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ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (83)

  • ブラック・スワンを目撃することの意味 - himaginary’s diary

    一般向けの経済学で有名なスティーブン・ランズバーグの自ブログでの発言が、Modeled BehaviorブログでAdam OzimekとKarl Smithの二人から槍玉に挙げられていた。 問題のランズバーグの発言は、アイオワ州での同性婚を非合法化しようとする動きに反対するスピーチを州議会で行ったZach Wahlsというアイオワ大学工学部の学生を批判したもの*1。 ランズバーグは、Wahlsのスピーチは、同性のカップルは両親としては平均に劣る、という一般的な見方に反論したものだ、と言う。そして、Wahlsはその反論に際し、単に同性の両親に育てられた自分を例に挙げただけで、それ以上の証拠を何ら提示していない、と批判している。 それに対しOzimekは、EconomistsのDemocracy in AmericaというサイトにWill Wilkinsonが書いたランズバーグへの反論にリ

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  • 年金と消費税 - himaginary’s diary

    大和総研の原田泰氏が、高齢者は消費税を支払っていない、と1/4の同社HPのコラムに書いている(H/T 404 Blog Not Found*1)。原田氏は昨年7月1日のコラムでも同様の主旨のことを書いているが、そちらでは単純な計算例を用いて高齢者に税金負担をしてもらうことの意義を説いている。以下ではそれを簡単に紹介すると同時に、そのロジックの当否について検証してみる。 今、高齢者の所得代替率をs、高齢者の人口比率をa、現役世代の平均所得をY、税率をtと置き、高齢者の年金収入は税金で賄うものとする。また、高齢者がまったく税金を支払わないものとすると、 a・s・Y = (1-a)・t・Y より、税率は t = (a・s)/(1-a) となる。 s=0.5とすると、現時点のaはほぼ25%なので、tは16.7%になる。それに対し、2050年にはaは40%になると見込まれるので、tは33.3%と倍増

    年金と消費税 - himaginary’s diary
  • 未来の物価計測手法? - himaginary’s diary

    エズラ・クラインと昨年末に婚約した*1経済記者のAnnie Lowreyが、インターネットを用いた物価指数について昨年12/20のSlate記事で報告している(H/T マンキューブログ)。 記事はまず、現在のCPIの計測に掛かる手間について報告しているが、それによると、全米90都市の約23,000の小売業者や企業において、何百という政府の役人が、仕様が細かく定められた各商品の価格を記録している、とのことである。そのために年間2億3400万ドルもの費用が掛かる、という。 それに対し、2007年にデータ収集を開始して昨年11月にヴェールを脱いだMIT経済学者Roberto RigobonとAlberto CavalloによるBillion Prices Projectでは、インターネットを入力元として物価指数を計算している。調査対象は70ヶ国の300のオンライン小売業者で、500万の品目を対

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  • 税制改正批判への素朴な疑問 - himaginary’s diary

    官庁エコノミストのブログやwrong, rogue and booklogで取り上げられているが、ニッセイ基礎研究所が今回の税制改正の家計への影響をシミュレートしたレポートを出している。そこでは3つのケースについてシミュレーションを行い、いずれのケースでも2010年から2011年に掛けて低所得者層の可処分所得が増加する一方、高所得者層の可処分所得が減少すると報告している。これは、高所得者層の負担が重い、という今回の税制改正に対する一般的な批判と整合的な結果である。 そのシミュレーションで可処分所得の変化を生み出している主な要因は、子ども手当満額支給*1というプラス要因と、扶養控除廃止による所得税増額というマイナス要因の2つである。前者が所得によらず一定額なのに対し、後者は累進的な所得税に比例して効いてくるので、シミュレーションの結果はある意味当然と言える。 ただ、レポートでは絶対額でグラフ

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  • 経済学におけるイデオロギー - himaginary’s diary

    昨日紹介したフォーリーの論文から、「イデオロギー」について論じた箇所を引用してみる。 In many ways, it seems to me that macroeconomics as an academic subfield knows less about the real dynamics of industrial capitalist economies today than it did in the early nineteensixties when I began my studies of economics. ... One could view this story as an account of an aberrant episode in the history of science, and argue, with considerable plausi

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  • ハイエク「経済学と他の科学の間には深くて暗い誰も渡れぬ川がある」 - himaginary’s diary

    ジョージ・ソロスが昨年5000万ドルを投じて設立した新経済理論研究所(Institute for New Economic Thinking)が、今年4月にカンファレンスを開催したという。そこでBruce Caldwellがハイエクとケインズについて講演しているが、その中のハイエクの1955年の論文からの引用が面白かったので、以下に該当の引用部分を紹介してみる(VOX watcherさん経由)。 But if it is true that in subjects of great complexity we must rely to a large extent on such mere explanations of the principle, we must not overlook some disadvantages connected with this technique.

