≪チンパンジーとの差極少≫ 2003年、ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の完全解読が、10年以上の年月と世界各国の研究者の協力を得て完了した。生物学のアポロ計画と呼ばれるほどの大プロジェクトであった。 それから2年後の2005年、ヒトに最も近い現存動物種であるチンパンジーのゲノムが解読され、ヒトゲノムの設計図との全体的な比較が行われた。 地球上におけるどんな生物にも設計図があり、私たちをヒトたらしめた謎もまた、DNAに記録されていると考えられた。 他の生物とのDNAの違いこそが人間らしさを示すものと誰もが期待していた。だが、チンパンジーのゲノム解読後、ヒトのゲノムと比較してわかったことは、意外にも、その差はわずか3・9%だった。ヒトゲノムの全長32億塩基対から考えれば、本当にわずかな違いである。 もっと興味深い事実が判明した。それは、ヒトにあるが、チンパンジーには無いという遺伝子は、一つも発見さ