黒川 伊織(2014年11月/有志舎)A判324頁 著者は、神戸大学国際文化学研究推進センター協力研究員、桃山学院大学兼任講師で、本書は、2010年6月に神戸大学に提出された博士論文に、大幅な加筆修正がなされたものである。 まず本書の研究対象である「第一次日本共産党」は、1921年4月に結成され、1924年4月頃に解党された日本共産党を指している。第一次日本共産党は、ロシア革命のインパクトのもと、コミンテルン(共産主義インタナショナル)の日本支部として成立した。にもかかわらず、その研究は、一国的枠組みのうちに閉ざされてきた。著者は、書名にもあるように、第1次日本共産党の思想と運動を「帝国に抗する社会運動」として捉え、この時期の左派の思想と運動を、国際的連関のうちに開き、朝鮮人・中国人とも協同しつつ帝国日本の支配秩序に抗おうとした運動の起点と捉える視座を提示するとともに、その言論活動が非合法