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  • 経済理論はどんどんしっちゃかめっちゃかになってきている - himaginary’s diary

    とジャスティン・フォックスが今年のノーベル経済学賞の報を受けて書いている(原題は「A Nobel Lesson: Economics is Getting Messier」)。 What this year's prize does clearly indicate is that the Nobel committee believes economic theory is messy and getting messier (no, I didn't come up with this insight on my own; my colleague Tim Sullivan had to nudge me). The last Nobel awarded for an all-encompassing mathematical theory of how the economic wo

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  • おいらは税金上げても大丈夫だけど、その代わり仕事減らすよ - himaginary’s diary

    と題したマンキューの10/9NYTコラムが物議を醸している(原題は「I Can Afford Higher Taxes. But They’ll Make Me Work Less.」)。 そのコラムで彼は、自分が1000ドルの対価で論説記事の執筆を依頼される場面を想定し、その場合の勘定を以下のように3つのケースについて計算している。 税金が無い場合 1000ドルを8%で回せば、30年後には子供に10000ドルを残せる オバマ政権による増税を前提にした場合 まず、1000ドルに以下の税金が掛かる 連邦所得税:39.6%+1.2% 上乗せ分の1.2%は控除廃止によるもの メディケア税:3.8% 先の医療改革法案により2013年から税率上昇 マサチューセッツ州の所得税:5.3%(但し連邦税の控除という形で一部還付) 結局、手取りは523ドル さらに、8%の利回りにも税金が掛かる 投資対象の企業

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  • ゲーム理論とコースの定理とミュンヘン宥和 - himaginary’s diary

    池田信夫氏が、今回の尖閣諸島での漁船衝突事件で船長を釈放した判断はゲーム理論に鑑みて「合理的」だった、とagoraに書いている。ただし、そこで池田氏が断っているように、それはゲームが1回かぎりの場合のチキン・ゲームの利得マトリックスを考えた場合で、繰り返しゲームを考えた場合には話が違ってくる。 この池田氏の議論を読んで、ちょうど4年前に大竹文雄氏のエントリにコメントしたことを思い出したので、以下にそれをサルベージしてみる。 該当のエントリは週刊エコノミストの2006/9/26号を紹介したもので、同号に大竹氏は“「騒音おばさん」を止めるには 感情論より効率論 権利を整理し金銭交渉で”という記事を書いている。下記コメントはその記事内容を受けたものである*1。 読ませていただきましたが、コースの定理を説明するのに、「騒音おばさん」を例に挙げるのは不適切なような気がします。あの人は感情に任せて被害

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  • 日本の円売り為替介入への欧米ブログの反応 - himaginary’s diary

    欧米ブログへの反応、と言ってもそれほど数多く見て回った訳ではないが、意外に肯定的な評価が各所で見られた。代表的な論調は、これを機に皆が通貨安競争に乗り出した場合、その競争自体にはあまり益が無いだろうが、むしろその結果として各国の金融緩和が進むのが吉、というもの*1。 例えば、マシュー・イグレシアスは「非不胎化介入は成長への最後の最良の望みかもしれない(Usterilized Foreign Exchange Interventions Might Be The Last Best Hope for Growth)」と題した9/15エントリで、フェリックス・サーモンの以下の非不胎化介入の解説を引用している。 In other words, the Bank of Japan isn’t simply selling yen, it’s printing yen. (And then sell

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  • Mr.フリーズの逆襲 - himaginary’s diary

    Baatarism氏が今回の円高介入について書かれているが、その中でお馴染みの「実質為替から見れば円高ではない」論が引用されている。そこで引用されているのは伊藤隆敏氏だが、その直後に池田信夫氏も同様のことを述べている。 Baatarism氏が指摘しているように――あるいは小生が以前指摘したように――こうした主張の問題点は、デフレという病に経済が罹患している中での通貨高を、経済の好調に伴うインフレ時における通貨安と同等に見做している点にある。喩えて言うならば、低体温症に陥った人に対し、外界の温度と体温の差は以前に比べ縮小しているのだから、以前よりも寒さに耐えられるはずだ、と言っているようなものである。 あるいは、そういう論者の目には、今の日経済がMr.フリーズのように映っているのかもしれない。即ち、一度極端な冷凍状態に曝されたため、冷凍下で生きるのが当然な体質になった、というわけだ。従って

