(本の雑誌社・2484円) 何十万冊も詰め込んだ一冊の本 定年退職で大学の研究室を引き払うのに、本棚に蓄積された大量の本をどう始末したものかと悩みに悩み、一年がかりでようやくその作業を終えたわたしのような人間にとって、本棚はしばらく目にしたくない物のはずである。それなのに、自分の苦労はそれこそ棚にあげて、他人の本棚を眺めるのはどうしてこれほどまでに楽しいことなのか。本書『絶景本棚』のページを繰り、豊富なカラー写真に収められた各界三十四人の本棚を目にして、まず思ったのはそれである。 『本の雑誌』で連載されている「本棚が見たい!」をもとに書籍化したのが本書だが、連載時よりも写真の質がアップしていて、はるかに見応えがある。取材の対象になっている人間(コレクター、作家、評論家、研究者など)の写真は、おそらく意図的に、一切出てこない。『絶景本棚』の主人公は、あくまでも本棚であり、本なのである。本棚や