要約・概要 非上場オープン・エンド型不動産投資法人(以下、「私募REIT」)は、2017年5月時点において22銘柄が運用を行っており、これらの資産規模の合計は2兆2,200億円を超過したものと推計される。 半期毎に開示されるJ-REIT保有物件の不動産鑑定評価額での代替により、私募REITの基準価額(J-REITにおける投資口価格に同義)の推移について検証したところ、直近4年間において、20%弱(19.79%)の上昇という推計結果となった。
近年、中国資本による海外不動産への投資が拡大している。中国資本による世界各地のランドマーク不動産の取得が相次ぎ、一気に世界の不動産市場を席巻する存在となった。 この中で、資本規制が強まっている。人民元の上昇圧力が弱まった2014年以降、中国政府は外貨準備を利用して人民元を買い支え、急落を回避させてきたが、外貨準備の減少が資本流出を招き、人民元の切り下げ圧力がさらに高まるという悪循環が生じている。2016年11月、中国政府は、資本移動の管理を厳格化するコメントを発表、海外不動産への投資の動きに注視する姿勢を示した。これを受けて、中国資本による海外不動産への投資は転換点を迎えた。 2017年以降、中国資本による海外不動産への投資は減速傾向にある。大連万達集団が豪州のシドニーで進めている再開発プロジェクト(One Circular Quay)の売却を進めているとの報道があったほか、安邦保険集団が
<要約・概要> 非上場オープンエンド型不動産投資法人(以下、私募REIT)の運用が開始されてから早くも5年半が経過した。私募REITは投資口価格の安定性と一定の流動性を兼ね備えた商品として注目を集めているが、この5年半の間、不動産投資市場の推移が堅調であったため、不動産マーケットサイクルを経験していないという懸念材料がある。 「私募REIT市場拡大のために必要な項目」についてアンケートを実施した結果では上位グループとして、「銘柄数や資産規模の拡大」、「トラックレコードの蓄積」、「換金性の向上(頻度、払戻制限の緩和等)」、「ファンドに投資する投資家層の拡大」が挙げられた。この中で「換金性の向上(頻度、払戻制限の緩和等)」という項目は、仕組上の要因という意味で他の項目とやや性質が異なっている。そこで、本稿では、私募REITの換金性(流動性)に焦点を当てて考察を試みた。
黒田日銀による金融緩和策が4年目に入った。この間、不動産市況回復期待の高まりや相対的な利回り魅力が選好され、J-REIT市場には資金流入が継続した。借入コストも下がることでJ-REITの資金調達コストは低下が進み、不動産価格の上昇に伴い、J-REITが保有する資産の価格は大きく回復している。今回のマイナス金利導入決定後も、同様の期待がJ-REITには集まっている。 こうした環境変化の下で、各リートはいかに運用してきたかをあらためて見ておきたい。 まず、物件取得は収益性を意識したスタンスで行われ、今でもそれは継続している。不動産売買市場が過熱するなかで一定の利回り水準を確保することは非常に困難で、個別には強い賃料上昇期待と低金利を前提とした強気の取得もみられる。ただ、そうした取得も一部であって、全体でみれば物件の組み合わせで保有資産の収益性を維持、あるいは大きく損ねないといった取得方針を変え
<要約・概要> 我が国では更なる高齢者および要介護者の増加が見込まれる中、ヘルスケアリートには、その成長を通じて優良な高齢者住宅の供給促進が期待されているが、上場から期が浅いこともあり、その成長は期待ほどには進んでいない。その要因の一つに、高齢者住宅のテナントであり介護サービス等を提供するオペレーターの意向を反映し、その多くが個人所有物件となっており、これらの物件とヘルスケアリートの投資対象基準とがミスマッチしていることが挙げられる。 ヘルスケアリートの成長や、その結果として優良な高齢者住宅を供給するためには、①ヘルスケアリート主導の開発・取得、②更新投資を契機とした個人所有物件の取得、③開設初期段階での中小オペレーターへのアセットファイナンス、等の方策が望まれる。
リーマンショック後から減少を続けてきた不動産取引件数は2012年に入り、回復に転じている。安倍政権の政策により投資資金の流入が加速しているものの、賃貸市場の回復は緩やかな状況にとどまっている。政策主導の不動産市場の回復に対する疑心暗鬼とリーマンショックの記憶が残る状況下で、不動産投資市場の見通しを立てることは極めて難しくなってきていると言える。 不動産投資市場の見通しが必要とされる中で、不動産取引は頻繁には行われず、かつ相対で取引されるケースが多いため、市場全体の動向を的確に理解するツールや情報が欠けている。そこで、本項では取引市場における実際の取引量と価格を2軸とする市場サイクルを表現することで、市場全体の投資家動向やプロパティタイプ別の投資選好を読み取ることを提案したい。また、不動産取引市場サイクルを利用して現状どの局面にあるかを把握し、今後どの方向に向かっていく公算が大きいかについて
