ミネルバの梟は夕暮れに飛び立つ。丸山真男は『日本の思想』の中でこう書いている。「一定の歴史的現実がほぼ残りなくみずからを展開し終わったときに哲学はこれを理性的に把握し、概念にまで高めるという(ヘーゲル主義の)立場を継承しながら、同時にこれを逆転させたところに(マルクス主義は)成立した。世界のトータルな自己認識の成立がまさにその世界の没落の証となるというところに、資本制生産の全行程を理論化しようとするマルクスのデモーニッシュなエネルギーの源泉があった」(P.39)。人間主体が概念の力業によって、その対象の構造と運動を正確に捕捉し終えたとき、その対象の没落と終焉が必然化され、弁証法的な止揚の運命を突きつけられる。戦後日本の左翼の壊死。昨年末からの宇都宮健児の選挙の諸過程は、それを概念化し理論化して提示する上で十分な素材を提供していると思われる。結論から言って、宇都宮健児の立候補と一本化拒否は、