山研一の刑法学ブログ

    旧社会保険庁職員であった堀越さんが休日に政党機関誌を配布した事件で、3月29日、東京高裁(中山隆夫裁判長)が、1審の有罪判決を破棄し、無罪を言い渡しました。休日に職務と関係なく党機関誌を配った行為に国家公務員法(政治行為の制限)を適用して刑罰を科すのは違憲だと判断したのです(2010年3月29日朝日夕刊)。 この種の事件については、1審で無罪判決が出ても、2審(控訴審)で有罪とされるのがこれまでの例でしたが、今回はその逆であり、しかもこのような行為にまで罰則を適用するのは「違憲」であると明確に判示した点に、画期的な意義があります。 私自身も、この事件の裁判には個人的に関係があり、1審の段階で、弁護団に依頼されて、「意見書」と「補充意見書」を裁判所に提出したほか、実際に東京地裁の法廷に出て、学者「証人」として意見を陳述する機会がありました(2006年1月20日)。この事件では、私を含めて7人

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  • 政党ビラ配り有罪 | 中山研一の刑法学ブログ

    政党のビラを配布するために東京葛飾区のマンションに立ち入ったとして住居侵入罪に問われた住職に対して、最高裁判所第2小法廷は、11月30日に、被告弁護側の上告を棄却し、有罪が確定しました。集合住宅へのビラ配りについては、昨年4月の「立川防衛庁官舎事件」判決に次ぐ、2度目の有罪判決ですが、そこには見逃せない問題があります。 これら2つの事件には、政治的な意見の表明手段として、集合住宅の各戸のドアポストにビラを配布するという共通性がありますが、裁判所側の判断にも、第1審はいずれも無罪、控訴審はいずれも有罪、そして最高裁第2小法廷がいずれも有罪という、同様の経過を辿っています。ここでは、第1審が「無罪」としていた理由に注目する必要があります。 「立川事件」では、それが刑法で処罰するほどの行為でなく、むしろ商業ビラと比較しても政治的な表現の自由は尊重されるべきだとしましたが、「葛飾事件」では、マンシ

    政党ビラ配り有罪 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2009/12/02
    この事件に関しては”有罪とした控訴審や最高裁の「法律的」な専門的解釈論よりも、第1審の「社会常識論」の方が市民的な意識に沿うものではないかという疑いを払拭することができません。”
  • 裁判員法の見直し | 中山研一の刑法学ブログ

    新しい裁判員法は、多くの問題を抱えながらも、すでに施行されて現にいくつかの事件の審理が裁判員の参加のもとで行われ、今のところ、順調な船出であると評価されています。 しかし、8月30日の衆院選挙で民主党政権が誕生しましたので、その影響はこの裁判員制度の見直しにも及ぶことが確実に予測されるようになってきました。そこで想起されるのが、裁判員法施行直前の4月段階で、民主党が法務大臣に申し入れていた「裁判員制度の実施に向けた環境整備に関する意見書」です。その内容については、当時、このブログでも紹介したことがありますが、にわかにその現実性がクローズアップしてきましたので、改めてその骨子の重要な部分を再確認しておきたいと思います(一部省略)。 ● 早急に法改正が必要と考える項目 1.取調べの全過程の録音・録画と検察官の手持ち全証拠のリストの開示義務づけ。 ● 運用の状況を見たうえで法改正を含めた見直しが

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  • 民主党政権と取調べ可視化 | 中山研一の刑法学ブログ

    このブログでも、だいぶ前に、政権交代の場合を想定して、警察・検察での被疑者・被告人の取調べの際の録音・録画制度の実現可能性について指摘したことがありました。そして実際に、今回の選挙で「政権交代」が現実のものとなりましたので、この問題が浮上してくることは必定となってきました。 この点に関して、選挙翌日の朝日新聞(2009年8月31日夕刊)は、「脱自民 中央官僚 覚悟と期待」と題する記事の中で、国交省などの省庁とともに、法務省もまた、制度改革を迫られているとして、以下のように指摘しているのが目を惹きました。 「マニフェストに『取調べの録音・録画』を掲げた民主党による政権が確実となり、全過程の録音・録画(全面可視化)を迫られることになった法務省。幹部の間には『国民の意思なら、従うだけ』という冷静な声の一方で、捜査を担う検察には『真相が解明できなくなる』と反対論も根強い。『日の刑事司法を大きく変

    民主党政権と取調べ可視化 | 中山研一の刑法学ブログ
    quagma
    quagma 2009/09/03
    これが実現されたら,それだけで政権交代には大きな意義があったということだと思う。
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