■要旨 2020年12月30日に欧州連合(EU)と中国が大筋合意した包括投資協定(CAI)の発効に向けたEU側の手続きは凍結されたまま、早期発効への政治的な機運は失われている。 CAIは、一部が未定のままであるなど、「包括」的とは言い難いが、各国ごとに締結した協定が並存する分散状態を改め、市場アクセスの相互主義化、対国有企業での競争条件の公平化、制度・政策面での予見可能性の向上について一定の成果は得られている。環境、人権問題の改善というEUが重視する持続可能な開発目標の実現につながる可能性を秘めてはいた。しかし、合意の範囲の狭さに加えて、約束の履行が確保されていないことから、中国に「いいとこどり」を許すだけに終わるとの懸念が強い。CAIの凍結は、EUにおける中国への不信感の高まりの象徴である。 EUは、CAIの大筋合意前の段階から、中国に対する地経学的な警戒感を強め、「パートナーであり、経