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  • トーマス・サージェントのインタビュー - himaginary’s diary

    機関誌Regionの6月号にロバート・ホールのインタビューを掲載したミネアポリス連銀が、今度はトーマス・サージェントをインタビューした(Economist's View経由)。 以下はその概略。 現代経済学への攻撃について 攻撃の一部は、数学を忌避する馬鹿げた知的怠慢から来ている。モデルで扱う経済がもっと動学や不確実性や曖昧さを含んだものになるならば、数学はますます必要になる。それが現実だ。 経済学者は効率的市場仮説を当然視しているわけではない。1983年のハンセン=シングルトン論文を嚆矢として、資産価格モデルと現実のデータとの不整合については様々な指摘がなされ、研究が行われてきた。そうした資産価格モデルはニューケインジアン理論のIS曲線と密接に結びついているので、それらの研究は中央銀行の政策とも関連する話だ。また、中央銀行が資産市場でのバブルを把握する上でも、資産価格モデルが定量的に整備

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  • PERを見る時の注意点 - himaginary’s diary

    柏野雄太氏が@ITで齊藤誠氏の近著「競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書)」を取り上げている(柏野氏のブログwrong, rogue and booklogの8/23エントリ経由)。そこで柏野氏は、同書の主張を以下のように紹介している。 さて、その「競争の作法」においては、2001年1月から2007年10月まで続いた戦後最長の「いざなみ景気」(1960年代後半の、いざなぎ景気になぞらえて付けられた名称)について、日企業の製品やサービスが消費者に評価されているという実質がない、見せかけの景気に過ぎなかったとしています。 その根拠として、ひとつは(a)株価の収益比率(PER)が高くとどまったまま企業収益以上の値をつけていたということ、もう1つは(b)いざなみ景気の後半3年間は実質実効為替レートが低かったので、その分普通の円安よりもさらに円安となり、日の輸出産業の価格競争力が高ま

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  • 帰無仮説下でのデータの生起確率と帰無仮説の確率 - himaginary’s diary

    アンドリュー・ゲルマンが、英国心理学会(The British Psychological Society)の研究ダイジェストブログのある記事にいたく失望させられた、と書いている*1。 その記事にゲルマンが失望した理由は、統計的検定に関する基礎的な間違いを犯しているからである。記事を書いたのはWarren Daviesというイーストロンドン大学(UEL)の修士生だが、彼を責めはしない、とゲルマンは述べている。彼の非難の矛先は、むしろ、英国心理学会の看板を掲げたブログでこのような記事の掲載を許してしまった編集者に向けられている。 どこが間違っているのかもっと分かるように教えてくれ、というコメントに応じて、ゲルマンは以下のように簡潔に説明している。 The following statement from the above quote is false: "all statistical t

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  • タスマニア効果と宇宙植民地化 - himaginary’s diary

    イギリスのSF作家チャールズ・ストロスが、現代の技術文明を維持するのに必要な人口を見積もっている(7/23ブログエントリ)。彼の推定によると、1億人〜10億人の範囲ではないか、とのこと。 ここで上限の10億人は、NAFTA、EU、日台湾、および中国の工業地帯をカバーした人口である。一方、下限の1億人は、たとえば航空産業だけを維持するのにも50万人が必要、という推計から弾き出している。 航空機だけでなく、自動車や携帯電話も今や非常に複雑化しており、多くの細分化された産業を下支えとして必要としている。また、製造業以外のたとえば医療でも、現代においては各分野のエキスパートを数多く抱える必要がある。そのため、100年前と比べると、そうした技術を維持するのに非常に多くの人数を必要とするようになっている、というのがストロスの指摘である。 さらに彼は、1900年には糧供給に労働人口の2〜3割、生活

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  • ローマーのチャーターシティ構想はクズだ - himaginary’s diary