筆者は20年前までは建築家をめざして建物を建築作品として捉え、その空間設計に専心していた。その後は、建物を不動産と捉え、資産としてあるいは事業としての経済的価値を検討する仕事に携わり今日に至っている。この間、我が国では不動産価値の評価法がパラダイムシフトしたことは周知の通りである。さらに近時では、省エネ性能、耐震性を始めとする安全性等の新たな要素に対するユーザーの要求レベルが高度化しているため、将来のキャッシュフローの産出力に影響を及ぼすそれら要素を不動産価値に的確に織り込む方法について実証分析など様々な検討が行われている。 さて、かつて大学の建築学科で学んだことを思い出すことが時々ある。建築論の教科書にあった古代ローマの建築家であり建築理論家であったウィトルウィウスは、良い建物は用・強・美の3つの条件によって成立すると唱えた。用とは機能、快適性であり、強とは構造体としての堅固さであり、美
世界の不動産投資市場に大きな影響を与えた世界金融危機。2008年のリーマンショックから5年が経過した。この間も、欧州債務危機や新興国の経済成長鈍化など厳しい環境が続いたが、ここにきて、ようやく明るい兆しが見られるようになっている。日本においてもアベノミクスやオリンピック開催への期待感もあり、不動産投資市場は国内外から注目を集めているところである。当社では、世界の不動産投資市場の動きを定期的にモニタリングしているが、今回は、世界金融危機以降の不動産投資資金の流れについて概観してみたい。 世界的な運用資産の増加と資産運用難を背景に、以前から不動産投資ニーズが高まっている。世界経済の拡大や新興国の台頭によって年金の運用資産額が増加していたことに加え、新興国における外貨準備の増加や資源価格の堅調などから政府系ファンド(SWF)の運用資産も増加している。そんな中、世界的に株価変動の幅が拡大し、国債利
<要約・概要> 日本の代表的な都市を対象に地価と人口分布の関係を分析したところ、都市のコンパクト性が高いほど、都市中心部と周辺部の地価の二極化を通じて中心部の地価が支えられている傾向が確認された。本稿の分析結果からは、都市中心部の地価上昇のカギを握るのは、都市のコンパクト化であることが示唆される。 書 名: コンビニ難民 小売店から「ライフライン」へ 著 者: 竹本 遼太(研究統括部 副主任研究員) 発 行: 中央公論新社 発行日: 2016年3月10日 定 価: 本体820円+税 お求め方法: 一般書店、インターネット書店にて好評発売中 Amazon コンビニは単なる小売店舗にとどまらず、経済や行政、物流など、各種サービスを提供する社会インフラであり、今後迎える超高齢化社会において「ライフライン」としての役割が高まっていくことが予想される。しかし、全国の高齢者の実に6割はコンビニ徒歩圏に
<要約・概要> 2010年11月の運用開始以来、非上場オープン・エンド型不動産投資法人(以下、「私募REIT」)は、物件取得を積極的に進めている。一方で、私募REITのスポンサーにはデベロッパーや商社が名を連ねており、利害関係人等からの物件取得にあたっては利益相反を懸念する投資家もいるのではないだろうか。 本稿では、上場J-REITの取引データを利用して利害関係人等からの物件取得と第三者からの物件取得を比較し、利益相反の有無に関する検証を試みた。その結果、立地やビルのスペック等、他の要因を補正した取得価格水準での比較において、むしろ利害関係人等からの物件取得の方が第三者からの物件取得よりも相対的に低い価格で取得できているとの統計的結果が得られた。
海外不動産オープンエンドファンドの特性について ~日本の非上場不動産オープンエンドファンド(私募REIT)の商品特性との比較 <要約・概要> 2010年11月に国内初の非上場不動産オープンエンドファンドとして私募REITの運用が開始されてから、2013年8月末までに6銘柄が運用を開始した。報道によれば運用資産額の合計は2013年8月末現在で4,000億円を超過しており、順調に資産規模を拡大させている銘柄も見られる。一方海外に目を向けると、オープンエンドファンドが古くから不動産金融商品として認知されている国も多い。本稿では、先進事例として米国の不動産オープンエンドファンドの商品特性を整理し、ドイツ・欧州の状況にも触れる。更に、主に米国商品との比較を通じ、日本で提供されている不動産オープンエンドファンドの商品特性をまとめ、今後の課題と展望について述べる。
商業施設テナントの収益特性は業種によってそれぞれ独特の傾向を有しており、収益性が高いエリアに立地する商業施設に出店していても、利益を上げられず苦しむテナントが見られる。その多くはエリアの収益性から形成される賃料水準が過大な負担となっているケースであり、施設運営側にとっては賃料下落リスクとなる。テナント企業は、出店戦略において売上最優先で高収益エリアに偏重しがちであるが、自社の収益特性を見極め、最適なエリア戦略によって売上よりも利益の最大化を目指すことが重要である。 商業施設の立地 商業施設の収益性は、その施設がどのようなエリアに立地しているかで大きく異なっている。エリア特性が都心の高度商業地なのか郊外なのか、そしてそのエリアでは競合施設が多いのか少ないのかによって、商業施設の売上水準には大きな格差が生じている。 そして、商業施設に出店するテナント企業は、同じような施設規模やテナント構成であ
