出勤途中で毎朝、必ず出会う人たちがいる。布団にくるまってラジオのニュースを聞いている中年男性、犬2匹とスーパーの前に陣取る中年男性、ワインの瓶を傍らに穏やかな表情の初老男性、束ねた髪を時々、解いて頭をかきむしるシラミだらけの男性、ベールをかぶって彫像のように歩道に伏せているイスラム教徒の女性、つえを片手にてのひらを前に差し出して往復している盲目の男性−。この常連に、はだしの長髪男性や大荷物の女性などが時に加わる。 サミュエル・ベケットの傑作「ゴドーを待ちながら」のバガボンド(放浪者)と一見、似てはいるが彼らが待っているのはゴドーではなく通行人の慈悲だ。前に置かれた空き缶などには小銭が入っている。夜半になると消えるが、彼らがホームレスか否かは不明だ。 朝晩の冷え込みが厳しくなったこの1カ月で、パリ地域で6人のホームレスが凍死した。フランス全土での今年の凍死者は計265人(11月末現在)。フラ