    ガーディアンの論説委員Aditya Chakraborttyが「ポール・ローマーは優れた経済学者だ――しかし彼のチャーターシティ構想は駄目だ(Paul Romer is a brilliant economist – but his idea for charter cities is bad)」と題した記事でそう書いている(副題は「貧困国の主権と繁栄の交換という彼の計画は植民地主義の匂いがする(His wheeze that poor countries swap sovereignty for prosperity smacks of colonialism)」)。 記事の中盤でChakraborttyは、ローマーのチャーターシティ構想について、「問題なのは、その構想がクズだということだ。(Trouble is, the idea stinks.)」とばっさり斬り捨てている。続けて、次

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  • アンディ・グローブの産業政策論 - himaginary’s diary

    元インテルCEOのアンドリュー・グローブが「手遅れになる前にいかに米国の雇用を創出するか(How to Make an American Job Before It's Too Late)」という論説をブルームバーグに書いている(ビジネスウィークでの掲載はこちら[こちらはグラフ付き]。日のブログではたとえばこちらに簡単な紹介がある)。 概略は以下の通り。 米国人はスタートアップ企業に過大な期待を掛けているが、スタートアップ自体はそれほど雇用に貢献するわけではない。問題なのはスタートアップがプロトタイプから大量生産に移行する(=スケールアップする)魔の瞬間*1。今やそのスケールアップのプロセスは米国内では起きていない。 インテルを創業した頃は、そうしたスケールアップは米国内で起きていた。他にもタンデム、サン、シスコ、ネットスケープなども同様。しかし、労働コストの安い中国に目を付けた経営陣が

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  • クルーグマンの皮肉とDuyの反語 - himaginary’s diary

    “「Domo arigato, Bernanke-san」とクルーグマン教授が皮肉っている件=Tim Duyの指摘”と題された石町日記さんの直近のエントリを読んで、意外に思われた方も多いのではないだろうか? 常日頃リフレ派的な言説を吐くTim Duyを取り上げて、「まあ、フェアな見方ではないかと思う」「私はTim Duy派ですが…」という評価を下しているからである。 その一方で、石町日記さんは、最近のツイートで、リフレ派と一線を画し、現行のFRB(や日銀)の政策を支持するかねてからの姿勢を改めて明確にしている(例:ここ)。 反面、今回のエントリで取り上げられたTim Duyは、これまでFRB(や日銀)に対し、たとえば以下のような厳しい言説を吐いてきている。 ●2009/11/20エントリ「追い詰められたFRB(The Fed in a Corner)」より The Fed has ma

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  • 消費税、法人税、所得税と設備投資 - himaginary’s diary

    nyanko-wonderfulさんとBaatarismさんが相次いで消費税増税を取り上げ、消費税をはじめとする各種税金の推移グラフを示した。それらのグラフを見て小生の目を惹いたのが、話題の消費税や法人税の推移もさることながら、バブル崩壊以降の所得税の急低下ぶりであった。 nyanko-wonderfulさんの示されたデータソース「長期時系列データ|統計情報|国税庁」を見てみると、一口に所得税と言っても、まず申告所得税と源泉所得税に分かれ、さらに源泉所得税の対象所得が、利子所得、配当所得、上場株式等の譲渡所得等、給与所得、退職所得、報酬・料金等所得、非居住者等所得に分かれていることが分かる。そこで、以下では、所得税を申告所得税、利子所得税、配当所得税、給与所得税、およびそれ以外の所得税に分け、法人税と消費税と並べて描画してみた(単位:兆円[以下同じ])。 これを見ると、申告所得税、利子所得

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  • フラッシュ・クラッシュは仕掛けられたのか? - himaginary’s diary

    Nanexという株価(ならびにオプション・先物価格)データフィードのベンダーが、自社に蓄積されたデータを生かして、5月6日に発生した米国株急落(瞬時急落=フラッシュ・クラッシュと称される*1)の分析を行っている(Marginal Revolution経由)。 分析の概要は以下の通り。 14:42:56に、NYSE(ニューヨーク証券取引所)の約100銘柄の買い気配が、全国の9つの取引所を通じた最良売り気配(National Best Ask)を上回り始めた。2分後には、そうした銘柄の数は250以上に達した。データを見てみると、これは、NYSEの気配の処理が他市場に比べて遅れたためであったことが判明した。即ち、他市場の売り気配の低下に、NYSEの買い気配の低下が追随できていなかった。それにも関わらず、NYSEの気配に打刻された時刻(タイムスタンプ)は最新のものになっていた。 NYSEの買い気配

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