本稿では、非上場オープン・エンド型不動産投資法人に関して、現時点までの状況を公表情報に基づき整理した。国内初の非上場オープン・エンド型不動産投資法人が2010年11月に運用を開始して以降、現時点(2013年4月末)までに6銘柄が運用を開始し、運用資産額は約3,000億円(取得価格ベース)を超過していると推計する。また、当社が昨年実施した投資家へのアンケート調査によれば、非上場オープン・エンド型不動産投資法人の流動性については、投資家により流動性への認識が異なることが伺われる。 1.「非上場オープン・エンド型不動産投資法人」の現状 2010年11月に国内初となる非上場オープン・エンド型不動産投資法人(以下、「私募REIT」)の運用が開始されて以降、私募REITは現在6銘柄が運用されており、全体での資産規模は、2013年4月末時点において3,000億円を超える程度(取得価格ベース、公表情報をも
<要約・概要> 高齢者向け住宅、病院等のヘルスケア施設に投資する日本版ヘルスケアREIT創設への期待が高まっている。現在、日本にはヘルスケア施設を保有するREITはあるが、ヘルスケアREITはまだない。他方、海外では、米国をはじめ、カナダ、シンガポール、マレーシア、英国、オーストラリア、ニュージーランドでヘルスケアREITが上場しており、日本のヘルスケア施設を保有するシンガポールのヘルスケアREITも存在する。 本稿では、海外ヘルスケアREITの概要を紹介し、海外ヘルスケアREITの市場規模、投資対象資産、各国の特性、投資パフォーマンスを見ていく。また、J-REITのヘルスケア施設の保有状況と、国土交通省の「ヘルスケアリート検討委員会」での議論のポイントを概観する。
これまでアセット・アロケーションという概念は不動産投資に関して、日本ではそれほど重要視されてこなかった。しかしながら、アセット・アロケーションという考え方を軸にして、機関投資家の行動をみることにより不動産投資市場の見通しを描く上で重要な示唆が得られる場合も多くある。本稿ではアセット・アロケーションという視点を通じて、不動産投資市場をみる有意性について言及する。 投資パフォーマンスの大半はアセット・アロケーションで決まる 過去多くの学者によってアセット・アロケーション(資産配分)で投資パフォーマンスの大部分が決定されると指摘されてきた(Brinson,Hood,Beebower(1986), Ibbotson and Kaplan(2000)等)。特にIbbotson and Kaplan(2000)の研究では、米国のバランス型投信94ファンド(1988-98年)および年金大手58基金(19
株式会社三井住友トラスト基礎研究所では、2003年より不動産投資市場調査の一環として「不動産私募ファンドに関する実態調査」を行っている。本調査は、今回で15回目となり、54社の不動産運用会社から回答を得た。 - 調査対象:国内不動産を対象に不動産私募ファンドを組成・運用している不動産運用会社 - アンケート送付先数:120社 - 回答会社数:54社(回収率:45.0%) - 調査時期:2013年1月 - 調査方法:郵送およびEメールによる調査票の送付・回収 上記のアンケート結果およびヒアリング・公表情報をもとに当社では、2012年12月末時点の不動産私募ファンドの市場規模(運用資産額ベース)を17.5兆円と推計した。この数値には、当社が把握しているグローバルファンドの国内不動産運用資産額を含めている。前回調査における2012年6月末時点の運用資産額は18.1兆円であり、半年で約5,600
シンガポールにおける住宅ストックの約8割は政府の供給する公共住宅であり、民間住宅は全体の約2割に過ぎない。しかし、シンガポール経済の発展とともに、高品質な民間住宅への需要は拡大する傾向にあり、日本企業も含め、新規参入する事例が増えている。本稿ではシンガポールの都市戦略と住宅市場の関係に触れながら、シンガポールの民間住宅市場の見通しについて考えてみたい。 1. シンガポールの経済発展と住宅市場 2010年にシンガポールの1人あたりGDPは日本を抜き、アジアの中で最大となった。シンガポールが、マレーシアから独立して僅か45年間で、急速な経済成長を果たせたのは優れた都市戦略と政府の強力なリーダーシップによるところが大きい。つまり、東京23区程の面積しかない、限られた国土を最大限活用するために、政府主導で都市開発を推進することで、国際都市としての魅力を高め、海外からの投資資金や優秀な人材を積極的に
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